日本株市場にルネサンス渡来?どういう変化があるのか?

 今年の9月、日経指数(日経平均株価、日経225)が31年ぶりに3万円台を回復しました。

 日経指数で代表される日本株市場は、1989年12月29日の史上最高値だった3万8,915円を記録した後、バブルの崩壊や低成長、高齢化や人口減などで長い期間苦しみました。

 しかし、2012年から本格的な上昇のトレンドが始まり、「心理的な抵抗線」とも言われていた2万円台と3万円台を連続で突破することができました。

 株式市場の方向を決める基本的な要素である経済マクロの面を他国と比べてみると、これほど長い期間で活力を失っていた背景を読み取ることができます。

 名目GDP(国内総生産)の成長は止まり、65歳以上の人口比は上がり、総人口は減り続け、世間で言われる「失われた10年、20年、30年」との言葉に納得がいきます。特に、世界でリーダーシップを失っていない米国経済や、「G2」の一角とまで呼ばれる中国経済の浮上と比べると、大きな差があります。

 しかし、こういった経済マクロの構造的問題が続いているにもかかわらず、日本株市場は健闘しています。

 直近10年間、または5年間の株式市場パフォーマンスを他国と比較してみると、新経済をリードする米国を除き、日本株市場は欧州や中国などの他市場と比べ良好なパフォーマンスを実現しているのが分かります。

 日本株市場の中でどの分野が全体のパフォーマンスを上げているのでしょうか? そして、どのような変化が日本株市場で起こっているのでしょうか? 

 日本株市場の中身を把握するためによく活用されているのが、東京証券取引所が発表している「東証33業種」です。また、この33業種をさらに17業種に集約した「TOPIX-17シリーズ」があります。

 TOPIX-17シリーズは、ETF(上場投資信託)としても上場され、投資家が日本市場全体ではなく、特定の産業にフォーカスして投資できるように提供されています。

 市場全体を代表するTOPIX指数と、TOPIX-17各シリーズの指数変化率を比較してみると、日本株市場変化の中身が読み取れます。

 5年間の変化率を見ると、業種によってかなり異なる動きを見せているのが分かります。TOPIXより変化率が上回っているシリーズをハイライトしましたが、電気・精密や情報通信・サービスその他、などがかなりいいパフォーマンスを5年間記録したことが分かります。

 結局、このような業種が市場全体の動きをリードし、日本株全体の上昇をけん引していると説明することができます。

日本株の今後を見極める「成長テーマ」は?

 しかし、TOPIX-17シリーズの分類だけでは、実際に市場で起こっている「変化のトレンド」、いわゆる「テーマ」が把握しづらいこともあります。最近の新聞やテレビで、上記の業種分類ではピッタリ当てはまらない言葉をよく耳にされているかと思います。

 例えば、eコマースやロボット、AI(人工知能)、デジタル・イノベーションやバイオ、そして半導体など、グローバルで話題になっている投資のテーマが日本でも有望で、関連する企業の今後が期待される、などの記事やニュースが報道される頻度が最近かなり増えました。

 これらのテーマを上記の東証33業種やTOPIX-17シリーズの業種に当てはめることは、それほど簡単ではありません。

 例として、eコマースを考えてみましょう。eコマースは不特定多数の人を相手にオンラインでの取引を可能にしますが、関連する業種をTOPIX-17基準で考えると、小売りだけではなく、情報通信、物流、金融なども当てはまります。

 半導体のテーマも同様で、素材・化学、電機・精密、商社などを一緒に投資対象として検討しなければなりません。

「テーマ」を把握するには、既存の業種分類とは違う観点から投資対象を分類・調査・選定するプロセスが必要になります。次のチャートをご覧ください。

 上図のチャートは、各成長テーマを指数化したものとTOPIXのリターンを、2017年1月末から2021年9月末の期間で比較したものです。 

 テーマを指数化したものはグローバルの指数会社が発表しています。先ほどのTOPIX-17シリーズなどで分類するよりもテーマで分類したほうが、投資対象を直感的に理解しやすくなっています。

 テーマへの投資を目的とする投資信託は、既に多くの証券会社や銀行の窓口で販売されており、多くの投資家が保有しています。ただ、販売手数料などの負担と、設定・解約に日数を要するといった点から、より手軽な投資手段を求める声もあります。

 ETFであれば、より手軽に、安いコストで、値動きを把握しながら投資できる可能性が大きくなります。

成長テーマの投資手段としてETFが持つ強みは?

 上図で説明しているように、ETFは効率的で、手軽に売買できることが強みです。ETFにはベンチマークとなる指数が存在するため、ポートフォリオの構築に主観的な判断が入る余地がなく、より客観的かつシステマチックな運用が可能になります。

 また、投資家は公開情報をリアルタイムで確認しながら安心して投資をすることができます。

 このような長所から、ETF市場は世界で急成長しています。

 先に挙げた「成長テーマ」のETF市場もアメリカを中心に急成長しており、Global X社やARK社などは「破壊的な技術:既存産業のスキームを劇的に変化させる技術」を基準とするETFを多数株式市場へ上場し、多くの資金を集めています。

 日本のETF市場も、世界の中では遅れているものの着実に拡大しています。中でも、2021年1月に、Global X Japanから国内初の日本株成長テーマ型ETFが東京証券取引所に上場して以来、ETF市場でも成長テーマに投資する素地が整ってきました。

 成長テーマ型ETFは、ETFとしての効率性と各テーマの成長性を同時に追求することができる利点があり、今後も市場の拡大と高いパフォーマンスが期待されています。