投資初心者の皆さんに株式市場で起きている最新ニュースをお届けする「トレンドマーケットスクールTOKYO」。今週8月30日(月)から9月3日(金)の1週間は、先週27日(金)の堅調な米国株の動きを受けて、上昇して始まりそうです。

パウエル講演で早期利上げ懸念が遠のく!株価上昇か!?

 今、世界中の投資家の注目の的になっているのは、米国の金融政策です。米国の中央銀行にあたるFRB(米連邦準備制度理事会)は、コロナ禍で大打撃を受けた国内経済を立て直すべく、2020年3月のコロナ禍による株価急落以来、「量的緩和策」を実施してきました。

 具体的には、政策金利をゼロにするだけでなく、毎月1,200億ドル(約13兆2,000億円)もの国債や住宅ローンの債券を購入することで、市中に大量の「イージーマネー(金利が低く借りやすいお金)」を供給し続けてきました。

 しかし、この量的緩和策はあくまでコロナ禍の非常手段。経済が回復し、落ち込んだ雇用が元通りになれば、終わりを迎えます。「終わりの始まり」がいつになるか、これが今、株式市場最大の関心事になっているのです。

 その行方を占う重要なイベントが先週27日(金)に行われたジャクソンホール会議という経済シンポジウムでのパウエルFRB議長講演でした。

 講演の中で、パウエル議長は毎月1,200億ドルの量的緩和策の縮小(専門用語で「テーパリング」と呼びます)について、「2021年のうちの開始を検討している」と述べたものの、開始時期には明言せず、量的緩和の次に来る「利上げ」はずっと先になるだろうという見通しを示しました。

 これに対する市場の反応は「性急な緩和縮小はないから、買いだ!」というものでした。先週末の27日(金)に米国のS&P500種株価指数が最高値を更新。その流れを受けて、30日(月)の日経平均も上昇でスタートしました。

 金融緩和の大敵は、お金をじゃぶじゃぶ供給することで物価が上昇して人々が生活に困る「インフレ」です。

 しかし、パウエル議長は「物価上昇はあくまで一時的」という見方を変えませんでした。そのため、同じ27日に発表された「個人消費支出の伸びを計算する際に使う物価上昇率(「PCEデフレーター」と呼びます)」の7月の伸びが前年同月比4.2%増と、30年ぶりの上昇率だったにもかかわらず、材料視されることはありませんでした。

 株式市場にとって、お金の蛇口を握るFRB議長の発言はあたかも「神の言葉」のようなもの。その微妙なニュアンスが株式市場に絶大な影響力を持っているのです。

生産・物流停滞で海運、半導体株に注目!新興株の見直し買いも!?

 今週は、8月31日(火)の中国製造業購買担当者景気指数(PMI)や9月1日(水)の米国ISM製造業景況指数など、製造業関連の経済指標の発表が相次ぎます。

 今、世界では日本同様に新型コロナウイルスのデルタ株(インド由来の変異株)まん延による生産活動や物流の停滞が経済回復の足を引っ張っています。米国や中国の経済指標が予想外に落ち込むと、製造業の割合の大きい日本株にも悪影響が出ます。

 では、そんな状況で株価が上がりやすい業種は何でしょうか?

 たとえば、日本国内だけ見ているとコロナ禍もあり「不景気」にしか見えませんが、実は今年に入って海運会社No.1の日本郵船(9101)は物流網ひっ迫による船賃上昇で過去最高益を更新。株価も3.5倍近く上昇しています。

 コロナ禍によるネットやIT需要の高まりもあって、半導体不足も深刻です。先週のパウエル議長のハト派(金融緩和に寛容な態度)な講演内容もあり、今週は、こうした海運株や半導体関連株に注目が集まりそうです。

 米国では先週、会社の規模が小さい小型株の株価を指数化した「ラッセル2000」が大きく上昇しました。日本市場でも、7月以降、売られてきたマザーズ、ジャスダック市場のIT、ネット関連の小型株の見直し買いが続いていますが、今週もその流れが継続しそうです。

 そして、月の初めに世界中が注目する経済指標といえば、9月3日(金)21時30分に発表される米国雇用統計。パウエル議長が金融政策の転換をためらっているのは、米国の雇用状況が「さらなる本格的な前進」に達していないから。

 6月、7月の非農業部門新規雇用者数は90万人を超えるペースで増えていますが、今回の8月分でもその強さが続くかどうかに注目が集まります。

 不安材料としてはアフガニスタン情勢。先週に引き続き、大規模なテロに対する警戒が必要です。

 初心者の方には「難しい」と思えるかもしれませんが、米国など世界を知ることが株式投資上達の秘訣です。「世界経済は今どうなっているか」を楽しみながら見渡せるようになりましょう!