【10月末買い・翌年4月末売り】という黄金の半年間投資

 株式インデックスに投資をする場合、基本的に9月から10月の押し目を拾って翌年の4月までに手じまえば、運用リスクを減らすことができるという実感が筆者にはある。ちまたには多くの「パターン分析」、「サイクル論」、「アノマリー」などがあるが、「10月末買い・翌年4月末売り」ほど、長期にわたり有効性を発揮している投資戦略を筆者は他に知らない。

NYダウ(月足対数チャート)「10月末買い(青↑)・翌年4月末売り(赤↓)」売買

出所:石原順

「10月末買い・翌年4月末売り」という【半年間投資】が相場に有効かどうかはさまざまな見方があるが、50年以上の母集団に対して、「10月末から4月末までの半年間のパフォーマンス」が「4月末から10月末までの半年間のパフォーマンス」を上回っていれば有効であろう。過去のデータを見る限り、「10月末買い・翌年4月末売り」というパターンの優位性は現在も継続している。

NYダウのシーズナリーチャート(過去20年の平均)

出所:エクイティクロック

 NYダウ(ダウ工業株30種平均)やS&P500種指数などの株式インデックス投資の「10月末買い・翌年4月末売り」が成功するか失敗するかに関して、筆者はあまり気にしていない。この手法が失敗することも当然計算に入っているからだ。失敗への対処法として、大きな損失が発生しないようにストップロス注文を置いている。備えあれば憂いなしだ。

NYダウCFD(日足)青枠は2020年10月末~2021年4月末の期間

(赤↑=買いシグナル・黄↓=売りシグナル)
出所:楽天MT4・石原順インディケーター

日経平均CFD(日足)青枠は2020年10月末~2021年4月末の期間

(赤↑=買いシグナル・黄↓=売りシグナル)
出所:楽天MT4・石原順インディケーター

NZドル/円(日足)青枠は2020年10月末~2021年4月末の期間

(クロス円市場は米国株式市場と連動する特徴がある。NZドル/円は9月をボトム(底)に年末まで反発しやすい傾向を持っている)
(赤↑=買いシグナル・黄↓=売りシグナル)
出所:楽天MT4・石原順インディケーター

株が下がりやすい月は「5月」・「9月」・「10月」

 より長期の米国株(S&P500種指数)のシーズナリーサイクルを紹介しよう。分析者は親子二代にわたって米国株のシーズナリーパターンを研究しているジェフリー・ハーシュである。彼は『トレーダーズ・アルマナック』という会社をやっていて、日本ではパンローリングから書籍や翻訳レポートも出ている。

S&P500種指数のシーズナルパターン:1949年以降

出所:「トレーダーズ・アルマナック」ジェフリー・ハーシュ(パンローリング)

NYダウの3カ月ロール:1949年以降

出所:トレーダーズ・アルマナック(パンローリング)

ナスダック総合指数の3カ月ロール:1971年以降

出所:トレーダーズ・アルマナック(パンローリング)

 トレーダーズ・アルマナックのジェフリー・ハーシュによると、「11月、12月、1月は、S&P500、NYダウ、ナスダックの3つの指数にとって、1年で最も季節的に強い3カ月間となる。このような季節的な強さは、機関投資家の年次、半期、四半期ごとの活動と、個人投資家や消費者の習慣的な行動が組み合わさって生まれるもの。1949年以来、11~1月の3カ月間で、S&P500種指数とNYダウは4.3%の上昇を記録。10~12月はS&P500が4.1%、NYダウが3.9%で僅差の2位。1971年以降、ナスダックの11~1月の上昇率は6.3%と非常に高く、12~2月が5.0%で2位、10~12月が4.4%で3位となっている」という。

 筆者の独断と偏見で言えば、株が下がりやすい月は「5月」・「9月」・「10月」である。そこが逆張りの買い場となるが、半年程度保有する場合、「5月の買い」は9月・10月の下げ相場に巻き込まれてしまう。

