はじめに

 今回のアンケート調査は2021年9月27日(月)~9月29日(水)の期間で行われました。

 9月末の日経平均は2万9,452円で取引を終えました。節目の2万9,000円台に乗せたほか、前月末終値(2万8,089円)からの上げ幅は1,300円を超える大きさとなり、月足ベースでも2カ月連続の上昇です。

 あらためて月間の値動きを振り返ると、日経平均は8月20日の取引時間につけた年初来安値からの反発の流れを引き継ぐ格好でスタートし、さらに、新政権に向けた国内政治の動きや新型コロナウイルスの感染拡大の落ち着きによる経済再開などへの期待も追い風となって、9月14日の取引時間には3万795円の年初来高値を更新する場面も見られました。

 ただし、その後は急ピッチな上昇による利益確定売りが出やすいタイミングの中で、中国の不動産大手企業の恒大集団の債務問題をはじめ、米国のインフレ懸念や債務上限問題などが相場の重しとなって、月末にかけては軟調な場面も目立つようになりました。

 月間の値幅(高値と安値の差)が2,796円と大きくなったのは気掛かりではありますが、それでも株価水準自体は切り上がる展開となりました。

 このような中で行われた今回のアンケートは4,500名を超える個人投資家からの回答を頂きました。日経平均のDIは、前回調査から株高の見通しを強め、米ドル/円の見通しDIについても、円安の見通しとなるなど、改善傾向が見られる結果となりました。

 次回も是非、本アンケートにご協力をお願いいたします。

日経平均の見通し

楽天証券経済研究所 シニアマーケットアナリスト 土信田 雅之

「大幅なDI改善も不透明感がくすぶる」

 今回調査における日経平均見通しDIの結果は、1カ月先がプラス23.11、3カ月先はプラス17.27となりました。前回調査がそれぞれマイナス8.63、プラス6.98でしたので、両者ともにDIの値を大幅に改善させた格好です。

 前回の調査期間(8月30日~9月1日)が年初来安値をつけた後、そして今回の調査期間(9月27~29日)が年初来高値をつけた後というタイミングだったこともあり、市場のムードの変化を感じさせる印象となりました。

 回答の内訳グラフをみると、1カ月先の強気派が占める割合は39.25%と、前回(18.93%)から倍増しており、弱気派・中立派から強気派への流れが見られます。

 9月に見せた日経平均の上昇が、海外株市場と比べた出遅れ修正から、政治期待やコロナ禍からの経済再開期待へと買い材料がうまくバトンリレーできたことで、「しばらくは強気」という見方が増えたためと思われます。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 3カ月先の強気派についても37.55%と、前回(32.96%)から増加していますが、先ほどの1カ月先DIと比べると、その変化自体は小幅にとどまっており、弱気派・中立派とのバランス関係はあまり変わっていません。もともと中期的な見通しについては、「堅調な展開が続く」という見方だったことがうかがえます。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 10月相場入りとなった足元の日本株ですが、日経平均がいきなり節目の2万9,000円を割りこむ大幅安で始まり、軟調な滑り出しとなりました。

 日経平均は8月20日の年初来安値からわずか18営業日で年初来高値を更新してきましたが、その直後に、中国恒大集団の債務問題や、9月開催の米FOMC(連邦公開市場委員会)後の10年債利回りの上昇傾向、そしてデットシーリング(債務上限)をめぐる米議会の動向など、売りの口実となる材料が次々と出てきて、株価が急落するなど、ここ1カ月あまりの値動きはかなり慌ただしくなっています。

 当面の株式市場は、株価の落ち着きどころを探る展開が見込まれますが、これまでの株価の先高感の理由とされてきた、「米国のテーパリング開始は織り込み済み」、「米国の物価上昇は一時的にとどまる」、「中国恒大集団の問題は限定的」、「企業業績の回復基調は続く」、「国内政治への期待は買い」という前提シナリオが揺らいでしまう展開には注意が必要です。

 例えば、中国恒大集団の問題については、今のところ懸念されているような「金融ショックにはならない」という見方が優勢ですが、2020年の中国GDP(国内総生産)における不動産部門の寄与度は7%を超える規模になっており、仮にショックは回避できたとしても、中国経済への下押し圧力は避けられないと思われます。

 また、米国の債務上限問題についても、政治的な思惑も絡むため、目安とされる10月18日ギリギリまで状況が進展しない可能性があります。

 さらに、コロナ禍による物流停滞や中国の電力不足などによって、製造業のサプライチェーンのボトルネックがなかなか解消せず、経済活動への影響も懸念されるなど、先ほどの前提シナリオを揺るがしかねない火種はくすぶっています。

 シナリオ修正の動きとなれば、株式市場も本格的に調整する展開が想定されます。そのため、目先で株価が反発する局面があったとしても、「短期間の投資スタンスで臨み、深追いしない」程度にとどめておくのが無難かもしれません。

楽天DI 2021年9月

楽天証券経済研究所 根岸 美知代

【今月の質問1】 自民党総裁選、あなたが投票できるとしたら、誰を選びますか?

