今週の予想

日経平均は移動平均線の集まる2万8,500円水準を抜けるか? 

 今週の日経平均は、2万8,000円台前半を中心に推移することになりそうです。相場が急落した要因を考えると、大きな戻りを試すよりも、上下動しながら下限を確認する動きです。

 懸念材料の米債務上限問題は、12月まで先送りされただけであり、原油高の行方次第でインフレ懸念が一段と高まり、中国の恒大集団のデフォルト(債務不履行)リスクも高まることになります。

 しかし、日経平均株価が大きく下げたといっても、8月後半に急伸する前の水準に戻っただけだと言え、ここから仕切り直しという見方にもなりやすいかもしれません。売られすぎや値ごろ感も出てきます。このため日経平均は、NYダウが崩れなければ戻りを試すことになりますが、まずは移動平均線の集まる2万8,500円水準を試すことになります。

 米国の債務上限問題は、ひとまず一服するものの、インフレ懸念は残ります。

今週の指標:日経平均株価

 チャートを見ると10月6日の2万7,293円と8月20日の2万6,954円の安値水準まで下げており、この水準から今週は仕切り直しという見方もできます。

 米中の経済指標に振り回される状況は続くことになりますが、上下動しながら下値を確認することが想定されます。

 14日に衆議院が解散し選挙ムードに突入すると、政権公約が注目され、さらに経営危機に陥っている中国恒大集団の動向、原油高への懸念も注目されます。これらから日経平均は、2万8,000円台前半中心に推移するとの見方があります。

先週の動き

 先週の予測では、日経平均は米国の債務上限問題と長期金利上昇を受け、NYダウの戻りの程度に左右され、チャートから見ると75日移動平均線(1日時点2万8,624円)、200日移動平均線(1日時点2万8,669円)を守れるかどうかとしました。

 結果的には、週前半の米国では、債務上限問題や中国恒大集団の不動産問題を受けて大きく下げ、つれて日経平均も8日続落となり、6日(水)は2万7,293円まで下落しました。

 その後、米国で債務上限引き上げ問題が一服したことで、NYダウは反発し、日経平均も週末は一時+643円の2万8,321円と大幅上昇しました。しかし、9月米雇用統計の発表を控え、日経平均は+370円の2万8,048円で引けました。

今週の指標:NYダウ平均株価

 今週は第3四半期の決算シーズンが開始します。

 全般的には、特に消費関連を中心に新型コロナウイルス感染拡大の影響やサプライチェーンの混乱で業績が弱まる傾向です。

 一方で、債務上限が12月まで暫定引き上げでリスクが後退し、景気敏感株中心に買いが再燃する可能性があります。そして、コロナワクチン接種も進み、経済活動の再開が一段と加速するとみられています。

 ただ、サプライチェーンの混乱が悪化している兆候が見られ、インフレの長期化の可能性がリスクとしてくすぶります。

 13日のFOMC(米連邦公開市場委員会)議事録公開で、サプライチェーンの混乱にタカ派的指摘があれば、相場の上昇を抑えることになります。

先週の動き

 先週の予測では、10月相場も全季節的に売り圧力が強まる傾向にあり、短期的に荒い相場となりそうだとしました。連邦債務上限引き上げ問題は、引き続き存続しており、警戒が必要だとしました。

 10月4日(月)は、長期金利の上昇を嫌気し、大きく反落しましたが、その後は債務上限問題が12月まで延長されたことで、これを好感しNYダウは反発に転じました。7日(木)は、+337ドルの3万4,754ドルと3日続伸となりましたが、週末の9月米雇用統計は強弱まちまちだったことで、NYダウはほぼ横ばいで引けました。

今週の指標:ドル/円

 今週も発表される経済指標が良好であれば、FRB(米連邦準備制度理事会)による量的緩和策の早期縮小観測は一段と強まり、長期金利の上昇を受けてドル買いが継続することになりそうです。

 ただ、原油高などインフレ圧力が強まる可能性があり、株式相場が下落すれば、ドルの上値を重くすることになります。15日発表の9月米小売売上高が前月比でマイナスになると指摘されており、それによって株式が下落すれば、リスク回避のドル売り・円買いが強まることになります。

