個別株投資を始めたい人に株式市場の”今”をお伝えする「トレンドマーケットスクールTOKYO」。14日(木)に衆議院解散が迫る今週10月11日(月)から15日(金)も、株式市場は波乱の展開が続きそうです。

岸田ショックで「選挙は買い」に暗雲。中国恒大問題がアジアに波及

 先週の株式市場は、6日(水)まで日経平均株価が12年ぶりに8営業日(市場が開いている日)連続で下落しました。

 特に、岸田文雄新首相が4日(月)の就任記者会見で金融所得課税の強化策を表明したことが不安視され、5日(火)の日経平均株価は一時1,000円近く急落しました。

 週末のテレビ番組で「金融所得課税は当面見直さない」と前言を翻しましたが、8日(金)の所信表明演説でも、業績を四半期ごとに開示する制度の見直しについて言及。

 企業が短期的な業績に追われず、従業員の賃上げに取り組めるようにするのが目的のようですが、上場企業の情報開示が減るのは株式投資にとって非常にネガティブ。市場では「岸田ショック」という言葉も出るほどです。

 10月31日(日)に予定される衆議院選挙が、はたして「選挙は買い」につながるか、疑問が出てきました。

 中国香港市場の混乱も日本株の下落要因でした。4日(月)以降、債務不履行(デフォルト)懸念のある中国第2位の不動産会社、中国恒大集団株の香港市場での取引が突如停止。

 上場する子会社売却に向けた措置のようですが、中国では、同社以外にも高級集合住宅販売の花様年控股集団が先週、債務不履行に陥りました。

 また、国慶節の祝日が明けた8日(金)の中国上海市場や他のアジア圏では不動産関連企業の株や社債が幅広く売られるなど、中国恒大集団の問題はアジア圏全域の不動産バブル崩壊という大きな危機につながる要素をはらんでいます。

 米国では、11月3日(水)のFOMC(米連邦公開市場委員会)でテーパリング(量的緩和策の縮小)開始が濃厚ということで、長期金利が1.6%台まで上昇しました。

 原油価格の代表的な指標であるWTI原油先物も一時、80ドル台を突破。欧州で続いた天然ガスの高騰はロシアのプーチン大統領の増産表明で一服したものの、厳冬期をひかえ電力、ガスの供給不安や価格高騰からは目が離せません。

 一方、米国政府の債務が議会の決めた上限に達して米国債の利払いができなくなる「債務上限問題」は7日(木)、議会上院で12月3日までの暫定的な上限引き上げ案が成立。ひとまずは収束しそうです。

 8日(金)発表の米国雇用統計の非農業部門新規雇用者数は予想の50万人を大幅に下回る19万4,000人増でした。しかし新規雇用者の落ち込みはFRB(米連邦準備制度理事会)がテーパリング開始を遅らせる可能性にもつながるので、8日(金)の米国株は小幅な下落にとどまりました。

 同時に発表された平均時給は前月比0.6%増と上昇が続いていて、人手不足が新たなインフレ圧力になりそうです。

インフレと金利上昇不安が続く中、13日の米消費者物価指数に注目!

 先週の日本株は資源価格や金利の上昇が収益改善につながる鉱業株や金融株が上昇し、これまで相場のけん引役だった海運株が急落。半導体関連など輸出株もさえない展開でしたが今週もその流れが続きそうです。

 直近の6-8月期が最終赤字となったイオン(8267)が今年の最安値を更新するなど、小売り・流通関連株は弱い株、強い株の差が鮮明に。

 今週も13日(水)のコシダカホールディングス(2157)、14日(木)の高島屋(8233)など百貨店、小売り、カラオケ、外食企業の決算が相次ぎます。

 これらの株は緊急事態宣言解除が決まった9月末以降、急速に反転上昇しましたが、決算発表で「材料出尽くし」となり、売られる可能性もあります。

 海外では、週明けになると、香港市場で中国恒大集団がらみの悪いニュースが出やすいので注意が必要です。

 米国では、13日(水)発表の9月消費者物価指数が注目されるでしょう。先月発表の8月分は前年同月比5.3%増と高水準でしたが、上昇率は鈍化。ただし、ガソリン価格や食品など生活に直結する品目は上昇が加速しており、その傾向が続くようだと株価には悪影響です。

 週後半には、13日(水)のJPモルガン・チェース(JPM)など銀行株を皮切りに、米国企業の第3四半期(7-9月期)決算発表が本格化。予想を上回る好決算が期待される面もあり、乱高下する株価が安定上昇に転じる起爆剤になるかもしれません。

 日本株は海外要因に振り回される1週間になりそうです。