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 一番多くご回答いただいた河野太郎氏、続いての高市早苗氏ではなく、新総理大臣は、岸田文雄氏となりました。

【今月の質問2】 新首相にコロナ対策および経済再開についてのぞむことは何ですか?(複数回答可)

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

【今月の質問3】 新首相にコロナ対策以外でのぞむ政策は何ですか?(複数回答可)

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 その他コメントもたくさんいただきました。

・景気回復のための減税:40代男性
・コロナで傷んだ企業の立て直し策:50代男性 
・国内ワクチン、基礎研究強化:50代女性
・食の安全、食料自給率を上げる(農業問題):60代男性
・誰がなっても変わりばえしないメンバーで期待薄:50代女性
・アルバイト:パート:非正規雇用の正規並の待遇改善:60代男性
・スマートフォンやPCによる投票(選挙制度のデジタル化):50代男性
・金持ち優遇税制の見直し、皇室のお金の流れの透明化、少子化対策:50代女性
・議員削減、減税、入国規制、一部の利権第一でなく国民第一の善政:50代男性
・介護しながら仕事をすることが難しくパンクするから考えてほしい:50代女性
・政府の腐敗と忖度のできる限りの減少と情報開示:60代女性
・このままなら日本国消滅、超超大胆な赤ちゃん5人以上産む政策:60代男性
・社会保障制度の充実、北欧諸国のような老後安心できる社会:50代女性
・海外への援助するのは少し控えて貧乏の国民の方を考えて下さい:80歳以上男性
・男女の地位(所得)格差を是正してほしい:40代女性
・40代50代の就職氷河期世代の支援、救済:40代男性
・基本的に公共投資に賛成だが、余りに無駄な工事はやめてほしい:40代男性
・所得税や消費税の減税に取り組んで欲しい:20代男性
・年金改革。若い人にも安心できる環境。雇用対策。最低賃金アップ:50代女性
・税制見直し、高校生大学生支援、大学無償化、高齢者医療無償化:50代女性

 今回もたくさんのご意見をいただきまして、ありがとうございました。

為替DI:10月のドル/円、個人投資家の予想は?

楽天証券FXディーリング部 荒地 潤

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 DIは「強さ」ではなく「多さ」を測ります。DIは円安や円高の「強さ」がどの程度なのかを示しているわけではありません。しかし、アンケートに個人投資家の相場観が正確に反映されているならば、DIの「多さ」は「強さ」に関係することになります。

「10月のドル/円は、円安、円高のどちらへ動くと予想しますか?」

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 楽天証券が先月末に実施した相場アンケート調査によると、個人投資家4,517人のうち39%(1,763人)が、10月のドル/円は「ドル高/円安」に動くと予想。先月に比べて円安見通しは4ポイント増えました。

ドル安/円高」予想は全体の23%(1,042人)で、先月に比べて円高見通しは2ポイント増。

 38%(1,763人)は、「動かない(わからない)」でした。

利上げが先か、緩和縮小か。それが問題だ

 9月23日、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長はFOMC後の記者会見において、「早ければ次回FOMCで緩和縮小の開始を発表する」と事前告知しました。次回のFOMCは11月2、3日なので、約1カ月後ということになります。

 緩和縮小の行程表についてパウエル議長は「終了は2022年半ばごろが適切だろう」と述べました。現在の量的緩和政策のもとでFRBの債券購入額は月1,200億ドル。2022年6月に終了するためには、毎月150億ドルずつ縮小していくとして、8カ月必要。緩和縮小はしたがって、今年の11月から始まるとみられます。

 FRBはインフレに関して「著しくエスカレートしている」という見解を示しています。エスカレートしているけれど一過性なのか、それとも長く続くのか。この点が実は重要なのですが、明確になっていません。ただパウエル議長は、このインフレが想定していたよりも「しつこく持続する」ヤツだとは認めています。

 FRBは、緩和縮小と利上げは別物だと繰り返していますが、市場関係者は、緩和縮小と利上げはワンセットだと考えています。緩和縮小は、FRB金融政策というフルコースのなかの前菜のようなもの。前菜の次はメインの「利上げ」を期待するのは当然です。

 緩和縮小は雇用に関わる政策、利上げはインフレに関わる政策と、目的がそれぞれ違います。最近の経済指標を見ると、インフレ目標が完全雇用より先に達成される可能性が高い。ならば緩和縮小の前に利上げというのが、金融政策的には正しい順番になります。

 しかし、前菜の前にメインを出すのはイレギュラーな順序になってしまう。もっともBOE(イングランド銀行)も、インフレ封じのために量的緩和終了の前に利上げを実施する考えを示しています。BOEはともかく、FRBが逆転技で利上げを先に実施することを決めたら、世界の金融市場は大混乱するでしょう。

