コロナ・ショック後の株式相場はK字回復

 コロナ禍での開催に賛否があった2020年東京五輪・パラ五輪も9月5日に終了します。その後はようやく、政府・自治体もコロナ対策に全集中であたってくれると期待しています。

 2020年2月ごろからジワジワと広がった新型コロナウイルスの感染ですが、未知のウイルスとの闘いがこんなに大変で、こんなに長引き、こんなに日常生活、生活様式を一変してしまったのかと改めて驚きます。

 私も株式投資を始めて20年以上となり、2001年からだけでも米国の同時多発テロ、リーマン・ショック、バブル崩壊後の最安値、アベノミクス相場、チャイナ・ショック、トランプ相場などなど、山あり谷あり。うまく波に乗れた時もありましたが、沈みそうになった時も。

 このように何度か「○○ショック」を経験しましたが、今回のコロナ禍での株式相場が「K字回復」しているのは興味深い点です。つまり、2020年3月のコロナ・ショックの底から相場全体が盛り返したものの、その後も上昇を続けている銘柄と下落基調に沈んだ銘柄の2極化が著しいように思うのです。

 そこで、3月に次いで9月が多い優待銘柄の傾向をレポートし、今後の優待投資にあたって気をつけなければならないポイントをお伝えしたいと思います。

優待銘柄の動きは今どうなっている?

 まず、新型コロナウイルス感染防止の観点から直撃を受けているのが、「外食・レジャー・旅行」銘柄です。

 これらは「K字」の下向きに入っている優待銘柄も多く、優待メインで投資している方の思いは「一刻も早く新型コロナが終息してほしい」、そして、投資先の企業がコロナ以前のように売り上げを上げ、利益が回復することを待っている状態だと思います。もちろん私も同じ思いです。

 外食銘柄を中心に、2020年4月に出された全国的な緊急事態宣言を受け、優待券の期限延長が相次ぎましたが、デルタ株が拡大している現在では、優待券も延長に次ぐ延長で、どれがどう延長になっているのか、使う前に会社のウェブサイトで確認する状況です。

 そんな中で私が感じたことは、業績は厳しいものの優待を楽しみにしている株主や、優待人気で買い支えられている株価を考え、期限を延長しても「使ってほしい、店に来てほしい」、できる限り優待は廃止しないという、外食優待企業側の強い気持ちです。

 また、店舗での飲食が避けられている中で、企業側はテイクアウトに力を入れ、メニュー開発を進めたり、受け取りやすい店舗に変えるなど、「店内でも・テイクアウトでも」優待が使用できるよう、選択肢が広がったのはよかったと思います。さらに、温かいものや崩れやすいものも自宅までそのまま持ち帰れるような、テイクアウト容器の進化もうれしい驚きでした。

これからの優待はどう選ぶべき?

 ただ、現在の新型コロナ感染の拡大を考えると、外出を控えたい、他人との接触は最低限にしたいと思うのは当然のことです。ならば品物が自宅に届く優待銘柄、特に優待廃止のリスクが少ない自社製品の詰め合わせなどはお勧めと言えそうです。

 重たい飲料やお米などが玄関先まで届くのはありがたいですし、自宅での調理機会が増えた巣ごもり期間は、優待品のレトルト食品や簡単に調理ができる調味料などに大いに助けられました。私も巣ごもり期間中、優待在庫の棚卸しをして、自宅ご飯の充実を図りました。

はじめて優待実施企業数が前年比でダウン

 1年半近くになるコロナ禍での優待投資ですが、全体としては大きな変化はないものの、局地的な事件・事故はあったように思います。

 2020年1~12月の優待新設企業数は34社に対し、廃止が50社。株主優待の登場以来はじめて、優待実施企業数が前年比でダウンしました。

 そのうち優待廃止をした企業を見ると、業績悪化やTOB(株式公開買い付け)、MBO(経営陣参加の買収)での上場廃止などが多く、優待内容もクオカードや自社サービスの提供などが多かったように思います。

 なかでも私がショックを受けたのはトラスコ中山の廃止。いまだにちょっと引きずっています。

 2021年もこの流れはあまり変わらないようです。2021年8月末現在で優待新設企業は25社、廃止企業は36社と廃止企業の方が多く、コスト見直しから優待廃止は避けられないように思います。残念ながら廃止となった竹本容器(4248)の自社製品や出前館(2484)の自社サービスなどを楽しみにしていた方も多いのではないでしょうか。

2021年9月の優待投資はどうするべき?

 そして、3月に次ぐ優待銘柄が多い9月です。

 現在の新型コロナ感染状況を見ると、外食での優待消費はかなり厳しいように感じます。しかし、9月権利の優待が届くのは約3カ月後の2021年12月から2022年1月ごろ。まだ外食優待の使用は難しいかもしれませんが、ワクチン接種も進み、そろりそろりと以前のような経済活動が再開されて、徐々に利用ができるようになっているのではと期待しています。

 また、銘柄の選別も一段と進み、「優待だけ」よりも「優待も・配当も」への移行、優待の廃止リスクが少ないと思われる銘柄に人気が集まることも考えられます。

 外食銘柄もメインが居酒屋店舗よりも、お酒に頼らない単一メニューのラーメン店や店内換気に優れた焼肉店、優待も出している高配当銘柄、コロナ後を見据えたレジャー・航空系、年2回優待を出していることで下落リスクが比較的少ない銘柄などを中心に、選んでみるのがいいのではないかと思います。

 そして、ご自身が「この優待が好き」「応援したい」と考える会社かどうかというフィルターも大事です。

 優待投資の楽しいところは、投資している株の株価上昇ももちろんですが、優待が届いて、「何に使おうか、どこで使おうか」とワクワクしながら計画することだと思います。そのために、それぞれができるコロナ感染対策をしっかりとして、3カ月後を待ちたいですね。

優待の内容だけではなく、危険な銘柄かどうかを確認

 コロナ禍で資金繰りに苦労していたり、債務超過が続いていても優待を出している会社もあります。『会社四季報』には「継続前提に疑義注記」や「継続前提に重要事象」と個別銘柄の記事中に記載しており、その銘柄が投資対象として「危険がありますよ」と知らせてくれています。

 あえてリスクを取り、大きなリターンを得ようとする投資中・上級者の方以外は、わざわざ危険な銘柄への投資はなるべく避けた方がいいかと思います。2020年は「買ったら上がる」状態にあった相場も、今年はなかなか手ごわいようです。

 9月の優待銘柄選びから3カ月後、優待券を使って、大手を振ってお酒を楽しみ、友人たちと2年ぶりの忘年会や新年会ができるでしょうか。それとも自粛期間が継続されているのでしょうか。

 現在はトンネルの先の光が見えながら、蜃気楼(しんきろう)のように先へ先へと移ってしまっている状態ですが、トンネルを抜けるときは一気に光が降り注ぎます。それを楽しむためにも、9月の優待投資で事前準備を整えたいですね。

 自粛、自粛で押さえつけられた欲望や欲求の塊を優待使用で爆発させたいと、切に思うこの頃です。