日経平均は様子見ムード、次の展開待ちの買い意欲も

 先週末10月29日(金)の日経平均は2万8,892円で取引を終えました。前週末終値(2万8,804円)からは88円ほどの上昇です。

 11月相場入りとなる今週は、国内総選挙の結果を受けて始まるほか、米国ではFOMC(米連邦公開市場委員会)や月初恒例の雇用統計などのイベントが控えています。また、引き続き国内外の決算動向をにらみながらの展開となりますが、新たな相場が始動するかも注目されそうです。

 まずはいつもの通り、足元の状況から確認していきます。

■(図1)日経平均(日足)の動き(2021年10月29日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 あらためて、先週の日経平均の値動きを振り返ると、低調なスタートから一段高となり、26日(火)の取引では「窓」開けで上昇して、2万9,000円台を回復する場面もありましたが、以降は、下向きの25日移動平均線を意識した攻防で週末を迎えるという展開でした。

 また、年初来高値を更新した9月14日を起点とした上値ラインに届かず、値を伸ばせなかった一方、下値は75日移動平均線がサポートとして機能しており、週を通じては方向感が出なかったことから、総選挙を控えた様子見ムードとなった面もあります。

 とはいえ、ローソク足の並びを見ると陽線が多く、週末29日(金)の取引では、ヒゲの長い線が出現しており、実体も5日・25日・200日移動平均線が密集する株価水準に位置しており、「次の展開待ちの中での買い意欲」も感じられる格好となっています。

エリオット波動と週足チャートから読む新たな相場展開

 また、次の展開待ちという面では、値動きのリズム(波)からもうかがえます。

■(図2)日経平均(日足)とエリオット波動(2021年10月29日時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 上の図2は前回のレポートでも紹介した、日経平均の値動きを波で捉えたものになります。

 8月20日の年初来安値を起点とした日経平均は、9月14日の年初来高値更新までのあいだは、上昇基調のリズムを描いていたのですが、以降は下落のリズムに転じていると思われ、足元では、下落のリズムの波の修正局面(4波)に位置している状況と考えられます。

 先ほどの図1でも述べた通り、先週の値動きは方向感に欠けていたこともあり、ちょうど図2の青い線で囲まれた、いわゆる「三角もちあい」のような格好になっています。もちあいの形成は市場のエネルギーが蓄積され、もちあいを抜けた方向に動きやすいとされます。

 もちろん、下方向に抜けて下げが加速してしまう可能性もありますが、図1では買い意欲の強さが感じられていることから、チャートだけで判断するのであれば、上方向に抜ける可能性の方が高いかもしれません。

 となると、「4波くずし」の目安とされる2万9,573円を抜けた辺りから上昇が加速するシナリオも想定されます。

 最近の相場展開は、年初来安値(8月20日)から年初来高値(9月14日)までが18営業日、そこからの10月6日の安値までが15営業日といった具合に、短い期間で大きく動いてきたことを踏まえると、思ったよりも早いペースで相場が動くことも考えられます。

 さらに、週足チャートからも、新たな相場展開を感じさせる点があります。

■(図3)日経平均(週足)の動き(2021年10月29日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 週足チャートでも、図1のように、3本の移動平均線(13週・26週・52週)が密集しています。

 チャートを過去にさかのぼると、同様に移動平均線が密集している箇所がいくつかあるのですが、いずれもその後の相場に方向感が出ていることが分かります。

上方向の株価目安

 では、実際に方向感が出始めた際には、どこまでの値動きが想定されそうかが気になるところです。上方向の場合はまず、図2のところでも紹介した2万9,573円や、年初来高値(9月14日の3万795円)を目指していくことになりますが、さらにその先については、目標値計算で考えてみたいと思います。

■(図4)日経平均(日足)の目標値計算(2021年10月29日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 上の図4は、8月20日から9月14日までの上昇幅(3,841円)と、9月14日から10月6日までの下落幅(3,502円)を元に、「N計算値」、「V計算値」、「E計算値」を算出したものです。

 仮に年初来高値を更新した後はN計算値である3万1,134円が次の目標値として意識されそうです。その後はV計算値やE計算値が控えていますが、それぞれ3万4,000円台ですので、そこまでの上昇の口実となる材料が必要になってくると思われ、ひとまずは3万1,000円を目指しそうです。

下方向の株価目安

 反対に、株価が下落する展開となった場合は、すでに市場が想定している懸念材料(インフレやサプライチェーンの混乱、中国情勢、ネガティブ決算など)に対する反応であると思われるため、過度なリスクオフに陥る状況にならない限り、これまでにも何度か紹介した、移動平均線乖離(かいり)率のボリンジャーバンドが参考になりそうです。

■(図5)日経平均移動平均線乖離率(25日)のボリンジャーバンド(2021年10月29日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

■(図6)日経平均移動平均線乖離率(75日)のボリンジャーバンド(2021年10月29日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 先週の日経平均の値動きで攻防戦となった25日移動平均線、そしてサポートとなった75日移動平均線の乖離率の状況をそれぞれ図5、図6で見ていくと、29日(金)時点のマイナス1σ(シグマ)の値が2万7,500円の水準で一致しています。

 この2万7,500円の株価水準は5月や7~8月の下落局面で下値のメドとなっていたこともあり、節目として強く意識されそうです。

 今週は選挙の結果に対する初期反応からスタートすることになりますが、その後は、業績動向をあらためて織り込みに行けるかどうかが焦点になります。今週はトヨタや任天堂などをはじめとする600銘柄弱の国内企業が決算を発表する予定です。

 足元の日本株は、決算を受けて主要株価指数が最高値圏で推移する場面を見せた米国株市場とは、対照的な動きとなりました。その米国では決算発表がそろそろ落ち着きを見せつつあるほか、11月相場入りとなることもあり、月初恒例の雇用統計やFOMCが予定されており、結果待ちムードが強まる可能性があります。

 さらに、PMI(製造業購買担当者景気指数)の発表や、債務の利払いが立て続けに予定されている中国恒大集団の動向も気掛かりです。

 とはいえ、日本株は選挙というイベント通過や、決算を手掛かりに、しばらくは動意づく展開が見込まれ、今週はその方向感を探る週になりそうです。