はじめに

 今回のアンケート調査は2021年10月25日(月)~10月27日(水)の期間で行われました。

 10月末の日経平均は2万8,892円で取引を終え、前月末終値(2万9,452円)からは560円安となりました。月足ベースでも3カ月ぶりに下落に転じました。

 あらためて月間の値動きを振り返ると、月初の日経平均は前月(9月14日)の年初来高値をピークとした下落基調を引き継ぐ格好でスタートし、下値を探る展開となりました。

 原材料価格や人件費高騰によるインフレ警戒や、サプライチェーン(供給網)の混乱、中国恒大集団の債務問題とその影響に対する懸念などを背景に、10月6日には2万7,500円を下回り、直近の上昇幅のほとんどを打ち消す場面もありました。

 その後は、米長期金利の落ち着きによる押し目買い意欲をはじめ、新型コロナウイルスの国内感染者減少傾向を受けた経済再開期待、日米で本格化する決算シーズンを前にした企業業績期待などが相場を支え、以降は月末にかけて株価の上げ下げを繰り返しながらも戻りをうかがう展開となりました。

 このような中で行われた今回のアンケートは5,100名を超える個人投資家からの回答を頂きました。

 日経平均の見通しDIは、大幅に改善した前回調査からの反動や、月間の慌ただしい値動きもあってマイナスに転じましたが、米ドル/円の見通しDIについては、日米の金融政策スタンスの違いから円安の見通しをさらに強める結果となりました。

 次回も是非、本アンケートにご協力をお願いいたします。

日経平均の見通し

楽天証券経済研究所 シニアマーケットアナリスト 土信田 雅之

「DI後退も相場地合いは悪くない?」

 今回調査における日経平均見通しDIの結果は1カ月先がマイナス7.86、3カ月先はマイナス1.24となりました。

 前回調査がそれぞれプラス23.11、プラス17.27でしたので、両者ともに再びマイナスに転じた格好です。前回の値が大幅なプラスに振れていたことによる反動もありそうです。

 また、日経平均の株価水準自体は、前回調査(9月29日終値の2万9,544円)と今回調査(10月27日終値の2万9,098円)とでは、446円安と大きく下落したわけではありませんが、この期間のあいだに、2万7,500円台を下回るなど、株価が大きく下振れる場面があったことも影響したと思われます。

 確かに、回答の内訳グラフを見ると、強気派の割合が1カ月先で21.46%(前回は39.25%)、3カ月先が26.80%(同37.55%)と大きくシェアを落としていることが分かります。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成
出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成 

 とはいえ、過去の調査と比べても強気派の割合が極端に低いというわけではないですし、3カ月先の中立派(45.15%)は今年に入ってから最も割合が高くなっています。

 そのため、今回の結果は日経平均の見通しに対してネガティブに傾いたというよりは、前回の強気ムードが修正されたと考えた方が良さそうです。

 11月相場入りとなった日経平均は大きく上昇してスタートしました。国内総選挙のイベント通過によるアク抜け感や、企業業績を好感する動き、最高値圏で推移する米国株市場などの相場地合いの良さに加え、懸念されているインフレ警戒やサプライチェーンの混乱などについても、「ひとまず最悪期を脱した」という見方も強まりつつあります。

 ただし、これらの懸念材料(インフレやサプライチェーン)については、冬場に向けての資源需要増や、クリスマス商戦への影響不安もくすぶっています。実際に、半導体不足によってゲーム機の生産が当初の計画よりも少なくなっているという報道もあり、油断はできません。

 さらに、中国不動産大手企業の債務問題についても、今後の中国恒大集団の利払いの状況で一喜一憂することも考えられますし、12月に近づくと、米国の債務上限問題をめぐる米議会の攻防が再燃する可能性もあります。

 もちろん、現時点で過度に慎重になる必要はないと思われますが、日経平均の値動きは、8月20日の年初来安値から9月14日の年初来高値までが18営業日、そこから10月6日の直近安値までが15営業日、その後の半値戻し達成までが8営業日と、相場自体は崩れていないものの、かなり慌ただしい値動きが続いている状況となっています。

 しばらくは、株価の上げ下げを繰り返しながら、落ち着きどころや、中長期の方向感を探る展開が続くかもしれません。

楽天DI  2021年10月

楽天証券経済研究所 根岸 美知代

【今月の質問1】 2021年にNISA、または、つみたてNISAをしましたか?

