恒大集団のデフォルトリスクで世界株安

 日本が祝日だった20日(月)、中国の不動産デベロッパー大手・恒大集団のデフォルトリスク(債務不履行リスク)が懸念され、世界中の株が下落しました。

 中国当局が不動産企業への融資上限を設定してからは資金繰り悪化が懸念されていたのですが、恒大集団の負債総額は約33兆円と中国GDP(国内総生産)の約2%と巨額であることや、今週23日以降、過去に発行した社債の利払い日が相次いで到来するため、資金繰りに行き詰まるのではないかとの懸念が一気に高まりました。

 日本市場と中国市場が休場の中、香港株式市場では、恒大集団の経営不安が他の銀行や保険会社、不動産会社にもマイナスの影響を及ぼす可能性が懸念され、ハンセン指数は一時3%超の下落となりました。

 この株安と懸念は欧米にも波及し、NYダウは一時1,000ドル近く下げました。

 また、シンガポール取引所の鉄鉱石先物価格は6%超下がりました。資産の下落は株だけでなく、他の資産にも波及し、原油が2%超下落し、銅は3%下落しました。金は安全資産として買われ0.7%上昇しましたが、ビットコインは8%超下落しました。米10年債利回りは、先週末の1.36%台から1.31%台に低下しました。

 これらの影響を受けて、ドル/円はアジア時間の1ドル=110円手前から、NY時間には1ドル=109円台前半まで下落し、資源の下落によって豪ドルなども下げ幅を広げました。

 しかし、ドル/円は、109円台はキープしており、今のところ大きな動きはみせていない状況です。ただ、事態の進展によってはもう一段の円高も予想されるため、下方リスクは引き続き警戒する必要がありそうです。

 ジョージ・ソロス氏は「中国版リーマンショック」と警鐘を鳴らしていますが、当時と比べて金融システムは強固となっており、欧米の金融に与える影響は限定的との見方が多いようです。

 しかし、前述したように、恒大集団の負債総額は約33兆円と中国GDPの約2%と巨額であるため、もし、経営が悪化すると中国の金融市場や不動産市場に混乱が広がり、世界に波及する懸念が意識され、投資家心理は冷えたままの状態が続きそうです。

 恒大集団が発行した社債の利払い期日は9月23日(木)、29日(水)と続きます。30日以内に履行できない場合はデフォルトになるため、23日、29日は当然注目されますが、その後30日間はやきもきしながら、状況を見守ることになりそうです。

 また、負債総額33兆円の内、有利子負債は約9.7兆円とのことですが、その42%が1年以内に償還期限を迎えるとのことです。短期間で事態が収束すればよいのですが、23日、29日の利払いを無事に終えても、このような状態は今後も続くということになりそうです。

習主席は不動産バブル崩壊を期待。しかし、経済基盤まで揺るがす可能性も

 習近平主席は「住宅は住むために建てられるものであり、投機の対象ではない」として不動産バブルの崩壊をもくろんでおり、習主席が掲げる「共同富裕」社会を実現するために一気にかじを切り替えました。

 その実現のために市場にショックを与えるだけならいいのですが、バブル崩壊の仕方によっては中国の経済・社会基盤を壊してしまうことになりかねません。

 もちろん、そうなれば世界経済は大きな影響を受けることになります。権力基盤の強化を目指す習主席が中国の経済・社会を壊すようなやり方をするとは思えませんが、中国当局の出方が注目されます。

 先日、ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)が当局の話としてテーパリングのスケジュールを報じました。

 そのスケジュールとは、「9月21~22日開催のFOMC(米連邦公開市場委員会)でテーパリングの合意形成、11月2~3日開催のFOMCで着手、2022年半ばで終了」との見方ですが、この見方がマーケットのコンセンサスとして浮上してきています。

 しかし、この「中国版リーマンショック」になるかもしれない事態を見極めるまでは、このスケジュール感を先延ばし、あるいはスケジュールには何も触れない可能性もあります。

 ただ、今回のFOMCで公表される金利見通しは、2023年、2024年だと中国リスクの影響を受けにくいと判断し、2023年の利上げ回数が増えたり、2024年の利上げなどタカ派になったりするシナリオも想定されるため、注意する必要があります。

 2024年の金利見通しは今回初めての見通しとなります。

 今週の23日、恒大集団は社債の利払いを迎えますが、23日の早朝(午前3時)はFOMCの結果が発表されます。しかも日本は祝日であるため、警戒すべき一日となりそうです。

 そういえば、36年前の1985年9月22日のプラザ合意は、翌日が日本は祝日(秋分の日)だったことを思い出しました。合意後初めてオープンする東京市場は祝日でしたが、アジア市場や欧米市場で為替は大きく動き始め、歴史の1ページが開かれました。