コロナショック以降の株価指数の上昇率に注目する
2020年3月のコロナショック以降、日経平均株価も大きく上げ、企業業績も全体として大幅に改善してきています。ただし、景気は必ずうねっていくもので、企業業績の順調な伸びが永遠に続くということはありません。
株価は景気に先行して動くといわれますが、次の景気悪化に備えるとしたら、どのような戦略が考えられるのか? 今回、その戦略の1つとして、「コロナショック以降の上昇率の低い業種に注目する」についてお伝えしたいと思います。
東証株価指数(33業種)において、コロナショックがあった3月16日以降の上昇率ランキングを見てみましょう。
東証株価指数(33業種)の上昇率
(2020年3月16日~2021年9月27日)
順位 | 業種 | 上昇率 | |||
1位 | 海運業 | 609.3% | |||
2位 | 電気機器 | 115.2% | |||
3位 | 鉄鋼 | 113.4% | |||
4位 | サービス業 | 103.1% | |||
5位 | 精密機器 | 91.7% | |||
6位 | 機械 | 87.1% | |||
7位 | 金属製品 | 84.8% | |||
8位 | ゴム製品 | 76.6% | |||
9位 | 輸送用機器 | 73.4% | |||
10位 | ガラス・土石製品 | 71.8% | |||
11位 | 非鉄金属 | 71.8% | |||
12位 | 保険業 | 66.4% | |||
13位 | 倉庫・運輸関連業 | 66.2% | |||
14位 | その他製品 | 66.1% | |||
15位 | 証券、商品先物取引業 | 64.7% | |||
16位 | 化学 | 64.5% | |||
17位 | 卸売業 | 62.1% | |||
18位 | その他金融業 | 60.4% | |||
19位 | 小売業 | 59.0% | |||
20位 | 情報・通信業 | 58.8% | |||
21位 | 銀行業 | 53.9% | |||
22位 | 不動産業 | 53.6% | |||
23位 | 鉱業 | 45.0% | |||
24位 | 建設業 | 42.5% | |||
25位 | 石油・石炭製品 | 41.8% | |||
26位 | 繊維製品 | 41.8% | |||
27位 | 水産・農林業 | 40.2% | |||
28位 | パルプ・紙 | 37.7% | |||
29位 | 食料品 | 36.7% | |||
30位 | 医薬品 | 35.8% | |||
31位 | 空運業 | 20.6% | |||
32位 | 陸運業 | 19.7% | |||
33位 | 電気・ガス業 | 14.2% | |||
出所:日本取引所グループ ホームページ掲載データよりマネーブレインが作成 |
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上昇率トップの海運業は、海上輸送の運賃が高騰していて、空前の利益水準となっています。2位の電気機器は、半導体関連や電気部品などが特に拡大していて、3位の鉄鋼は、市況の大幅な上昇により、収益は急回復となっています。
一方で、上昇率下位を見てみると、電気・ガス業は脱炭素化への取り組みの必要性が言われていて、陸運業に含まれる鉄道会社、それから空運業は、コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、業績は大幅に悪化している状況にあります。
当然ながら投資家、特に短期志向の投資家の注目は、上昇率の高い業種のほうに向いていると思いますが、その業種の業績の伸びが止まってきたときには、逆に短期投資家の売りが出てくることが考えられます。
その半面、電気・ガス、鉄道、食品、医薬品は一般的にも景気に左右されにくいディフェンシブといわれる業種で、今、短期投資家が注目していない分、景気が悪化する局面ではこのようなディフェンシブのほうに資金が回ってくることも考えられます。
上昇率の低い順に1つ1つ見ていきましょう。
上昇率の低い業種(1~3位)
第1位 電気・ガス業
時価総額の大きい代表的な3銘柄は、東京瓦斯(9531)、中部電力(9502)、関西電力(9503)です。景気に左右されにくい業種の代表格です。世界的な脱炭素化の流れの中、二酸化炭素を排出している側の業種として投資家から敬遠されているという側面もありますが、株価が低位に追いやられている分、上昇してくることも考えられます。
第2位 陸運業
時価総額の大きい代表的な3銘柄は、JR東海(9022)、JR東日本(9020)、SGホールディングス(9143)です。コロナウイルス感染症拡大の影響で、緊急事態宣言による旅行客の大幅減少、テレワークの広がりなどにより、鉄道会社の収益は大幅に悪化しています。コロナウイルス感染症が収束して、通勤、旅行需要が増えてくれば業績の回復が見込め、もし、業績が回復しないときでもインフラ事業のため、場合によっては運賃の値上げも考えられます。
第3位 空運業
時価総額の大きい代表的な2銘柄は、ANAホールディングス(9202)、日本航空(9201)です。鉄道会社と同じく、コロナウイルス感染症拡大の影響を大きく受けています。緊急事態宣言の解除をきっかけに、旅行、ビジネス出張の需要が戻ってくれば、業績の回復が見込めます。Go Toトラベルなど、国が旅行の支援をするような策が出てくることも考えられます。
上昇率の低い業種(4~5位)
第4位 医薬品
時価総額の大きい代表的な3銘柄は、中外製薬(4519)、第一三共(4568)、武田薬品工業(4502)です。コロナウイルス感染症拡大の影響で、感染リスクを避けるために病院に行く人が減っていることも収益に影響しています。コロナウイルス感染症が収束して、受診抑制の動きがおさまってくれば、収益の回復が見込めます。
第5位 食料品
時価総額の大きい代表的な3銘柄は、日本たばこ産業(2914)、キリンホールディングス(2503)、アサヒグループホールディングス(2502)です。食品業界の中でも、特に外食産業向けの割合の高い企業がコロナウイルス感染症の大きな影響を受けています。こちらも、コロナウイルス感染症が収束して、外食産業が通常どおりの営業に戻ることによって、収益の改善が見込めます。
次の景気悪化に備えた運用の必要
足もとでは、世界的に金融緩和縮小に向かう動き、中国の恒大の動向、半導体などの供給不足による生産調整など不安材料もあります。すぐに業績が悪化してくるような兆候を感じているわけではありませんが、長期の視点で考えると、企業業績の良いうちに次の景気悪化に備えた運用を考えておくということを、そろそろ行っていく必要があるかもしれません。
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