今週の予想

決算発表ピーク控え、3万円突破するか?

 先週は、二つの市場リスクが低減したことで、市場のリスク許容度が広がりました。

 一つは自民党が衆院選で単独絶対安定多数を維持したことです。これによって来夏の参議院選へ向けても勢いを持たせ、岸田内閣の長期化が視野に入り、外国人投資家へ安心感を与えました。

 もう一つは、FOMC(米連邦公開市場委員会)ではテーパリング(量的緩和の段階的縮小)が開始されたものの、利上げの時期は早まらなかったことで、投資家に安心感を与えました。

 今週は決算のピークを迎えますので、日経平均が3万円を突破するきっかけになるかどうか注目です。

 足元の企業業績は、半導体をはじめとする部品の調達難や物流費、原料などの価格上昇が反映されて、下方修正も相次ぎました。

 ところが、トヨタが4日に発表した7-9月期決算は、連結営業利益が市場予想を大きく上回り、通期計画も増額されています。

 今後は半導体不足をある程度織り込んでの企業業績に期待、ここにきて半導体メモリーのDRAM価格はすでにピークアウトしているとの見方もあります。

 原油価格にも材料があります。一大産油国のイランがEU(欧州連合)との核協議を再開することが決まったことです。そのため、供給余力が大きいイランの原油が輸出されるようになると、原油の先物価格の上昇を抑える可能性があります。

 さらに今週は、中国共産党の6中全会(8~11日)をはじめ中国絡みのイベントが多いので、何らかの材料が出た場合、株式相場に影響を与えるかもしれません。

 以上の国外の状況を踏まえると、今週の日経平均の予想レンジは2万9,000~3万円というところ。年末にかけて出遅れ感のある日経平均に期待したいところです。

 これまで大きく値を伸ばしてきた他商品のマーケット(原油、ビットコイン、バルチック海運指数など)が、すでに頭打ちから調整に転じており、資金の流れの変化を示唆するものであり、その流れが「株式市場」にくることも想定しておくべきでしょう。

今週の指標:日経平均株価

 日経平均が3万円の大台に乗せることができるかどうか注目です。

 シカゴ日経先物は、米株式の主要3指数が最高値更新しているにもかかわらず、為替が1ドル=113円台前半の円高となっていることで、+80円の2万9,705円と伸び悩んでいます。

 日本の決算発表は、半導体不足で企業業績が下方修正となって株価が下落する銘柄があるものの、トヨタが4日に発表した7-9月期決算は連結営業利益が市場予想を大きく上回りました。通期計画も増額されたことで、安心感をもたらしています。

 今週は、企業業績発表がピークとなるため、その内容には注目です。

先週の動き

 先週の予測では、自民党の議席数が大きく減少しない限り、下値は限定的で2万8,500~2万9,500円のレンジを想定し、方向感は出てもレンジの上限を想定しました。

 ところが、フタを開けてみると衆院選は「絶対安定多数」の261議席を自民党単独で獲得。このサプライズ効果で日経平均は急騰し、1日(月)は+754円の2万9,647円となりました。その後は休日をはさみ、FOMCもあることから日経平均は3万円を突破する動きにはならなかったものの、4日(木)には2万9,880円まで上昇。週の終値は▲182円の2万9,611円でした。

今週の指標:NYダウ(ダウ工業株30種平均)

 今週はFOMCや10月雇用統計の発表が終わり、NYダウは上昇しやすい状況となっています。

 注目されていたサプライチェーンの混乱もピークをつけた可能性も指摘され、さらにファイザーの飲み薬開発で、新型コロナウイルスへの脅威が後退。また、8日からワクチン接種者の入国制限を解除することも、景気回復の期待を盛り上げそうです。

 FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長は、労働市場の改善が必要として、今は利上げの時期ではないと表明、早期の利上げ予測は後退しています。低金利がそのまま相場をサポートすることになります。

先週の動き

 先週の予測では、企業の好決算が続き相場をサポートするとしました。FOMCでもテーパリングが実施される予定ですが、すでに織り込み済みであるとし、10月の米雇用統計も伸びが拡大する予想で新型コロナの感染拡大も収束に向かっているとしました。今のところサプライチェーンの混乱以外に弱気の材料は見られません。

 以上を受けて、主要3指数の最高値更新が続き、11月4日(木)は、NYダウが小反落したものの、S&P500種指数は6日続伸、ナスダック総合指数も9日続伸。週末の5日(金)は、NYダウが再び最高値更新となったことで、主要3指数そろって最高値更新でした。

