持ち家では難しいかもしれませんが、賃貸に住んでいる方であれば一度は考える住居費の節約。沿線や条件を賢く選んで引っ越すことで住居費を下げるマネーハックを、お部屋探しブログ「Rooch」の山中和輝氏に教えていただきました。

▼お話をうかがった人
お部屋探しのコツや知識まとめブログ「Rooch」
山中和輝氏

 営業統括として、営業に出ていた経験を生かし、現在は店舗で営業メンバーの教育や、お客様のスムーズな入居のサポートをメインに担当。

Rooch(ルーチ)について

 チャットでお部屋を紹介する来店不要のネット不動産屋「イエプラ」が運営するブログ。お部屋探し用語や探し方のコツ・街の住みやすさなどを初心者にもわかりやすく解説します。

Money Hack 1 沿線・駅選びで家賃を下げる!

急行が止まる駅と止まらない駅で1万円の差?

 安い物件を探すポイントでまず考えたいのは、「どこに住むか?」ということ。山中氏によると、エリアよりも駅や沿線といった観点で考えると安い物件を見つけやすいそうです。

「同じエリアでも、急行が止まる駅と止まらない駅とでは、数千円から多いときで1万円程度の差が出ることもあります。住みたい街ランキングで上位に来るような駅はたいてい急行が止まりますが、急行の止まらない隣駅などは穴場だといえます」(山中氏)

都内で狙い目の沿線は?

 では、どんな沿線が狙い目なのでしょうか。

「人気沿線はどうしても家賃が高くなる傾向がありますが、ここ最近で狙い目なのは、東京で言えば、渋谷にアクセスできる田園都市線井の頭線、新宿にアクセスできる西武新宿線などは、家賃が落ち着いている印象です。また、仕事や生活の不便がないなら、都心からは少し離れた東武東上線東武スカイツリーライン南武線なども良い選択肢だと思います」(山中氏)

 全国区でも、都心主要駅につながっている長距離沿線や、急行は止まらないけれどさほど不便を感じない駅などを探してみましょう。そして、その駅や沿線の相場をしっかり調べておくと、物件価格として妥当かどうかを判断しやすくなり、希望に近い物件を探す手間が少なくなるといえそうですね。

■家賃を下げるOther Point「埼玉・千葉を狙う!」

「都内で条件に合う物件が見つからない場合、千葉や埼玉といった隣県を探すのも手です。都内を出れば家賃相場は1万円程度安くなることもありますし、直通運転の路線なら通勤などにかかる時間をむしろ短縮できる可能性もあります。地方でも、メイン都市がある県だけでなく、電車やバスで行き来がしやすい隣県も選択肢に入れてみてはどうでしょうか」(山中氏)

Money Hack 2 距離・設備・築年数で家賃を下げる!

駅からの距離は大きな妥協ポイント

 駅や沿線が絞れたら、次は実際の物件選びです。家賃を下げるという前提で考えれば、どこに妥協点を置くかがカギとなります。いくつかの妥協ポイントを山中氏に挙げていただきました。

「一人暮らしでもファミリー層でも、駅からの距離はわかりやすい妥協ポイントです。徒歩5分と徒歩20分では、5,000円以上違うことがあるので、こだわりがないなら、最初から駅近物件を外すことで効率よく探せます」(山中氏)

一人暮らしならユニットバス、ファミリーなら築年数

 また、一人暮らしかファミリー層かでも物件選びのポイントは違ってくるそうです。

「一人暮らしであれば、トイレ・風呂が別になっているタイプではなく、トイレ・風呂が一体になっているユニットバスが妥協ポイントとして有効です。ユニットバスだと、その他の条件が同じでも1万円くらい下がることもありますよ。広さを妥協したくないファミリー層なら、築年数が経ったリフォーム物件を選ぶのも手です。築年数が10年以内と30年以上では2万円以上の差が出ることもありますが、リフォーム済みなら使い勝手は変わらないのでおすすめです」(山中氏)

■家賃を下げるOther Point「リモートワークを生かす!」

「もともとサーフィンや登山などの趣味を生かすために郊外に住む方もいましたが、コロナ禍でリモートワークになったことで、通勤を気にしなくてもよくなった方々から「地方に引っ越したい」というお問い合わせが増えています。出社頻度が落ちるのであれば、通勤時間が長くても負担になりすぎません。鎌倉のような人気エリアは難しいかもしれませんが、妥協できるエリアをうまく選べば、家賃を下げたうえで住居をグレードアップすることも可能です」(山中氏)

Money Hack 3 シェアで家賃を下げる!

