銘柄選びをする際に必要な「ファンダメンタルズ分析」

 皆さんは、株式投資で銘柄選びをする際、どのようにしていますか。ネットや雑誌のおススメ銘柄や、知人から聞いた耳より情報をもとにしているという方もいるかもしれません。

 でも、それではなかなか株式投資の実力は身に付きませんし、そもそもおススメ銘柄の株価が上昇する保証もありません。

 そこで近年は、個人投資家の間でも、個々の企業の業績や財政状態などを分析し、投資に値する銘柄を見つけようとする、ファンダメンタルズ分析を行う動きが高まっています。

 筆者が株式投資を始めたときは、ほとんどの個人投資家はチャートやテクニカル分析が主流だったと記憶していますので、個人投資家にファンダメンタルズ分析の考え方が広がってきた今は、とても健全だと思います。

ファンダメンタルズ分析にこだわって失敗する個人投資家の特徴

 しかし一方で、ファンダメンタルズ分析にこだわり過ぎることで、逆に大きな損失を被ってしまう個人投資家も少なくありません。

 直近では海運株がそうですし、数年前のカーボン関連株、バイオ関連銘柄においてもファンダメンタルズ分析を重視し過ぎるあまり、致命傷といえるレベルの損失を被ったケースもあります。

 なぜ彼らが失敗するのか、それは「一生懸命その銘柄のことを分析するあまり、株価との矛盾を受け入れることができない」からです。

 ファンダメンタルズ分析で「この銘柄の株価は大きく上昇する!」と踏んで投資し、実際に株価も上昇している間は、当然ながら何の問題もありません。

 ファンダメンタルズ分析では相変わらず絶好調にもかかわらず、株価は逆に値下がりに転じて下げ止まらない……こうなると悲劇の始まりです。

自分の行っているファンダメンタルズ分析程度はプロも当然行っていると思うべし

 海運株を例に取ってみると、足元ではバルチック海運指数やコンテナ船運賃の指数などが上昇を続けています。海運株の利益がさらに増加するであろうと判断できるファンダメンタルズ面でも状況証拠が積み上がっています。

 筆者は、仕事と株式投資の両立のために、それほど深く個別銘柄のファンダメンタルズ分析を行うことはあまりありませんが、筆者の目から見ても、海運株についてプロ顔負けのファンダメンタルズ分析を行っている個人投資家も少なくありません。

 ただ、ここに一つ落とし穴があります。

 恐らく当の本人は「これだけ一生懸命分析をした結果、ファンダメンタルズは絶好調! だから株価は上昇するはずだ!」と無意識のうちに思い込んでしまっているはずです。ところが株価はなぜが下落をする一方……。

 こうした状況を見て、「ファンダメンタルズで見れば、株価は上がるはずだ! おかしい!」と思ってしまう、この思考が大失敗につながってしまうのです。

 ご自身で、本当にプロ並みにファンダメンタルズ分析ができているにしても、それと同じレベル、いや、おそらくそれを超えたレベルのファンダメンタルズ分析を、プロは実践しているはずです。個人投資家が行うファンダメンタルズ分析は、プロ投資家を超えることはないと思っておくべきです。

最終的な投資判断は「株価に聞く」のが無難

 この点、筆者は次のように考えます。

「確かにファンダメンタルズは絶好調で株価は大きく上昇しそうに思える。でも株価が下がって下降トレンドになっているのだから、安易な買いは控えるべきだし、株を保有しているなら下降トレンドになったら直ちに売るべき」と。

 つまり、筆者はいくらファンダメンタルズ分析が良好であっても、投資判断は株価のトレンドに沿って行っているのです。

 先ほども申し上げた通り、個人投資家が行っているファンダメンタルズ分析と少なくとも同レベルの分析を、プロ投資家は行っているはずです。

 ですから、ファンダメンタルズは絶好調と個人投資家が知っているなら、プロ投資家も当然ながら知っているわけです。それなのに株価が下がるということは、プロ投資家はファンダメンタルズが絶好調なのに、その株を買っていないのです。

 では、なぜプロ投資家はその株を買わないのか? 理由はいろいろあると思いますが、可能性として考えられるのは、確かに足元のファンダメンタルズは絶好調だが、今後それが悪化する可能性が高いということを、独自の情報として入手しているためと推測できます。

 もちろん、これは推測に過ぎませんから、プロ投資家の買いにより、下降トレンドに転じた株価が再び上昇トレンドに復帰することもあるわけです。そうなったら我々も同様に買い直せばよいだけです。

ファンダメンタルズが良好なのに、株価下落は「お買い得」なのではなく「要警戒」

 海運株の良好なファンダメンタルズにこだわり過ぎた結果、いまだに損失を膨らませている個人投資家もいるようです。

「自分が行っている分析はプロ投資家も行っている、それなのに株価が上がらないのはプロ投資家が買っていないからだ。なぜプロが買わないかは分からないが、自分の知らない悪材料やリスクをプロは察知しているかもしれない。だから株価下落はおかしいわけではない」……このような思考過程を踏んでいけば、ファンダメンタルズが絶好調なのに株価が下がっていること自体が「尊重すべき事実」である点に気づくはずです。

 ファンダメンタルズ分析はもちろん重要ですが、ファンダメンタルズ分析の結果と株価の動きが相反したときは、株価の動きを優先して投資判断することが、大ケガを防ぐポイントとなります。ぜひこの考え方を押さえておいてください。

 ファンダメンタルズが良好なのに株価が下落しているのは、「お買い得」なのではなく「要警戒」なのです。