天然ガス価格が上昇!なぜ?
このところ米国の天然ガス価格が急騰しています。
天然ガス価格(ヘンリーハブ)の推移
今回の天然ガス価格の上昇は、悪天候などの特殊事情ではありません。
特別理由もないのに天然ガス市況が引き締まっている理由は、近年、LNG(液化天然ガス)による輸出施設が完成し、慢性的にだぶついていた余剰分を輸出に回すインフラストラクチャーが整ったからだと言われています。
天然ガス価格上昇の理由1:欧州で天然ガスがひっ迫
折から欧州では、英国で風力発電の発電量が計画を大幅に下回った事情に加え、欧州大陸でも老朽化した原子力発電所をリタイアし、再生エネルギーへと電力源をシフトしています。しかし、そのペースが需要に追い付かず、天然ガスへの依存を強めているなどの事情があります。
EU(欧州連合)の天然ガスの在庫は経済再開の影響もあり平年より低い水準です。
EUの天然ガス在庫推移
こうした諸事情により、需給にタイト感が出ています。
天然ガス価格上昇の理由2:米国企業は増産に踏み切らない
これまでなら、米国のシェール業者がすぐに増産し、需給関係を損ねてしまうパターンが常でした。
しかし、バイデン米政権はシェール業者を目の仇(かたき)にしていますし、シェール業者自体も過去の野放図な増産が価格を破壊し、結果として自らの首を絞めたことを反省し、設備投資を絞り込んだままです。
石油天然ガス会社の営業キャッシュフローと設備投資
このため最近の天然ガス、原油価格の堅調で米国の石油天然ガス会社の営業キャッシュフローはよい感じで増えているのに、投資額はあまり増えていません。
そのことは、リグカウント(油井の数)にも如実に表れており、特に天然ガスのリグは歴史的に少なくなっています。
北米ロータリー・リグカウント
もちろんリグは近年大型化しているし、一つのリグから斜めにいろいろな方向へ掘削することができる関係で、見かけのリグの数の少なさほど生産能力は落ちていません。
それを断った上でも、今のシェール各社のリグ活動は、価格維持を念頭に置いた、秩序だったものであると言えるでしょう。
天然ガス価格上昇の恩恵を受けるシェール企業5社
このような好条件の下でシェール業者は着々と稼いでいます。シェールガスの主な生産地は米ペンシルベニア州とウェストバージニア州にまたがるマーセラスです。
月次シェールガス生産高
マーセラスで操業している主なシェールガス企業はEQT(EQT)、サウスウエスタン・エナジー(SWN)、アンテロ・リソーシズ(AR)になります。
次に西テキサスのパーミアンではパイオニア・ナチュラル・リソーセズ(PXD)、ダイヤモンドバック・エナジー(FANG)などが操業しています。
本コンテンツは情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘する目的で、作成したものではありません。銘柄の選択、売買価格等の投資の最終決定は、お客様ご自身でご判断いただきますようお願いいたします。本コンテンツの情報は、弊社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その情報源の確実性を保証したものではありません。本コンテンツの記載内容に関するご質問・ご照会等には一切お答え致しかねますので予めご了承お願い致します。また、本コンテンツの記載内容は、予告なしに変更することがあります。