冬場を前に動力炭不足が鮮明、再生可能エネルギーや原発銘柄を推奨

 中国は電力会社の一般炭在庫が10年以上ぶりの低水準にとどまったまま、冬を迎えようとしている。BOCIは数カ月以内に大規模停電が発生し、工業生産の一段の縮小やインフレ圧力を招く恐れがあるとの見方。投資家に対し、今は安全策を取り、コスト構造や売り上げ見通しが安定的な電力銘柄に投資先を限定するよう勧めている。トップピック銘柄は、風力発電、原発、ごみ処理発電などを手掛ける龍源電力(00916)、大唐新能源(01798)、中国光大環境(00257)、中国広核電力(01816)の各社。半面、太陽光発電設備銘柄の短期的なパフォーマンスに関しては、コストインフレによる需要萎縮懸念を理由に、これまでより慎重スタンスに転じている。

 BOCIによると、中国の電力需要が1桁台後半の伸びを維持する限り、再生可能エネルギー発電の増設分だけでは需要をまかなえず、石炭需要(火力発電)が膨らむ。ただ、リサーチを通じて明らかになったのは、国内の大手電力グループの石炭在庫が9月末時点でおおむね10-14日分程度にとどまること。この数字は2009-2019年の9月末の平均値21.2日分の約半分に当たるという(1日当たり消費量の縮小を織り込んだ数字)。

 こうした中、国家発展改革委員会(NDRC)は9月22日、電力各社に対し、冬場に7-12日分の石炭在庫の維持を認める異例の通達を発した。これは従来の指針を大きく下回る数字。これにより、短期的な石炭在庫の補充の可能性が後退したとみられる。

 現在の価格環境の下では、石炭火力発電を手掛けるすべての大手電力グループは赤字決算を余儀なくされる。各地方政府は最近、石炭生産量の確保と電力会社の損失軽減に向け、電力価格の値上げ制度を導入したが、BOCIはこうした施策の有効性に対して懐疑的。「供給側改革」による供給制限の影響で石炭生産量の押し上げ効果はさほど見込めず、一部エリアでは電力会社の赤字縮小につながるかも不透明だとした上で、産業界の電力コスト増が工業製品価格への転嫁を招く懸念がくすぶるとした。石炭供給制限を直ちに見直さない限り、中国経済は電力不足とインフレというダブルパンチに見舞われる可能性があると指摘している。

 石炭の供給不足が続く中、BOCIはこの冬、燃料コストインフレとは無縁の発電銘柄(純粋な再生可能エネルギーや原発、廃棄物発電銘柄)への投資に限定するよう助言。龍源電力、大唐新能源、中国光大環境、中国広核電力の株価の先行きに強気見通しを付与した。半面、信義光能(00968)、福莱特ガラス(06865)などコスト圧力に直面している太陽光モジュール関連銘柄に関しては中立見通しを継続している。

 一方、レーティング面での潜在リスク要因としては、風速が予想を下回り、風力発電効率に影響する可能性や、広東省・台山原発1号機の運転停止(燃料棒破損)が長引く可能性、地方政府財政の悪化で廃棄物処理費用の支払いが遅れる可能性などを挙げている。