今週8月23日(月)から27日(金)の株式市場を展望する「トレンドマーケットスクールTOKYO」。先週の日本株はさえない結果となりましたが、8月24日(火)にパラリンピックがスタートする今週も難しい1週間になりそうです。ただし希望はあります。

コロナ、テーパリング、中国統制強化の三重苦で内憂外患の日本株

 国内では新型コロナ感染者数の増加が続き、20日(金)からは緊急事態宣言が13都府県、まん延防止等重点地域は16道県に拡大、期限も9月12日まで延長されました。

 海外では、イスラム主義勢力タリバンが首都カブールを制圧したアフガニスタン情勢に加え、米国でテーパリング(量的緩和の縮小)が今年中に開始されるのではという思惑から米国株も下落。日経平均株価は20日(金)、2万7,013円と昨年12月以来の安値で取引を終えました。

 最も大きな下げ要因になったのは、米国のテーパリング懸念です。引き金になったのは、18日(水)に公表された、米金融政策を決めるFOMC(米連邦公開市場委員会)の7月の議事録。その中で、多くの理事がテーパリングの年内開始を支持していることが判明し、米国株は久々に主要3指標すべてが週間で下落して終わりました。

 日本の個別株では、19日(木)に東南アジアでのデルタ株(インド由来の変異株)まん延で9月の世界生産台数の4割減を表明したトヨタ自動車(7203) が週間で10%近く急落。

 これまで好業績で買われてきた自動車関連株、日本郵船(9101) などの海運株、日本製鉄(5401) などの鉄鋼株が総崩れになりました。

 中国で17日(火)にインターネット企業の規制強化案が公表され、アリババグループ(09988)が香港市場で上場来安値まで売られ、同株を大量保有するソフトバンクグループ(9984) も1週間で6%超下落するなど、中国の統制強化も相変わらず日本株の重石になっています。

 一方、コロナワクチンや経口治療薬の年内承認申請に期待がかかる塩野義製薬(4507) や第一三共(4568)など製薬関連株が、下げに強いディフェンシブ株として上昇。7月から下げが続いていた東証マザーズ指数が18日(水)以降、逆行高するなど、明るい兆しも感じられます。

ジャクソンホール会議に要注目。株価急落の好業績株は仕込み時!?

 今週、最も注目されているのは、FRB(米連邦準備制度理事会)の理事たちが多数参加する経済シンポジウム・ジャクソンホール会議です。

 パウエル議長の講演は日本市場終了後の27日(金)に予定されていますが、テーパリングの開始時期や方法について明確な言及があると、9月にも開始されるのではという懸念が広がり、株価の下げ要因になりそうです。

 ここまで米国株が史上最高値更新を続けてこられたのも、FRBが米国債などの債券を毎月1,200億ドル(約12兆円)も買い続けて、市中にお金をじゃぶじゃぶ供給してきたから。お金の蛇口を閉めるテーパリングが始まれば、当然、株価には大きな下げ圧力になります。

 懸案のテーパリング開始時期に影響を与えそうなのが、毎週木曜日、今週は26日に発表される週間の新規失業保険申請件数。先週は申請者数が34.8万件と4週連続で改善しており、今週も改善すると逆にテーパリングの早期開始が懸念される可能性もあります。

 27日(金)にはFRBが物価上昇の基準として最重要視するPCEデフレーター(個人消費支出)も発表されます。

 前回は前年同期比3.6%増でしたが、今回の7月分でも高い伸びが持続すると、その1時間半後にジャクソンホール会議のパウエル議長講演が予定されているため、波乱要因になりそうです。

 他にも米国では、23日(月)の製造業PMI(購買担当者景気指数)や25日(水)の耐久財受注など、製造業関連の経済指標も発表されます。

 トヨタ自動車の減産でもわかるように、コロナ禍や半導体不足で世界中の製造業はサプライチェーンの混乱による生産停滞の影響を受けているので、要注目です。

 国内では、22日(日)の横浜市長選挙で自らが支援した候補が落選した菅政権の末期的な状況が、株価の足を引っ張りそうです。

 とはいえ、株式相場は例年、9月に入ると年末年始に向けた上昇相場に転換することが多いもの。まだまだ予断は許しませんが、マザーズ市場の復調などを見ると、ある意味、大きく下げた好業績株などを安値で仕込むチャンスの時期かもしれません。