米国企業の第2四半期決算発表シーズンが終了

 第2四半期決算発表シーズンがほぼ終わりました。今回の決算発表シーズンはよい決算を出す企業が多くS&P500採用企業のうち、87%がポジティブ・サプライズを出しました。

 このようによい決算を出した企業は星の数ほどありますが、今回はその中でも次の2つの条件をクリアした銘柄を、5つ選びたいと思います。

(1)比較的最近、IPO(新規株式公開)した銘柄
(2)特によい決算だったと私が感じた銘柄

第2四半期決算特筆の米国銘柄1:パランティア・テクノロジーズ(PLTR)

 パランティア・テクノロジーズ(PLTR)はビッグデータを駆使し、高度な分析や継続的な観察をクライアントに届ける仕事をしています。米国国防省や大企業が顧客です。

 ビッグデータのわかりやすい説明をすれば、エクセル・スプレッドシートのような表計算ソフトに収まり切れない、不ぞろいなデータを指します。一例として砂漠の山岳地帯に隠れているテロリストを写した衛星写真はファイルとしては大きく、重要な情報を含んでいるものの、普通の表計算ソフトで整理することはできません。

 このような扱いにくいビッグデータを瞬時に解析し、状況判断や意思決定に利用しやすくするのが、パランティアです。

 同社の業務の特徴から、人工衛星から送られてくるデータなど普通の企業が扱わない素材を扱うことが多いですし、機密の情報やプロジェクトも多く含まれています。

 その関係で、同社が株主に開示できる情報には限りがあり、その意味で実態が把握しにくい会社として知られてきました。ただ、できる範囲内での情報開示は、だんだん改善してきている印象を受けます。

 同社が積極的に株主とのコミュニケーションを図るようになった一つの理由は、足元の業績がすこぶるいいにもかかわらず、いまだ株価はこれを反映し切れていないことだと考えられます。

 先ごろ発表された第2四半期決算では、EPS(1株当たり利益)は予想3セントに対し4セント、売上高は予想3.61億ドルに対し3.76億ドル、売上高成長率は前年同期比+49.0%でした。

 第3四半期の売上高は予想3.8億ドルに対し新ガイダンス3.85億ドルが提示されました。

 2021年通年の修正フリー・キャッシュフローはこれまでのガイダンス1.5億ドルを3億ドルへ引き上げます。売上高は2025年にかけて年率+30%で成長すると見込んでいます。

第2四半期決算特筆の米国銘柄2:ドクシミティー(DOCS)

「ドクシミティー」はお医者さん同士、あるいはお医者さんと患者さんがつながるための、「リンクトイン」のようなSNS(交流サイト)です。ただし、従来のSNSと大きく違う点があります。

 気軽に従来のSNSを経由して、お医者さんが患者さんを問診してはいけないという規制があります。 これは、お医者さんが患者さんの病気に関する情報など、プライバシーにかかわる個人情報をやりとりする関係で、医療保険携行責任法(HIPAA : The Health Insurance Portability and Accountability Act)という法律が定めるコンプライアンス基準に適合する方法でしか、コミュニケーションを取ることは許されません。

 従来のSNSとは異なり、「ドクシミティー」はHIPAAの基準をクリアしたコミュニケーション・ツールなので、安心してお医者さんが使えるのです。

 また、お医者さんや患者さんは「ドクシミティー」を無料で使うことができます。この利用料は、製薬会社やヘルスケアシステムなどの大企業から取っています。これらの企業がお医者さんに営業攻勢をかける際、ドクシミティーのネットワークを利用すれば営業効率がとてもいい、お医者さんはたくさんの患者さんを病院に紹介し、お薬を処方しているからです。

 このように「おカネを持っている大企業からフィーをむしりとる」ビジネスモデルになっていることで、ドクシミティーのマネタイゼーションは、とてもうまくいっています。

 先に発表された第1四半期(6月期)決算ではEPSは予想8セントに対し11セント、売上高は予想6,362万ドルに対し7,270万ドル、売上高成長率は前年同期比+99.7%でした。

 純利益は2,630万ドル(前年同期は150万ドル)でした。純利益マージンは36%でした。

 修正EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)は3,120万ドル(前年同期は390万ドル)でした。修正EBITDAマージンは43%でした。

 営業キャッシュフローは3,320万ドル(前年同期は880万ドル)でした。

 フリー・キャッシュフローは3,240万ドル(前年同期は760万ドル)でした。

 第2四半期の売上高は予想6,610万ドルに対し新ガイダンス7,300万~7,400万ドルが提示されました。修正EBITDAガイダンスは2,640万~2,740万ドルが示されました。

 2022年度の売上高は予想2.78億ドルに対し新ガイダンス2.97億~3億ドルが示されました。修正EBITDAガイダンスは1.06億~1.09億ドルが提示されました。

第2四半期決算特筆の米国銘柄3:マンデー・ドット・コム(MNDY)

 マンデー・ドット・コム(MNDY)は、「ノーコード・ローコード」のクラウド・プラットフォームを提供している企業です。

 ノーコード・ローコードとは、少ないコード、もしくはコードを書かなくても、積み木を組み合わせるようなカンタンさで、ビジネス・アプリケーションや管理ツールをカスタマイズして開発できることです。このため、ソフトウエア・コードを書く訓練をされていないような社員でも、ビジネス効率を上げることができます。

 そして、CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)、人事、マーケティング、製品開発などのソフトウエアを取りそろえ、オートメーションを多用することで、ユーザーの反復入力の手間を省くことを、特に心掛けています。

 同社はアプリ・マーケットプレイス(自由参加型のネット取引市場)を展開しており、新しいアプリをユーザーが発見しやすくしています。

 最近発表された同社の第2四半期決算ではEPSは予想▲1.00ドルに対し▲26セント、売上高は予想6,211万ドルに対し7,060万ドル、売上高成長率は前年同期比+93.4%でした。

