今週の予想
新政権を巡る自民党の動向が焦点:目先の上値メドを探る展開
先週は予想外の出来事がありました。
菅義偉首相が自民党総裁選出馬への見送りを表明し、市場はこれを受け、新政権への期待から、日経平均株価は一気に6月以来の2万9,000円台を回復。
TOPIX(東証株価指数)は2,015ポイントと約30年ぶりに高値を更新しました。さらにこの動きを受けて、シカゴの日経先物は+435円の2万9,595円まで上昇しました。
今週は、この思いがけない株高がもたらした株価指数の水準を、日本市場でキープできるかどうかがポイントとなります。
当面は、短期急騰の反動も想定されますが、投資尺度の面で先進国に比べて出遅れ感が指摘されていた日本株の水準訂正が一気に進んだと見ることができます。
チャートを見ると、先週の急騰によって日足、週足で主要な移動平均線を上抜いているほか、一目均衡表も日足、週足ともに「雲」を突破し、柴田罫線(チャート)でも下降トレンドを上に抜いています。
予想外の出来高であれ、テクニカル的な強気転換の意味は大きく、調整があっても下値には買いが入りやすいといえます。
週足チャートでは、13週移動平均線(2万8,117円)と26週移動平均線(2万8,661円)を一気に突破しており、何もなければ2万8,700円を抜けると、相場の基調が上昇へ転換するところでした。
しかし、菅首相の退陣表明がショック高となったことで、ここも一気に抜け3万円の大台が視野に入ったといえます。
今週は、菅首相の退陣表明を受け、自民党における後任の総裁選出など新政権を巡る動向が焦点となり、候補者が打ち出す経済対策や新型コロナ対策に注目が集まることになります。
米国では、8月米雇用統計が予想を大きく下回ったことで、金融緩和策の対応が日本の株価に影響を与える可能性があります。
今週の指標:日経平均株価
予想外の出来高からの急騰になったとはいえ、日経平均がテクニカル面で強気転換になった意味は大きいといえます。
日足、週足で主要な移動平均線を上抜いて、柴田罫線でも2月16日の3万714円の高値からの下降トレンドを2万8,500円水準で上に抜け出ています。
また、一目均衡表も日足、週足の「雲」を突破しました。
今週の日経平均は、5月10日の2万9,685円を上に抜ければ、3万円の大台の期待も持てます。
先週の動き
先週の予測では、27日(金)のFRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長の講演内容がプラスとなれば米国株式は上昇し、日経平均も連動することになるとしました。
結果、先週の米国株式は堅調な動きとなりました。さらに31日(火)は、前日比+300円の2万8,089円と月末最終日としては、約1年ぶりの上昇で引け、8月末で相場が上昇への転換点となりました。
8月20日(金)に2万6,954円と年初来安値を更新し、チャートは下向きの流れの型となったことで、先物のショート(空売り)が積み重なっていたことで、踏み上げ相場となりました。
5日連続の上昇となり、特に週末の3日(金)は、菅首相の退陣意向を受けて+584円の2万9,128円で引けました。目先の上値は2万9,331円となります。
今週の指標:NYダウ平均株価
先週の予測では、前週末にパウエルFRB議長が講演で、国内経済が回復しているため年内の資産購入縮小を開始する可能性を表明しました。
ただし、早期利上げは行わないと強調したことで、安心感が広がり長期金利は低下しました。これを受けて今週も株価のサポート要因となることが想定されます。
また、8月の消費者信頼感指数が、6カ月ぶりの低水準に落ち込むなどデルタ変異株による消費への影響が想定以上となっており、また、政府の救済策の一環として実施していた一連の失業者緊急支援措置が失効します。
そのため景気循環株は引き続き伸び悩み、S&P500やナスダックと比較して上値の重い展開となりそうです。最高値圏でのもみ合いの展開が想定されます。
今週の指標:ドル/円
米国内での新型コロナウイルスの感染者増加の報道から、直近発表の主要経済指標は強弱マチマチで、経済の早期正常化を期待したドル買いは一服となっています。
ただ、パウエルFRB議長は早期利上げを急がない方針を示しており、リスク回避のドル売りがさらに広がる可能性は低いとみられています。
米国金利の先高感は、再浮上する可能性があるため、ドル買い・円売りがさらに縮小する可能性は低いと思われます。
先週の動き
先週、月末に絡んだドル需要でドル/円は、一時110.42円まで買われましたが、3日発表の8月米雇用統計で非農業部門雇用者数は市場予想を大幅に下回ったことで、量的緩和の早期縮小は後退。
ドル/円は売られて109.59円まで下落しました。その後、ドル売りはやや一服し、1ドル=109.72円で引けました。
先週の結果
先週の日経平均は12カ月ぶりの月末高をきっかけに、買い戻し中心に5日連続の上昇
先週の予測では、米国株が堅調であれば、2万7,500~2万8,200円のレンジでのもみ合いを想定しました。
しかし、8月31日(火)に2万8,158円まで上昇し、出来高、売買代金ともにふくらみ、前日比+300円の2万8,089円と月末最終日としては、2020年9月以来の上昇で引けました。
前月の7月までは、11カ月連続の月末安という状況にありましたが、8月末で当面の相場の転換点となりました。
市場の見方は、8月20日(金)に2万6,954円と年初来安値を更新したことで、チャート上は下への流れが想定され、外資系証券などからのショート(空売り)が積み重なっていました。
そのため、外資系が先物に強烈な買いを入れたことで、ショートポジション(空売り)の踏み上げが続き、先週は丸1週間上昇が続きました。
踏み上げ中心の上昇ですが、これに米国株式の堅調な動き(S&P500種株価指数とナスダック総合株価指数は連日の最高値更新)や東京における新型コロナウイルスの感染者減少も相場を引っ張る要因となっているかもしれません。
1週間のチャートの動きは、8月30日(月)の+148円の2万7,789円、31日(火)の+300円の2万8,089円、9月1日(水)の+361円の2万8,451円と、火曜と水曜で大きく踏み上げられ、その後も2日(木)の+92円の2万8,543円とチャートとしては、2万8,500円水準で一服してもおかしくないところでした。
ところが、週末の3日(金)は買い気が根強く、先物買いを支えに一段高の動きとなりました。
この背景は後場になってハッキリしてきました。前日までは首相再選に積極的だった菅首相が、朝になって自民党総裁選に立候補しないという話が伝わり、さらに午後には総理大臣辞任という話が伝わりました。
これを受けて政局の不安解消の期待から上げ幅を拡大し、一時+606円の2万9,149円まで上昇し、+584円の2万9,128円と2万9,000円台を回復して引けました。
週末の日本市場の引け後の米国市場では、注目の8月米雇用統計で非農業部門雇用者数は予想の+75.0万人が+23.5万人と大幅に下回りました。
同時に賃金が予想以上に上昇したことで、インフレ懸念も再燃し、NYダウ平均株価は一時▲174ドルまで売られ、引け値は▲74ドルの3万5,369ドルとなりました。
一方、ハイテク株への買いは根強く、連日の最高値更新となっています。
シカゴの日経先物は日本の顔が交代する期待で、+435円の2万9,595円となりました。
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