 順番を変えられないのなら、最大雇用を達成したと確信するまで緩和縮小を遅らせるという技もあります。緩和縮小を延期するなら、利上げも延期ということになる。ではインフレを放置するのか? ここで、インフレが一過性かどうかという判断が重要な意味を持ってくるのです。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 楽天証券が実施した相場アンケート調査によると、個人投資家の25%が10月のユーロ/円は「ユーロ高/円安」に動くと予想。ユーロ高見通しは、先月から横ばいでした。

ユーロ安/円高」予想は全体の20%。先月に比べてユーロ安見通しは4ポイント増。

 残り55%は「動かない(わからない)」でした。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 楽天証券が実施した相場アンケート調査によると、個人投資家の22%が10月の豪ドル/円は「豪ドル高/円安」に動くと予想。豪ドル高見通しは、先月から横ばいでした。

豪ドル安/円高」予想は21%で、先月に比べて豪ドル安見通しは4ポイント増。残り57%は「動かない(わからない)」でした。

今後、投資してみたい金融商品・国(地域)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト 吉田 哲

 今回は、毎月実施している質問「今後投資してみたい国(地域)」で、「国内株式」「外国株式」を選択した人の割合と、それらを選択した人の年代別の割合に注目します。

 質問「今後、投資してみたい金融商品」は複数選択可で、選択肢は、国内株式、外国株式、投資信託、ETF(上場投資信託)、REIT(上場不動産投資信託)、国内債券、海外債券、FX(外国為替証拠金取引)、金やプラチナ地金、金先物取引、原油先物取引、その他の商品先物、特になしの13個です。

図:質問「今後、投資してみたい金融商品」で「外国株式」「国内株式」を選択した人の割合

出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成

 9月の調査では、「国内株式」を選択した人の割合が56.03%、「外国株式」が46.14%でした。「外国株式」が「国内株式」を上回る、統計史上初の出来事は起きていないものの、この数カ月間、2つは50%前後で肉薄した状態が続いています。

「国内株式」も「外国株式」も、ほぼ50%、つまり、どちらも、回答者のおよそ半分に選ばれています。以下のグラフは、「国内株式」と「外国株式」を選択した回答者を、年代別に示したものです。(重複回答を除く)

図:「国内株式」と「外国株式」それぞれの回答者の年代別の割合(重複回答を除く)

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

「国内株式」が「外国株式」を上回った年代は、60代から80歳以上の3つです。逆に、「外国株式」が「国内株式」を上回った年代は、50代以下の全てです。年代が高いほど「国内株式」を、低いほど「外国株式」を、より強く選好する傾向があると言えます。

「外国株式」について、筆者は、投資活動などさまざまな分野で新しいものを積極的に取り入れる若い方々に選ばれているというイメージを抱いていましたが、実際はそうではなく、「50代」の皆様においても、「国内株式」よりも「外国株式」を選ぶ方が多くなっています。

 今後、「外国株式」を選ぶ方々の年齢層が、今にも増して高くなれば、「外国株式」を選ぶ方の割合が「国内株式」を上回る事態が発生するかもしれません。引き続き、「国内株式」と「外国株式」の年代別の割合に、注目したいと思います。

表:今後、投資してみたい金融商品 2021年9月調査時点 (複数回答可)

投資対象 割合 前回比
国内株式 56.03% △ 3.18%
外国株式 46.14% ▼ 2.84%
投資信託 41.27% △ 2.40%
ETF 32.48% △ 0.96%
REIT 13.64% ▼ 0.31%
国内債券 5.05% △ 0.98%
海外債券 7.68% △ 1.22%
FX(外国為替証拠金取引) 7.20% ▼ 0.17%
金やプラチナ地金 14.79% △ 0.46%
金先物取引 1.37% ▼ 0.41%
原油先物取引 2.39% ▼ 0.18%
その他の商品先物 1.59% ▼ 0.27%
特になし 7.35% ▼ 0.40%
出所:楽天DIのデータより筆者作成

表:今後、投資してみたい国(地域) 2021年9月調査時点 (複数回答可)

国名 割合 前回比
日本 43.24% △ 9.24%
アメリカ 68.34% ▼ 1.98%
ユーロ圏 8.24% △ 0.18%
オセアニア 5.07% △ 0.83%
中国 7.00% ▼ 3.42%
ブラジル 2.30% ▼ 0.04%
ロシア 1.24% ▼ 0.10%
インド 31.92% △ 4.34%
東南アジア 16.32% △ 0.61%
中南米(ブラジル除く) 1.66% ▼ 0.28%
東欧 1.64% △ 0.26%
アフリカ 5.96% △ 0.30%
特になし 6.04% ▼ 0.86%
出所:楽天DIのデータより筆者作成