日経平均は毎日何らかの節目を突破して上昇

 先週末9月3日(金)の日経平均は2万9,128円で取引を終え、前週末終値(2万7,641円)からの上げ幅が1,487円となるなど、久々の大幅上昇となりました。週足ベースでも2週連続の上昇です。

 前週の注目イベントだった、米ジャクソンホール会合(カンザスシティ連銀主催の経済シンポジウム)でのパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の講演内容が、テーパリング(量的緩和縮小)の年内開始に言及したものの、その開始時期や利上げについての示唆がなかったことで無難に通過し、米株市場が上昇で反応した流れを受けて、日本株も上昇に転じました。

 さらに、にわかに動き出した国内政治動向によって、政局変化への期待や「選挙期間の株価は高い」というアノマリーに支えられた買い、月末株安を見越した売りポジションの解消、法人企業景気予測調査で企業の景況感が改善傾向となったこと、そして、以前より日本株の出遅れ感を指摘する見方が根強かったことも株高の追い風となりました。

 それに加え、週末の日経225先物取引の終値が大阪取引所で2万9,580円、CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)で2万9,610円と、一段高になっています。

 今週は週末にメジャーSQ(特別清算指数)が控えている中、足元の日本株の上昇が本格的な「見直し買い」モードに入ったのかの見極めが最大の焦点になりそうです。

 それでは、いつものように足元の状況から確認していきます。

■(図1)日経平均(日足)とMACD(2021年9月3日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 あらためて先週の日経平均の値動きを振り返ると、週を通じて前日比でプラスの上昇基調が続きました。

 週初の30日(月)に25日移動平均線を回復した日経平均は、翌31日(火)も大きな陽線による「包み足」の格好で上昇し、節目の2万8,000円台に乗せてきたほか、これまで11カ月続いていた「月末の日経平均は下落」というジンクスも跳ね返してきました。

 続く9月1日(水)も75日と200日の2本の移動平均線を上抜けたほか、2日(木)には2万8,500円を超え、そして、週末3日(金)には、ついに2万9,000円台に乗せてきました。このように、先週の日経平均は毎日何らかの節目を突破してきたことになります。

 とりわけ、週末3日(金)の値動きは、2月16日に日経平均が高値をつけてからの下落基調に対して一石を投じる格好となっています。

日経平均、TOPIXのギャン・アングル:一気に状況が改善

■(図2)日経平均(日足)とギャン・アングル(2021年9月3日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 上の図2は、その日経平均が高値をつけた2月16日を起点としたギャン・アングルです。

 前回のレポートでは、「日本株の戻り基調が続いた場合、4×1ラインあたりが目安になる」と述べましたが、3日(金)のローソク足はその目安を上抜ける格好になっています。

 日経225先物の終値の一段高を踏まえると、さらに上に位置する8×1ライン超えも視野に入ることになり、さらなる上昇が期待できる状況になっています。

 続いて、同じギャン・アングルで見た場合、TOPIX(東証株価指数)はもっと状況が良くなっています。

■(図3)TOPIX指数(日足)とギャン・アングル(2021年9月3日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 TOPIXのギャン・アングルについても、前回のレポートで紹介しましたが、こちらは先週のあたまに8×1ラインを突破して上昇に弾みがつき、3月19日の年初来高値(取引時間中で2,013p)も更新しています。

 日経平均もTOPIXも、最近までの上値の重たさが嘘のように、一気に状況を改善させてきています。

 また、東証が公表している投資部門別売買動向を見ると、日経平均が高値をつけた2月第3週以降の外国人投資家は、8月第4週までのあいだに、累計で約4,033億円の売り越しとなっています。

 規模自体は決して大きくはないものの、先週の値動きから外国人投資家が買いに転じたのであれば、需給的にはしばらく株価が上昇を続ける可能性がありますので、日経平均が3万円や2月の高値(3万714円)超え、そしてさらなる上値トライのシナリオも見えてくることになります。

日経平均の上値の目標

 では、仮にこのまま日経平均が上値をトライする動きとなった場合、上値の目標はいくらぐらいになるのでしょうか?