今週の指標:ドル/円

 パウエルFRB議長が早期利上げに慎重な見方を維持しているため、ドル買いは一服しました。しかし、10月米雇用統計の予想以上の改善で、インフレが高止まりしている状態が続いた場合、早期利上げの可能性が再び高まることから、ドル売りが進むことは想定しにくくなります。

 さらに、10月生産者物価指数と10月消費者指数が予想を上回れば金利高、ドル高となって円売りが強まる可能性があります。

先週の動き

 11月1日(月)のISM製造業景況指数の低下を受けて、ドル買い・円売りは一服。FRBは11月2~3日のFOMCでテーパリングの開始を11月からスタートすると発表。

 ただし、パウエルFRB議長が「今は利上げの時期ではない」と表明したことで、早期利上げ観測が後退し、円売りは縮小。ドル/円は5日(金)に一時1ドル=114円まで買われました。

 しかし、10月米雇用統計で失業率が予想以上に低下したことで、ドル買いが一時活発となるものの、米長期金利の低下を受けてドル売り・円買いが進み、1ドル=113.39円で取引を終えました。

先週の結果

自民党の絶対安定多数の結果を受け、日経平均は2万9,880円まで上昇も3万円届かず

 衆院選の結果について大方の見方は、自民党の議席数は予想ほど減少しないという流れが出てきたことで、先々週に引き続き2万8,500~2万9,500円のレンジでの動きを予想。選挙結果がそれほど悪くなければ、このレンジの上限の2万9,000~2万9,500円も考えられました。

 フタをあけてみると野党連合がさえず、自民党は前回議席を少し減らした程度で、絶対安定多数を維持しました。

 ほとんど誰もが予想しなかったこの結果を受け、岸田政権の安定化で経済対策が期待され、11月1日(月)は売りに回っていた外国人の買い戻しが入り、日経平均相場のレンジが2万9,000~3万円と一段切り上がりました。この日は2万9,267円から2万9,666円までの上昇となりました。

 このまま一気に3万円という市場の見方もありましたが、休日やFOMCを控えており、日経平均は4日(木)に2万9,880円まで上昇後、利益確定売りに押され週末の5日(金)は2万9,611円で引けました。

 11月1日(月)は、衆院選で絶対安定多数の261議席を自民単独で守ったことを好感し、日経平均は+437円の2万9,330円で寄り付くと、その後は2万9,500円水準を下値にもみ合いました。

 大引け間際には+774円の2万9,666円まで上昇し、日経平均の終値は2万9,647円でした。この日の上昇で衆院選の勝利という好結果は、とりあえず織り込んだことになり、後はFOMCや岸田政権の政策次第ということになってきます。

 2日(火)は、前日の米国市場で主要3指数そろって連日の最高値更新となっていましたが、前日の大幅上昇の反動で日経平均は▲184円で寄り付き、休日とFOMCを前に様子見から利益確定売りが優先し、終値は▲126円の2万9,520円と反落しました。

 3日(水)は、日本は休場でしたが、前日の米国市場では主要3指数が3日連続で最高値更新でした。

 4日(木)は、前日の米国市場で主要3指数が引き続き4日連続の最高値更新となったことで、日経平均は前場の早い段階で+359円の2万9,880円まで上昇。3万円まであと少しでしたが、時間外取引で米株先物が下げに転じたことで、上値は重くなり安値圏でのもみ合いが続きました。

 その後、後場の取引終了間際には買い戻され、日経平均は+273円の2万9,794円で引けました。3日のFOMCでは、11月中のテーパリング開始が決定されましたが、FRB議長による「インフレは一時的」「利上げには連結しない」という発言があり、相場にはそれほど影響は与えませんでした。

 5日(金)の日経平均は、前日の米国市場でS&P500とナスダックは最高値更新したものの、NYダウが▲33ドルと反落したことやハンセン指数の下げ、日経平均の3万円接近や週末要因、米10月雇用統計発表前などで利益確定売りが優勢に。日経平均は一時▲290円の2万9,504円まで下げ、結局終値は▲182円の2万9,611円で引けました。

 日本市場引け後の米国市場は、主要3指数がそろって再び史上最高値を更新しました。10月雇用統計は非農業部門雇用者数が市場予想の45.0万人増を上回り、53.1万人増となったことで、景気回復への楽観的見方が広がったことが要因です。

 また、ファイザー社のHIV(ヒト免疫不全ウイルス)治療薬が新型コロナの重症化リスクを89%低下させるニュースも経済活動正常化期待を高めました。

 シカゴ日経先物は、為替が1ドル=113円台前半の円高となったことで、+80円の2万9,705円にとどまりました。