ルームシェアは物件が限られている?

 家賃を下げるために、複数人で一軒家や一部屋に住む、ルームシェアやシェアハウスを活用することが有効なのかどうかについても聞いてみました。

「確かに複数人で住むと家賃は抑えられますが、現実的にはやや厳しいのが現状です。まず、通常の賃貸物件でルームシェアをするには、オーナーさんへの申請が必要ですが、同居というのはどうしても騒音などの問題があるので審査が通りにくいのです。

 そもそも都内には友人同居可能な物件はあまり多くありません。もしルームシェアを目指すのであれば、物件が限られているという前提を踏まえて、根気強く物件探しをするほうがいいですね」(山中氏)

シェアハウスのほうが入居のハードルが低い

 山中氏によると、普通の賃貸に複数で住む「ルームシェア」よりも、もともとシェアを前提として入居者を募集している「シェアハウス」のほうが入居のハードルが低く、家賃を下げられる効果が高いそうです。

「シェアハウスは、一人で住むのに比べて家賃が下がるのはもちろん、光熱費やインターネット費が含まれている物件も多いので、固定費の節約になるのが大きなメリットです。

 例えば、上京したばかりでお金が少ない人などは、仮住まいとして一時的にシェアハウスを活用してお金を節約するのは有効な手段ではないでしょうか」(山中氏)

■家賃を下げるOther Point「ルームシェアをするなら東京を離れる」

「傾向として、東京よりも埼玉や千葉などのほうが友人同居可能な物件が多い印象です。都外であっても相互乗り入れや直通運転で交通の便が良くなりましたし、ルームシェアにこだわるなら周辺県を探してみるのも手です」(山中氏)

Money Hack 4 交渉で家賃を下げる!

ポイントは「地元の不動産店」と「時期」

 ほぼ条件通りの物件が見つかったけれど、どうしても少しだけ予算オーバーしてしまうといった場合、家賃を交渉することは可能なのでしょうか。

「交渉自体はどなたでもできると思いますが、注意点やコツはあります。まず、大手の賃貸仲介サービスは価格が一律の場合があるので、地元の不動産店が扱う個人オーナーの物件のほうが、融通が利きやすく相談しやすいと思います。

 また、引く手あまたの引っ越しシーズンは、いわば売り手市場で価格を下げずとも入居者が決まるため、交渉が難しいので、春を避けるのもいいでしょう。この辺りのことに気を付ければ、1,000~2,000円程度の交渉は可能です」(山中氏)

値引きありきで物件を選ばない

 こうした家賃交渉は、オーナーさんの気持ちひとつで決まることも多いので、交渉のTPOはわきまえるべきだと山中氏はいいます。

「人気物件で申し込みが複数あった場合は当然、家賃交渉などできません。最初から交渉ありきで“値引きが当たり前”といった態度では、オーナーさんの心証も悪くしてしまうので、あくまで家賃を払える物件を選んだうえで、いくらかでも下がればラッキーくらいの気持ちで交渉するといいでしょう」(山中氏)

■家賃を下げるOther Point「フリーレントを活用」

「入居期間の前後に無料期間を設けるフリーレント物件が増加傾向で、利用者が増えています。場合によっては1カ月分以上が無料になることもあるのでお得感があります。

 また、引っ越し期間中に、今の家賃と引っ越し先の家賃がかぶる場合が多々ありますが、フリーレントだと家賃の二重払いを回避できるなどのメリットも! シーズンオフを狙って探す方は、フリーレント物件をチェックしてみるのも手です」(山中氏)

 ただ、フリーレントの場合、初期割引を見越して、相場よりも家賃を高めに設定している可能性もあり、2年間住んだら結局普通に借りたほうが安かった、というケースもあり得ます。フリーレントを狙う場合は、同じような条件の物件の相場を把握して、冷静にチェックしてみるとよいでしょう。

Money Hack 5 極端に家賃が安い物件は避けた方がいい!?

 沿線、築年数、駅からの距離など、ここまで紹介してきたポイントから相場を知ることは重要ですが、相場に比べて驚くほど家賃が低い場合、どう考えればいいのでしょうか。

「オーナーさんの好意で低く抑えてある場合もありますが、もし礼金も敷金も家賃も相場よりも大幅に低い場合は、事故物件や環境が悪い物件の可能性があるので避けたほうがいいですね。

 家賃が相場よりも1万円以上安ければ、安くなっているだけの事情がないかどうか、環境を調べるなど、慎重に検討するようにしてください」(山中氏)