先週の動き

 バイデン米大統領が4日、「上限引き上げ回避を保証できない」と警告したことで、週前半はリスク回避のドル売り・円買いが優勢となりました。

 しかし、与野党の幹部の話し合いで7日に「上限を12月上旬まで一時的に拡大する合意」としたことを受け、長期金利は反発し、ドル買い・円売りが優勢となって、8日には1ドル=112.25円までドルが買われました。その後は、原油高がドル買いを支えて週の終値は1ドル=112.24円でした。

先週の結果

日経平均は週前半、米中株安で一時2万7,293円まで下落、終値では2万8,000円台回復

 先週の予測では、米国株の反発と新内閣の人事への期待があれば、日経平均の戻りを期待できるとするものの、その前提にはチャートで、75日移動平均線(1日時点2万8,624円)、200日移動平均線(1日時点2万8,669円)を守れるかどうかとし、守れれば戻りを試し、守れなければ一段安となって、戻りに時間を要するとしました。

 結果的には、週半ばまでは米株式が大幅下落となり、これに追随して日経平均も直近の移動平均線をことごとく下に切る動きとなりました。この理由は、中国の不動産大手の恒大集団問題が不透明なまま、さらに天然ガス価格急騰から電気問題が加わり、そして米国ではインフレ懸念から長期金利の上昇が止まらず、連邦債務上限引き上げ問題も不透明なままだったことによるものです。

 しかし、週半ばになると米国の長期金利上昇が一服し、債務上限引き上げ問題も短期的には解決してNYダウが戻りに転じたことで、日経平均は週後半の7日(木)から反発に転じ、8日(金)の週末は一時+643円の2万8,321円まで上昇し、終値は+370円の2万8,048円でした。

 先週は、週半ばまでは世界同時株安が続き、日経平均は10月6日(水)には2万7,293円と2万7,500円を割り込み、終値では2万7,528円と8日続落となりました。8日続落は2009年7月の9日続落以来、12年ぶりの連続安でした。

 これは、米中を中心にした世界株安に巻き込まれた動きです。

 具体的には、中国の不動産大手の恒大集団のデフォルト懸念問題と米国のインフレ懸念に加え、連邦債務上限の引き上げ問題です。

 まず、中国の恒大集団については、約33兆円といわれる巨額債務を抱え資金難不安に揺れる恒大集団は、香港取引所が4日に売買を停止しました。恒大集団の社債がデフォルトに陥ると金融市場が混乱するためです。当面、中国の株式市場は不透明感が漂うことになります。

 次に米国の債務上限問題は、引き上げされなければ10月18日以降にも連邦政府の資金がなくなり、デフォルトに陥る恐れがありました。しかし、6日に債務上限問題が12月まで延長されることになり、NYダウは7日(木)まで続伸となり、日経平均も7日(木)から9日ぶりの反発となりました。

 また、米国のインフレ懸念も急速に高まっています。8月の米消費者物価指数は、前年同月比+5.3%とFRBの目標の2%を上回り、8月の個人支出も前年同月比+4.3%と30年ぶりの水準となっています。

 これは、新型コロナ対策で国民に自由に使える資金を提供した結果ですが、今後、この出口がどうなるのか注意が必要です。

 また、11月からテーパリング(量的緩和の段階的縮小)が始まって量的緩和縮小に踏み出すことになります。このため、米金融政策が転換点を迎えることになり、株式市場の波乱を呼んだ格好になっているとの見方もあります。

 ただ、金融政策の転換による調整は、当然の一服場面であり、基本的には金融政策は今後も続くために、相場の上昇基調が崩れたわけではないとの見方もしています。

 週末8日(金)の日本市場の引け後の米国市場は、主要3指数とも小幅反落でした。

 NYダウは、ほぼ横ばいで▲8ドルの3万4,746ドルでした。注目の9月米雇用統計は強弱まちまちとなりました。

 非農業部門雇用者数は、予想を大きく下回りましたが、一方で8月分は上方修正されました。また、失業率は2016年以来の4.8%と低水準でした。

 原油は一時80.00ドルと2014年11月以来の水準となっており、インフレ要因が高まっています。