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

「NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)をした」派と「つみたてNISAをした」派がほぼ同じでした。

【今月の質問2】 NISAをした方にうかがいます。2021年のNISA枠で何に投資しましたか?(複数回答可)

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

「日本株(個別銘柄)」ではなく、「投資信託」が1位となりました。

【今月の質問3】 NISAをした方にうかがいます。2021年の投資枠120万円で、既にいくら投資しましたか?

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 ほぼ満額を使われている方が、1番多かったです。逆に「30万以下」という方も2番めに多かったです。

【今月の質問4】 つみたてNISAをした方にうかがいます。2021年の投資枠40万円で、既にいくら投資しましたか?

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 NISA同様、満額に近い額を投資されている方が1番多かったです。

 今回もたくさんのご意見をいただきまして、ありがとうございました。

為替DI:11月のドル/円、個人投資家の予想は?

楽天証券FXディーリング部 荒地 潤

 楽天DIとは、ドル/円、ユーロ/円、豪ドル/円それぞれの、今後1カ月の相場見通しを指数化したものです。DIがプラスの時は「円安」見通し、マイナスの時は「円高」見通しで、プラス幅(マイナス幅)が大きいほど、円安(円高)見通しが強いことを示しています。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 DIは「強さ」ではなく「多さ」を測ります。DIは円安や円高の「強さ」がどの程度なのかを示しているわけはありません。しかし、アンケートに個人投資家の相場観が正確に反映されているならば、DIの「多さ」は「強さ」に関係することになります。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

「11月のドル/円は、円安、円高のどちらへ動くと予想しますか?」

 楽天証券が先月末に実施した相場アンケート調査によると、個人投資家5,141人のうち52%(2,687人)が、11月のドル/円は「ドル高/円安」に動くと予想しています。先月に比べて円安見通しは13ポイント増えました。

「ドル安/円高」予想は全体の20%(1,004人)で、先月に比べて円高見通しは3ポイント減。28%(1,450人)は、「動かない(わからない)」でした。

円安スパイラル

 10月のFX市場の主役は「円」。

 9月後半に開催されたFOMCで円安スイッチが入ったドル/円は、1カ月近く円安スパイラル状態が続きました。

 ショートをあきらめたストップロスの買い戻しと、ロングが欲しいドル/円の押し目買いが作用し合あって円安がどんどん進み、9月22日から10月20日までの間に109.10円から114.70円まで、5.60円も上昇しました。

 次のターゲットは115円、そして2017年3月高値の115.51円。何度も挑戦しては押し戻されている強力な抵抗ゾーンであり、長期為替ストラクチャーのノックアウト価格も多数観測されています。

 その上は118.61円。2016年11月の米大統領選挙をきっかけに起きた「トランプラリー」のドル高で、2017年1月3日の高値です。

 トランプ大統領在任中の4年間にドル/円がこの高値を超えることは一度もありませんでした。トランプ氏が大統領に就任したのは1月20日なので,トランプラリーは、少なくともドルに関しては、すでに終わっていたことになります。

 将来の相場を予想するときは、相場を現在から過去にさかのぼるのではなく、過去から現在へ時系列で見ることが大切。

 ドル/円は2017年1月3日に118.61円でトップをつけたあと、1カ月のうちに350ポイントも急激に円高に動いています。2016年11月からのドル/円の上昇は急激でしたが、高値をつけたあとの急落もまた激しかった。

 楽天DIで円安見通しが全体の50%を超えたのも同じく、2016年11月の「トランプラリー」の時以来のこと。見通しが一方向に極端に偏った時は、相場終わりの前兆ともいわれています。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 楽天証券が実施した相場アンケート調査によると、個人投資家の35%が11月のユーロ/円は「ユーロ高/円安」に動くと予想。ユーロ高見通しは、先月から10ポイント増えました。

