第100代内閣総理大臣に岸田文雄氏が就任する今週の「トレンドマーケットスクールTOKYO」。先週は世界的なインフレ懸念で株価が急落しましたが、10月4日(月)から8日(金)は、どんな1週間になるでしょうか?

新内閣誕生で材料出尽くし!?海外インフレに注意!

 先週の株式市場は非常に値動きの荒い展開でした。

 29日(水)の自民党総裁選では岸田文雄氏が勝利。しかし28日(火)夜に米国株が急落したことで、日経平均株価は前日比639円安と大幅に下落。9月中間期配当の権利落ち日だったことも響きました。

 自民党の党内人事が決まった1日(金)も世界的インフレ懸念で、日経平均株価は菅前首相が退陣表明した9月3日の始値に近い2万8,771円で終了。自民党総裁選相場はある意味、完全に終了したといえるでしょう。

 世界的な株価下落の元凶はインフレ懸念や長期金利の上昇です。物価が上昇すると消費が落ちて景気が悪くなりますし、世界各国の中央銀行が量的緩和を続けて市中にお金を大量供給できなくなります。お金の量が増えすぎたことがモノの価値の上昇、つまりインフレにつながるからです。

 28日(火)の米国市場では、FRB(米連邦準備制度理事会)の年内量的緩和縮小(テーパリング)もあって、長期金利が1.5%台まで上昇。北海ブレンド原油が1バレル80ドル台に急騰、天然ガスも1年前の6倍まで値上がりし、株価を痛撃しました。

 29日(水)にはパウエルFRB議長が上院議会で、コロナ禍による供給面のボトルネック(目詰まり)やサプライチェーンの混乱で、「高インフレが数カ月続く」と証言。

 米国では「9月は株が下がりやすい」といわれますが、実際、S&P500は月間4.8%安、ナスダック総合指数は5.3%安と、2020年3月のコロナショック以来の下落率でした。

 1日(金)に発表された米個人消費支出の価格指数(PCEデフレーター)は、前年比4.6%増と30年来の高インフレがさらに悪化しました。しかし、米国株は反発。悪材料を無視して買いが入ったのは、まだ強い証拠ですが、インフレで中国や米国の電力供給に不安が出ているほか、米国の債務上限問題もあり、悪材料が山積。今週も株価の乱高下が続きそうです。

絶好調の旅行株など内需株、海運・半導体株のリバウンドに期待!

 今週は4日(月)の臨時国会で新首相に選出される岸田内閣の組閣人事が注目されます。しかし、総裁選に敗れた河野太郎氏が党広報本部長と”冷遇”されたこともあり、内閣人事でも失望売りを招く可能性がありそうです。

 海外では、中国市場が国慶節で7日(木)まで連休。債務不履行懸念が続く不動産会社・中国恒大集団絡みのネガティブなニュースは小休止かもしれません。

 米国では、8日(金)に発表される米国雇用統計に注目が集まります。「11月テーパリング開始、2022年中に利上げ」がFRBの”既定路線”となる中、今の米国市場ではインフレと景気減速が同時進行する状況が不安視されています。

 今回50万人増が予想される9月の新規雇用者数が想定以上に落ち込むと、景気減速が意識される展開に。逆に雇用者数が大幅に増えるのも、インフレ加速やFRBの利上げ前倒しが想起され、株価の下げ要因になるかもしれません。

「景気が良すぎる→インフレが加速→FRBが金融引き締めを急ぐ→株式市場に流れ込むお金の量が減る」、もしくは「コロナ禍の供給不安でインフレ加速→物価が高すぎて景気減速→企業業績悪化」と、どっちに転んでも「株安」という連想が働くわけです。

 むろん、「雇用者増で景気回復→素直に株高」「雇用者減で景気悪化→金融引き締め先送り→株高」というように、ポジティブに振れる可能性もあります。

 先週の日本株では、緊急事態宣言解除で、飲食、小売りなど内需株が堅調でした。中でも国内旅行予約サイトの旅工房(6548)エアトリ(6191)、旅行代理店のKNT-CTホールディングス(9726)など旅行株が、岸田新政権による「Go To トラベル」再開期待で急上昇しています。

 今週は6日(水)のイオン(8267)など、2月決算の小売り企業が相次いで中間期決算を発表します。新政権による数十兆円規模の景気対策という追い風もあり、業績の先行きにサプライズがあった企業が買われそうです。

 逆に先週は、これまで相場のけん引役だった海運株や半導体株が、1週間で30%下落した川崎汽船(9107)を筆頭に総崩れとなりましたが、海外市場が落ち着けば、そのリバウンド上昇に期待できます。