 第3四半期の売上高は予想6,595万ドルに対し新ガイダンス7,400万~7,500万ドルが提示されました。

 2021年の売上高は予想2.61億ドルに対し新ガイダンス2.8億~2.82億ドルが提示されました。

第2四半期決算特筆の米国銘柄4:リーガルズーム(LZ)

 リーガルズーム(LZ)は、個人が会社登記する際、その事務を支援する企業です。

 また、必要に応じて同社のマーケットプレイスを通じて、会社設立に詳しい弁護士を紹介することもしています。同社は1,300人の独立系弁護士のネットワークを持っているので、すぐに紹介することができます。

 米国には実に3,100万社ものスモール・ビジネスが存在しています。最近は、単発の業務を請け負う「ギグワーカー」のような個人でも、会社登記して仕事を受けることが一般化しつつあります。この理由は、訴訟を起こされたとき、個人破産を回避できるからです。2020年だけで、440万社ものスモール・ビジネスが創業されました。

 同社のリーガルズームでは、まずスマホでシンプルな質問に答えると、AI(人工知能)がその人に必要な法務アドバイスや必要な届出書の類いを、もれなくアドバイスします。

 同社はレジスタード・エージェント(登録代理人)の業務代行も行っており、これは個人オーナーにとって、とてもありがたいサービスであり、喜んで年間フィーを払っていると思います。

 最近発表された第2四半期決算では、EPSは予想2セントに対し3セント、売上高は予想1.4億ドルに対し1.5億ドル、売上高成長率は前年同期比+35.5%でした。

 粗利益は1.01億ドルでした。グロスマージンは67%でした。

 修正EBITDAは2,200万ドル(前年同期は2,000万ドル)でした。修正EBITDAマージンは15%でした。前年同期は18%でした。

 今期は12.3万社の創業を手助けしました。これは前年同期比+34%でした。

 トランザクション売上高は前年同期比+45%の7,300万ドル(前年同期は5,000万ドル)でした。

 トランザクション・ユニット数は26万でした。これは前年同期比+12%でした。AOV(平均注文額)は282ドル(前年同期は217ドル)でした。

 サブスクリプション売上高は前年同期比+29%の6,900万ドル(前年同期は5,400万ドル)でした。

 サブスクリプション・ユニット数は121.5万ユニットでした。これは前年同期比+25%でした。

 第3四半期の売上高は予想1.45億ドルに対し新ガイダンス1.43億~1.47億ドルが提示されました。

 2021年の売上高は予想5.64億ドルに対し新ガイダンス5.7億~5.78億ドルが提示されました。

第2四半期決算特筆の米国銘柄5:グッド・アール・エックス(GDRX)

 グッド・アール・エックス(GDRX)は、処方薬価格比較ショッピング・アプリを展開しています。

 病気になった患者さんがお医者さんのもとに行き、処方箋を書いてもらって処方薬を買うとき、「自分の近所の、どの薬局に行くと同じ薬が一番安価に買えるか?」をスマホで調べる際、アプリ「グッドアールエックス」が大活躍します。

 米国では同じお薬でも薬局やディスカウント・クーポンの有無、複数のジェネリック薬の存在などの理由で、お店ごとに価格がバラバラです。

 特に割引クーポンを使った場合、値段がどれだけ安くなる? ということに関し、価格透明性がありませんでした。割引クーポンとはPBM(ファーマシー・ベネフィット・マネージャー:薬剤給付管理)グループでまとめ買いすると、安くなるという仕組みを利用し、特定のお薬をプロモーションする際に援用する手法です。グループでまとめ買いすることにより、メーカーからディスカウントを引き出す手法は昔から存在しました。しかし、一般の消費者には「見える化」されていなかったのです。だから割引クーポンを利用し、お薬を安く買うチャンスをみすみす逃してきたというわけです。

 グッドアールエックスはリアルタイムで更新される無数の割引クーポンのデータベースを持っており、それをスマホのマップ情報と組み合わせることで、消費者を一番安い薬局へと誘導、一番お得なクーポンを使わせてくれるのです。このようにして消費者を連れてきたことに対し、同社はPBMから報酬をもらいます。

 最近発表された第2四半期決算では、EPSは予想1セントに対し8セント、売上高は予想1.75億ドルに対し1.77億ドル、売上高成長率は前年同期比+43.2%でした。

 とくに、ユーザーのアプリ利用が活発化している点が印象に残りました。

 純利益は3,110万ドルでした。前年同期は2,730万ドルでした。

 なお、この純利益は3,730万ドルの税還付、ならびに▲4,070万ドルのストックオプション費用を含んでいます。このストックオプション費用のうち▲2,400万ドルは、共同CEO(最高経営責任者)への今回限りの給付です。

 プリスクリプション関連売上高は1.45億ドルでした。前年同期は1.1億ドルでした。

 サブスクリプション売上高は1,430万ドルでした。前年同期は640万ドルでした。

 修正純利益は3,510万ドル(前年同期は3,230万ドル)でした。

 修正EBITDAは5,460万ドル(前年同期は4,940万ドル)でした。

 修正EBITDAマージンは20.9%(前年同期は40.0%)でした。

 営業キャッシュフローは3,490万ドル(前年同期は3,820万ドル)でした。

 月次アクティブ・カスタマー数は前年同期比+36%の600.2万人でした。前年同期は442万人でした。

 サブスクリプション・プラン加入者は前年同期比+86%の105.1万人でした。前年同期は56.4万人でした。

 第3四半期の売上高は予想1.95億ドルに対し新ガイダンス1.93億~1.97億ドルが提示されました。