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本レポートに掲載した銘柄:KLAコーポレーション(KLAC、NASDAQ)シノプシス(SNPS、NASDAQ)

KLAコーポレーション

1.2021年6月期4Qは31.8%増収、58.9%営業増益

 KLAコーポレーションの2021年6月期4Q(2021年4-6月期、以下前4Q)は、売上高19.25億ドル(前年比31.8%増)、営業利益7.20億ドル(同58.9%増)と好調でした。

 セグメント別に見ると、主力のウェハ検査装置が売上高7.40億ドル(同51.0%増)と前3Q 7.15億ドル(同33.4%増)を上回る伸びを示しました。KLAのウェハ検査装置は一けたナノ台の最先端半導体向けが市場シェア100%の独占状態、10ナノ台以下の汎用半導体向けも過半数のトップシェアを持っていると推定されます。半導体デバイスメーカー、シリコンウェハメーカーからの需要が増えており、部材不足にはなっていますが、大幅増収を維持しています。

 日本のシリコンウェハメーカーによれば、シリコンウェハの微細化対応が進みウェハ検査装置のスペックが高度化するにつれてKLAは値上げを行っているもようであり、これが全体の採算向上に寄与していると思われます。

 パターニング(フォトマスク欠陥検査装置など)も、前4Qは売上高4.28億ドル(同39.4%増)と前3Qの4.00億ドル(同33.8%増)を上回る売上高となりました。

 その他、プリント配線基板・ディスプレイ・電子部品検査、サービスも順調に伸びました。

 この結果、2021年6月期通期は売上高69.19億ドル(同19.2%増)、営業利益24.89億ドル(同41.5%増)となりました。営業利益率は2020年3月期30.3%から2021年3月期36.0%へ上昇しました。

表1 KLAコーポレーションの業績

株価    370.98ドル(2021年9月23日)
時価総額    56,749百万ドル(2021年9月23日)
発行済株数    154.283百万株(完全希薄化後)
発行済株数    152.971百万株(完全希薄化前)
単位:百万ドル、%、倍
出所:会社資料より楽天証券作成。
注1:当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。 
注2:EPSは完全希薄化後(Diluted)発行済株数で計算。ただし、時価総額は完全希薄化前(Basic)で計算。
注3:会社予想は予想レンジの中心値。

表2 KLA:主要製品売上高(四半期ベース)

単位:100万ドル
出所:会社資料より楽天証券作成

表3 KLA:主要製品売上高(通期ベース)

単位:100万ドル
出所:会社資料より楽天証券作成

2.2022年6月期も業績好調が予想される

 ロジック半導体の最先端ラインと汎用半導体ライン、メモリに至るまで、半導体のほぼ全ての分野で設備増強が行われています。そのため、当面の間、KLAのウェハ検査装置に対する需要は強いものが予想されます。またフォトマスク欠陥検査装置については、レーザーテックのようなEUV光を使ったタイプはまだ出ていませんが、3ナノ、5ナノライン向けの一部の需要を取り込むことで一定の伸びが予想されます。

 このため、2022年6月期、2023年6月期も業績好調が予想されます。楽天証券では、KLAの2022年6月期を売上高88億ドル(前年比27.2%増)、営業利益35億ドル(同40.6%増)、2023年6月期を売上高103億ドル(同17.0%増)、営業利益43億ドル(同22.9%増)と予想します。

 なお、2022年6月期1Q(2021年7-9月期)の会社側ガイダンスは、売上高19.2~21.2億ドル(同24.8~37.8%増)、当期純利益5.77~7.12億ドル(同37.1~69.1%増)となっています(表1の会社予想は予想レンジの中心値)。四半期ベースでも引き続き業績好調が予想されます。

3.KLAの目標株価を前回の400ドルから470ドルに引き上げる

 KLAの今後6~12カ月間の目標株価を、前回の400ドルから470ドルに引き上げます。2022年6月期の楽天証券予想EPS 18.93ドルに、成長性を考慮した想定PER20~25倍を当てはめました。引き続き投資妙味を感じます。

シノプシス

1.2021年10月期3Qは、9.6%増収、4.3%営業減益

 シノプシスの2021年10月期3Q(2021年5-7月期、以下今3Q)は、売上高10.57億ドル(前年比9.6%増)、営業利益2.02億ドル(同4.3%減)となりました。