 したがって、運用成績の落ち込み(ドローダウン)を避けて投資するには、「10月末買い・翌年4月末売り」が消去法で残ることになる。

 株式相場やクロス円相場は急落時にボラティリティ(変動率)が上昇しやすく、上昇および横ばい相場ではボラティリティは低下していく。株式投資に関してあまり好ましくない現象は、ボラティリティの上昇である。

 株式市場のボラティリティが上がりやすい月は「9月」・「10月」である。この9月から10月のリスク商品の押し目は半年間という中期投資の買い場となりやすい。

 筆者は今年も「10月末買い・翌年4月末売り」の株の買い循環のパターン分析をもとに、ポジションを構築する予定だ。株式インデックスの取引で重要なことは、レバレッジを上げないことと、ストップロス(あらかじめ計算された損出処理)を徹底することだ。資産管理のルールさえ守っていれば、短期的にうまくいかなくてもいつか報われるときはくるだろう。

 予測というのは科学ではなくアート(芸術)である。ずいぶん昔に『ラリー・ウィリアムズの相場で儲ける法』(日本経済新聞出版社)という本を読んで驚いたことがあったが、相場には実に多くのアノマリーやバイアスが存在する。ある時期は神がかり的に当たるが、外れだすとしばらく止まらなくなるのがアノマリーやバイアスである。

 株式相場で有名なアノマリーとして「1月効果」や「月末効果」などがあるが、近年はその有効性も低下している。相場に絶対はない。しかし、「10月末買い・翌年4月末売り」という半年間投資だけは、近年も有効に機能し続けている。

長期に安定したパフォーマンスを上げるには、取引商品の「分散」が必要

 当然のことながら、筆者は「10月末買い・翌年4月末売り」というシーズナリーサイクルの売買にすべてを賭けているわけではない。ポートフォリオ全体から見れば、数パーセントから1割程度のポジションである。

 相場のパフォーマンスは「運」や「偶然」による部分も大きい。たとえば、1年間、ドル/円を取引して大きなトレンド(方向性)が発生しなかった場合、どんなトレンドフォロー(順張り)の手法を用いても大きくもうけることはできない。これを人は「運」や「相場」が悪かったと言う。

 しかし、どの商品にいつ大きなトレンドが発生するかを当て続けることは不可能なので、「運」よくトレンドに乗る(ついていく)ためには、できるだけ相関関係のない商品を分散トレードすることが必要となってくる。

 筆者が相場の世界に入って既に30年超が経過したが、運用で「長期に安定したパフォーマンス」を上げるには、取引商品の「分散」が必要だとの信念を持っている。

 相場を事業として長く続けるには、

(1)自分の運用手法に対する絶対的な信頼性をもつ
(2)世界のあらゆる市場に分散投資し、40~50品目の商品をウオッチし取引する

という2点が重要だ。

 個人投資家で50品目の取引を行うのは大変である。しかし、長期にわたって「安定した」収益を上げるには、ある程度の商品分散(少なくとも株や債券、コモディティなど、10商品以上への投資)が必要であると思われる。

 相場へのアプローチは「各人各様」でよいだろう。相場手法に正解はない。FXや先物取引は資金効率が非常によい半面、レバレッジ(借金)で取引する商品なので、オーバー・トレードは厳に慎みたい。小さなポジションで複数の商品のポジションをもつことが安定運用につながることは、これまでのファンド運用の歴史が証明している。

10月27日のラジオNIKKEI「楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー」

 10月27日のラジオNIKKEI「楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー」は、土居雅紹さん(楽天証券 株式・デリバティブ事業部長)をゲストにお招きして、「黄金の半年間投資の時期が到来!」・「パラボリック投資とほったらかし投資」・「インデックス投資とここからの注目銘柄」というテーマで話をしてみた。ぜひ、ご覧ください。

出所:YouTube
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 ラジオNIKKEIの番組ホームページから出演者の資料がダウンロードできるので、投資の参考にしていただきたい。

10月27日: 楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー

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