執筆:窪田真之

今日のポイント

  • 仏大統領選の結果:出口調査では、ルペン氏、マクロン氏が、5月7日の決選投票に出ることが確実と、仏主要紙が報道している。出口調査の結果は、ルペン氏(得票率24.33%)、マクロン氏(得票率22.24%)と僅差であり、3位以下の候補との差も小さく、最終結果が異なるものになる可能性もある。
  • 仏大統領選を大過なく乗り切れば、業績回復を好感して日経平均は反発に向かう公算。ソニーや東京エレクトロンなど業績好調銘柄が、上昇を牽引すると予想。

(1) 仏大統領選は、第1回投票(4月23日:上位2候補を選ぶ)・決戦投票(5月7日)の2回で決着へ

23日に実施された仏大統領選の第1回投票の結果は、出口調査では、ルペン氏とマクロン氏が決戦投票に出る見込みと報道されています。日本時間で24日の午前中に最終結果が明らかになる見込みです。4候補が大接戦となっており、第1回投票で、決戦投票に進む上位2候補が選ばれます。

仏大統領選の4候補:選挙前の世論調査での支持率

候補者 役職・経歴 政策立ち位置 直近世論調査での支持率
マクロン氏 前経済相 中道:親EU 24.5%
ルペン氏 国民戦線党首 極右:反EU 22.5%
フィヨン氏 元首相 中道右派:親EU 19.5%
メランション氏 欧州議会議員 極左:反EU 18.5%

(出所:支持率はパリマッチ誌の21日調査結果)

親EU派で中道路線のマクロン氏・フィヨン氏(水色で表示)の票が伸びると、EU崩壊の危機が一旦やわらぐので、市場には安心感が広がり、円安・株高が進むと考えられます。

反EUを唱える極右ルペン氏、極左メランション氏(赤字で表示)が躍進すると、EU崩壊の危機が高まったとみなされ、市場には不安が広がります。

順当な結果ならば、マクロン氏とルペン氏が上位2位に入り、決戦投票に進むことになります。フィヨン氏とメランション氏は、決戦投票ではマクロン氏を支持するとの見方もあり、決算投票で、マクロン氏が勝つとの思惑が出て、足元、円安が進んでいます。日本時間で午前7時15分現在、1ドル110.23円まで円安が進んでいます。ただ、投票するのは仏国民です。第1回投票でメランション氏に投票した人の多くがルペン氏に、投票する可能性もないとは言えません。

今日判明する第1回投票の最終結果の順位が、仮に、1位ルペン氏、2位マクロン氏、3位メランション氏、4位フィヨン氏だったとして、極右・極左が予想以上に伸びて、決選投票でルペン氏が勝利しそうな勢いと判断されると、金融市場に不安が広がる可能性もあります。

(2) 大統領選の結果により円高株安が進むならば、買い場となる可能性も

思い起こされるのは、昨年6月の英国民投票の結果判明と、11月の米大統領選の結果判明時の、株式市場・為替の反応です。

日経平均週足:2016年1月4日―2017年4月21日

(注:楽天証券マーケットスピードより作成)

6月の英国民投票では、ブレグジット(英国のEU離脱方針)が僅差で可決されました。英国とEUがともに大きなダメージを受ける不安が広がり、円高・株安が進みました(上のグラフで矢印①をつけたところ)。11月の米大統領選で、ドナルド・トランプ氏当選が確実になると、金融市場に不安が広がり、一時、円高・株安が進みました(上のグラフで矢印②をつけたところ)。

①も②も、最初に結果が明らかになるのが、東京市場が開いている最中でした。東京市場が、最初に選挙結果を織り込む市場となったため、日経平均が一番激しく乱高下することになりました。

ただし、①も②も、ショックで日経平均が急落したところは、絶好の買い場でした。2016年後半から、米国および世界の景気が一斉に改善に向かい、ドル高(円安)・株高の材料となりました。トランプ不安・ブレグジット不安は今でも続いていますが、すぐに、世界経済を崩壊させる材料とはなりませんでした。

さて、今回の仏大統領選挙ですが、ルペン氏の得票が予想以上に伸び、決戦投票でも勝利する見通しが広がると、フレグジット(フランスのEU離脱:FRANCEとEXITを組み合わせた造語)が意識されるようになります。英国に次いでフランスもEU離脱に向かうとなると、EU崩壊も現実味を帯びてくることになります。

そうした悪材料の連鎖が想定されると、円高・株安が進むことになります。出口調査の結果通り、ルペン氏とマクロン氏が決戦投票に進む場合、決戦投票での両候補の支持率比較が世論調査で出てくると思います。マクロン氏が決戦投票での世論調査で大きくリードしない限り、仏大統領選への不安材料が払拭されないと考えられます。

(3) これから発表が本格化する3月決算は好調が予想される

21日に、ソニー(6758)が前期(2017年3月期)の連結純利益の予想を、260億円(前期比▲82%)から、730億円(同▲51%)へ大幅上方修正しました。

楽天証券の今中能夫アナリストは、4月21日付けでソニーのアナリストレポートを発行しました。株価レーティングは「A」、今後1年間の目標株価レンジは4,800~5,000円です。詳細はレポートをお読みください(アナリストレポートをお読みいただくにはログインが必要です)。

楽天証券では、ソニーは新しい成長フェーズに入ったと判断しており、今期(2018年3月期)の連結営業利益は5,200億円と、最高益(98年3月期の5,257億円)と並ぶ水準に拡大すると予想しています。

ソニーだけでなく、これから本格化する3月決算は、全般に好調が見込まれます。米景気好調、中国景気回復、半導体ブームを受け、米国関連株・中国関連株・半導体関連株の好調が見込まれます。

20日に決算を発表した安川電機(6506)は、中国が牽引して、好調な決算でした。中国で、スマホや自動車関連の設備投資が増加する恩恵を受けます。

これから決算を発表する半導体製造装置(東京エレクトロン(8035)アドバンテスト(6857))、内需関連株(建設や不動産)も好調が見込まれます。

ただし、米国で自動車販売が減少してきていることから、自動車(トヨタ自動車(7203))の業績は冴えないものとなるかもしれません。