 セグメント別に見ると、EDA(エレクトロニック・デザイン・オートメーション、ロジック半導体設計システム)は売上高5.90億ドル(同10.9%増)と順調に伸びましたが、IP&システムインテグレーション(インターフェース、セキュリティ等共通化できるロジック半導体設計図の知的財産権の販売とシステムインテグレーション)は3.64億ドル(同8.3%増)と今1Q、2Qの前年比30%台の伸びから鈍化しました。これは前3QからIP&システムインテグレーションが伸び始めたことの反動と思われます。会社側によれば、EDA、IP&システムインテグレーションともに、最先端の5ナノ、3ナノから40ナノまでの設計需要は増加しています。

 ただし、研究開発費、販売費及び一般管理費、リストラ経費等の費用増加によって、今3Qは営業減益となりました。

表4 シノプシスの業績

株価(NASDAQ)    322.88ドル(2021年9月23日)
時価総額    49,283百万ドル(2021年9月23日)
発行済株数    156.907百万株(完全希薄化後)
発行済株数    152.635百万株(完全希薄化前) 
単位:百万ドル、ドル、%、倍
出所:会社資料より楽天証券作成。
注1:当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。
注2:EPSは完全希薄化後(Diluted)発行済株数で計算。ただし、時価総額は完全希薄化前(Basic)で計算。
注3:会社予想は予想レンジの中心値。

表5 シノプシス:プロダクトグループ別売上高(四半期)

単位:100万ドル
出所:会社資料より楽天証券作成
注:四捨五入のため合計が合わない場合がある。

表6 シノプシス:プロダクトグループ別売上高(年度)

単位:100万ドル
出所:会社資料より楽天証券作成
注:四捨五入のため合計が合わない場合がある。

表7 シノプシスの地域別売上高

単位:100万ドル
出所:会社資料より楽天証券作成
注:2021年10月期1Qより、地域区分が変更になった。北米、ヨーロッパ、韓国は変わらず、日本、アジア太平洋が、中国、その他に変更された。

2.3ナノ時代へ向けてEDAの需要増加が続こう

 今3Qは一けた増収、営業減益と振るわなかったものの、会社側はEDAの中長期での需要拡大の見方を変えていません。会社側の今4Qガイダンスは、売上高11.38~11.68億ドル(前年比11.0~14.0%増)、営業利益2.14~2.16億ドル(同9.2~10.2%増)となっており、今3Qから回復するとなっています。また、2021年10月期通期ガイダンスは、前回の売上高40.35~40.85億ドル、営業利益7.94~7.99億ドルから、今回は売上高41.90~42.20億ドル、営業利益7.59~7.61億ドルへ、売上高については上方修正されました。

 来期2022年10月期は3ナノの量産が始まるため、今の最先端ロジック半導体である5ナノ向けの設計需要に、3ナノ半導体の設計需要がすでに新たに加わっています。また、半導体不足を反映して、10ナノ台から40ナノまでの設計需要も多くなっているもようです。最先端から汎用までの半導体需要が中長期で拡大するという見方に立てば、来期は今期よりも業績変化率が高くなる可能性があります。

 このような見方から、楽天証券ではシノプシスの2021年10月期を売上高42.00億ドル(同14.0%増)、営業利益7.60億ドル(同22.6%増)、2022年10月期を売上高49.00億ドル(同16.7%増)、営業利益10.00億ドル(同31.6%増)と予想します(前回予想からは下方修正したが、これは前回予想が強気すぎたため)。四半期ベースでは変動があると思われますが、通期ベースでは順調な業績拡大が予想されます。

3.シノプシスの目標株価を前回の310ドルから400ドルに引き上げる

 今後6~12カ月間のシノプシスの目標株価を、前回の310ドルから400ドルに引き上げます。半導体産業におけるEDAの重要性、世界にEDAメーカーがシノプシス、ケイデンス・デザイン・システムズ、メンター・グラフィックス(未上場、シーメンス傘下)の3社しかなく(いずれもアメリカ企業)、そのトップがシノプシスである希少性を考慮し、今の高PER(60~70倍)が来期も続くとして、楽天証券の2022年10月期予想EPS 6.05ドルに当てはめました。

 引き続き中長期で投資妙味を感じます。

本レポートに掲載した銘柄:KLAコーポレーション(KLAC、NASDAQ)シノプシス(SNPS、NASDAQ)