■(図4)日経平均の移動平均線乖離率(75日)のボリンジャーバンド

出所:MARKETSPEEDⅡのデータを元に筆者作成

 上の図4は75日移動平均線乖離(かいり)率のボリンジャーバンドです。

 ここ最近のレポートでは、ボリンジャーバンドの+2σ(シグマ)から▲2σの範囲内を値動きの目安としてきましたが、先週の値動きで乖離率が+2σを大きく上抜けたため、違った角度から眺めていきたいと思います。

 足元の乖離率(ピンク色の線)は、ここ2週間のあいだに、▲2σから一気に切り上げて+2σを超えてきましたが、図4を過去にさかのぼると、昨年10月末に見せた動きと似ていることが分かります。

 当時は2月の高値へと向かう上昇トレンドの起点となりましたが、今回も同様の展開になるのではと考えることができます。

 そして、この期間の乖離率の動きを見ると、10%を超えたあたりで伸び悩んでいます。もっとも乖離率が大きかったのは、1月19日の11.59%、そして日経平均が高値をつけた2月16日の11.56%です。

 これになぞって、足元の乖離率が11.5%まで伸びると仮定するならば、先週末3日(金)の75日移動平均線が2万8,311円でしたので、計算すると3万1,566円ぐらいまでの上昇が見込めることになります。

 もっとも、このような展開となった場合、75日移動平均線自体も上昇していくことになりますので、実際の上値の目安も切り上がっていくことになります。

 また、先週の株価上昇を受けて、「日経平均は3万4,000円まで上昇する」という見方も出ているようです。

 いわゆる「目標値計算」のN計算値やV計算値の値に基づいたものと思われますが、先ほどの外国人投資家による買い基調の継続や、動き出した国内政治について、変化への期待が具体的な政策へと結びつけられるか、企業業績の伸び継続などの条件がタイミング良くそろえば、あながち無理筋な予想ではないのかもしれません。

今週の要注意ポイント:RSIの動きとリスクオンの見極め

 とはいえ、今週は気をつけておいた方が良いポイントも存在しています。

 まず、ひとつめは、RSI(相対力指数)の動きです。

■(図5)日経平均(日足)とRSIの動き(2021年9月3日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 RSI(Relative Strength Index)とは、「売られ過ぎ」や「買われ過ぎ」に着目したテクニカル指標です。RSIの値は0~100%の範囲内で動き、数値が高いほど買われ過ぎと判断されます。

 先週末3日(金)の日経平均のRSIは95%となっていて、かなり買われ過ぎのところに位置しています。チャートを過去にさかのぼると、90%を超えたあたりでいったん上昇がストップする局面が多いことがわかります。

 そのため、今週は「どこまで上値を伸ばせるか?」よりも、「上昇がストップし、下げたところでしっかり買いが入るか?」の方が重要かもしれません。

 そして、もうひとつが「リスクオン」の見極めです。日経225先物取引が一段高となったことは冒頭でも触れた通りですが、時間帯としては米雇用統計を受けてのマーケットでした。

 その米8月雇用統計は、非農業部門雇用者数が予想を大きく下回り、平均時給が予想以上に増加する結果となりました。

 一方ではテーパリング開始時期の後ずれ、もう一方では賃金上昇によるインフレ圧力がくすぶる内容となっており、実際に他の市場の動きを見ると、米株市場ではNASDAQが上昇したものの、NYダウ平均株価とS&P500が下落となったほか、欧州株も下落しています。

 また、米10年債利回りは上昇し、ゴールド(金)の価格も上昇するなど、米雇用統計を受けたマーケットは、リスクオンに傾いたと判断するにはちょっと微妙な感じです。

 直近の日本株の上昇の大きさは、今週末に控えるSQをめぐる思惑など需給的要因によるところが大きいという印象が強まったりすると、思ったよりも株価が伸びない、もしくは下落に転じてしまう、もしくは週初の株価が高値だったという展開も考えられますので、注意しておく必要がありそうです。