※モトリーフール米国本社、2021年8月30日投稿記事より

 多くの銘柄で株価収益率(PER)が上昇し、株価指数が最高値付近で推移する中、市場暴落への懸念が高まっています。

 2000年のハイテクバブル崩壊や2007~2009年の金融危機の際は、株価が元の水準に戻るのに数年を要しました。

 一方で、市場の暴落を尻目に上昇を続ける銘柄もあります。

 以下に紹介する3銘柄は、価格に敏感な消費者に訴求する小売企業という共通点があり、市場暴落時に強さを発揮する可能性があります。

アマゾン・ドット・コム

 市場暴落時の底堅さという点で、アマゾン(NASDAQ:AMZN)に対抗できる銘柄はほとんどないでしょう。

 幅広い商品を取り扱う同社を通じて、消費者は生活必需品を安価な価格で簡単に買うことができます。

 その上、同社が当初から参入したクラウドコンピューティング業界も急成長を遂げており、グランド・ビュー・リサーチの予測によると、業界の規模は2028年にかけて年率19%の成長が見込まれます。

 2020年の市場規模は2,750億ドルと推定され、アマゾンが提供するクラウドサービスのアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)は32%の市場シェアを確保しているとみられます。

 2021年上半期の売上高は前年同期比35%増の2,220億ドル弱、純利益は同104%増の159億ドルとなり、費用の伸びを低く抑えられたことと投資利益の増加が利益を押し上げました。

 AWS部門は売上高では13%を占めるにすぎませんが、全社利益の大半を生み出しています。

 同社は第3四半期の売上高について、消費者が実店舗での買い物に戻ると予想されることから前年同期比10~16%増の伸びにとどまると見込んでいます。

 PERは約58倍と、過去10年以上で最も低い水準にあります(執筆時点)。

 景気に左右されにくい事業内容を考えると、足元の株価は長い成長ストーリーの中で小休止しているだけかもしれません。

ビージェイズ・ホールセール・クラブ

 倉庫型スーパーを運営するビージェイズ(NYSE:BJ)は、パンデミックの間に客足が増加したおかげで、債務を減らし、事業への投資を増やしています。

 倉庫型スーパーでありながら、コストコや、ウォルマート傘下のサムズ・クラブといった競合と比べると少量で販売しているうえ、品ぞろえを重視し、定期的に商品の入れ替えを行うことで買い物客を引き付けています。

 コロナ禍の収束に伴って成長は鈍化しており、2021年度上半期(2-7月)の売上高は前年同期比4%増の80億ドル、純利益は同5%減の1億9,300万ドルとなり、売上原価の5%増が利益の重石となりました。

 同期間のフリーキャッシュフローは前年同期の6億5,500万ドルから4億3,100万ドルに減少しましたが、2019年同期の1億2,700万ドルと比べると大幅に改善しています。

 このおかげで、2年前に17億ドルを上回っていた純負債を7億500万ドルまで減らしています。

 さらに、店舗拡張への投資を増やしているため、将来的に収益の増加が期待されます。

 業績の回復を受けて株価は過去1年間に22%上昇していますが、PERは19倍弱と、コストコやウォルマートの42倍よりはるかに割安です(執筆時点)。

 足元のバリュエーションと景気低迷時の好調な売上高を考えると、市場が暴落した際には小売業界の中で勝ち組になり得ると思われます。

ダラー・ツリー

 ディスカウントストアチェーンを展開するダラー・ツリー(NASDAQ:DLTR)は近年、景気や競合とは別の課題に直面しています。

 2015年に買収したファミリー・ダラーとの統合が、経営方針の違いなどから難航しています。

 しかし、ファミリー・ダラーの業績は買収前から低迷していましたが、ファミリー・ダラー店舗の改装や閉店、ダラー・ツリー店舗への転換などを進めた結果、業績は好転し始めています。

 最近の課題はインフレやサプライチェーンをめぐる問題で、米国や中国の港湾の混雑や、新型コロナウイルスに伴う人手不足により、物流に遅れが生じています。

 こうした課題にもかかわらず、2021年度上半期(2-7月)の売上高は前年同期比2%増の128億ドル、純利益は同29%増の6億5,700万ドルとなりました。

 経費の2%削減や、長期借入金の返済による金利費用の12%減が増益に寄与しました。

 ところが、サプライチェーンやインフレをめぐる懸念から、通期の売上高ガイダンスを262億~264億ドルとしたことが嫌気されて株価は12%下落し、年初来では9%安となっています(執筆時点)。

 株価の下落でPERは15倍と、2019年初め以来の低水準となっており、ライバルのダラー・ゼネラルの21倍と比べても割安です。

 その上、マイケル・ウィティンスキーCEO(最高経営責任者)は第2四半期決算発表の中で、2023年には新たな輸送船が就航し、サプライチェーンをめぐる状況は改善するとの見通しを示しました。

 株式市場が暴落したとしても、同社の低価格商品は消費者の心を捉え、店舗の客足が遠のくことはなさそうです。

転載元:モトリーフール

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