「いつでも」「いくらでも」買える投資信託は資産形成の強い味方
投資信託の魅力の一つは、需要量と供給量に関係なく、原則として好きなタイミングで購入も解約もできるという点です。
積み立てと相性のよい金融商品として、投資信託が取り上げられるのも、やはり、あらかじめ指定した日に、指定した金額分だけを購入できるからです。
しかし、その投資信託も買いたいときに買えなかったり、まれに「売り切れ」状態になったりすることがあるということをご存じでしょうか。
決して頻繁に起きるわけではありませんが、長期にわたって投資信託と付き合っていく上では、今後、遭遇する可能性もありますので、知識の一つとしてぜひ覚えていただきたいと思います。
投資信託の目論見書の「お申し込みメモ」ページには、購入前に確認すべき重要事項が項目別に記載されています。
この中の「購入・換金申込受付の中止及び取消し」という項目には、どの投資信託にも、以下のような記載があります。
ここの大きなポイントは、取引所が停止したり、やむを得ない事情に見舞われたりした場合に、「運用会社の判断で」購入や換金(解約)の受付を停止できるという点です。
例えば、投資対象地域において非常事態(台風を含む自然災害、金融危機、クーデターをはじめとした政治体制の変更など)が発生すると、取引所が停止されることがありますが、こうした事態が起きた場合でも、投資信託の購入・換金の受付を停止するかどうかの最終的な判断は、運用会社に委ねられています。
では、この「その他やむを得ない事情」にはどのようなものが含まれるのでしょうか。
投資信託の使い勝手のよさが人気!でも売り切れることも?
運用会社が投資信託の新規の購入受け付けを停止する「やむを得ない事情」の典型例は、「資金流入の急増」です。
つまり、人気が出て売れすぎてしまった結果、残高が増え、適切な資産規模での運用が維持できなくなる恐れがあるときに販売を停止します。
実は、直近も「企業価値成長小型株ファンド(愛称:眼力)」を運用するアセットマネジメントOneが、9月1日を最終日として、同ファンドの買付申し込みの受け付けを一時停止する旨、公表しました(ただし、既に設定済みの積み立てについては、これまで通り継続できます)。
当ファンドに限らず、一般的に時価総額が小さく、流動性の低い中小型株式などを投資対象とする投資信託は、投資信託の規模の上限である「信託金限度額」が小さく設定されています。
この信託金限度額は、投資信託が主に投資する投資対象や運用手法などを考慮し、投資信託ごとに約款で定められています。大きいものだと1兆円単位、小さいものだと百億円程度に設定されており、ファンドによって開きがあります。
運用会社はファンドの純資産残高が信託金限度額に近づくと、販売を一時的に停止したり、反対に、限度額を引き上げたりという措置を取ります。
限度額を大きくしても運用に支障がないと運用会社が判断した場合は、数兆円単位まで引き上げることもあります。
例えば、2021年1月には、アセットマネジメントOneが「投資のソムリエ」の信託金限度額を5,000億円から2兆円に、同年3月には、アライアンス・バーンスタインが「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Dコース毎月決算型(為替ヘッジなし)予想分配金提示型」の信託金限度額を1兆円から1兆5,000億円に引き上げています。
積立投資している投資信託が、売り切れになったら?
では、自分が保有する投資信託の残高が急増して「売り切れ」状態となった場合、どうしたらよいのでしょうか。
適正な運用資産規模を維持するための販売停止であれば、大きな心配は必要ありません。
というのも、販売停止措置が取られても、原則として換金(解約)は通常通りに行えるからです。ご自身のお金が「凍結」されるようなことはないので、その点は安心してください。
多くの場合、解約によって残高が自然に減少し、適正な運用資産規模に戻ると、販売が再開されます。
一方で、積み立ての取り扱いについては、ファンドや運用会社によって対応が分かれます。
先述の「企業価値成長小型株ファンド」を含め、多くの場合、既に設定している積み立てについてはそのまま継続(積立購入)できますが、ごくまれに積み立てによる買い付けも停止されることがあります。
このようなことがあるため、投資信託を積立設定している場合でも、運用会社が公表する投資家向けのお知らせ(レター)の内容を必ず確認するようにしましょう。
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