ユーロ安/円高」予想は全体の16%で、先月から5ポイント減。残り49%は「動かない(わからない)」でした。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 楽天証券が実施した相場アンケート調査によると、個人投資家の32%が11月の豪ドル/円は「豪ドル高/円安」に動くと予想。豪ドル高見通しは、先月から10ポイント増えました。

豪ドル安/円高」予想は15%で、先月から6ポイント減。残り53%は「動かない(わからない)」でした。

今後、投資してみたい金融商品・国(地域)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト 吉田 哲

 今回は、毎月実施している質問「今後投資してみたい国(地域)」で、「国内株式」「外国株式」を選択した人の割合と、それらを選択した人の年代別の割合に注目します。

 質問「今後、投資してみたい金融商品」は複数選択可で、選択肢は、国内株式、外国株式、投資信託、ETF(上場投資信託)、REIT(上場不動産投資信託)、国内債券、海外債券、FX(外国為替証拠金取引)、金やプラチナ地金、金先物取引、原油先物取引、その他の商品先物、特になしの13個です。

図:質問「今後、投資してみたい金融商品」で「外国株式」「国内株式」を選択した人の割合

出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成

 9月の調査では、「国内株式」を選択した人の割合が56.03%、「外国株式」が46.14%でした。「外国株式」が「国内株式」を上回る、統計史上初の出来事は起きていないものの、この数カ月間、2つは50%前後で肉薄した状態が続いています。

「国内株式」も「外国株式」も、ほぼ50%、つまり、どちらも、回答者のおよそ半分に選ばれています。以下のグラフは、「国内株式」と「外国株式」を選択した回答者を、年代別に示したものです。(重複回答を除く)

図:「国内株式」と「外国株式」それぞれの回答者の年代別の割合(重複回答を除く)

出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成

「国内株式」が「外国株式」を上回った年代は、60代から80歳以上の3つです。逆に、「外国株式」が「国内株式」を上回った年代は、50代以下の全てです。年代が高いほど「国内株式」を、低いほど「外国株式」を、より強く選好する傾向があると言えます。

「外国株式」について、筆者は、投資活動などさまざまな分野で新しいものを積極的に取り入れる若い方々に選ばれているというイメージを抱いていましたが、実際はそうではなく、「50代」の皆様においても、「国内株式」よりも「外国株式」を選ぶ方が多くなっています。

 今後、「外国株式」を選ぶ方々の年齢層が、今にも増して高くなれば、「外国株式」を選ぶ方の割合が「国内株式」を上回る事態が発生するかもしれません。引き続き、「国内株式」と「外国株式」の年代別の割合に、注目したいと思います。

表:今後、投資してみたい金融商品 2021年10月調査時点 (複数回答可)

投資対象 割合 前回比
国内株式 56.03% △ 3.18%
外国株式 46.14% ▼ 2.84%
投資信託 41.27% △ 2.40%
ETF 32.48% △ 0.96%
REIT 13.64% ▼ 0.31%
国内債券 5.05% △ 0.98%
海外債券 7.68% △ 1.22%
FX(外国為替証拠金取引) 7.20% ▼ 0.17%
金やプラチナ地金 14.79% △ 0.46%
金先物取引 1.37% ▼ 0.41%
原油先物取引 2.39% ▼ 0.18%
その他の商品先物 1.59% ▼ 0.27%
特になし 7.35% ▼ 0.40%
出所:楽天DIのデータより筆者作成

表:今後、投資してみたい国(地域) 2021年10月調査時点 (複数回答可)

国名 割合 前回比
日本 43.24% △ 9.24%
アメリカ 68.34% ▼ 1.98%
ユーロ圏 8.24% △ 0.18%
オセアニア 5.07% △ 0.83%
中国 7.00% ▼ 3.42%
ブラジル 2.30% ▼ 0.04%
ロシア 1.24% ▼ 0.10%
インド 31.92% △ 4.34%
東南アジア 16.32% △ 0.61%
中南米(ブラジル除く) 1.66% ▼ 0.28%
東欧 1.64% △ 0.26%
アフリカ 5.96% △ 0.30%
特になし 6.04% ▼ 0.86%
出所:楽天DIのデータより筆者作成