日経平均はひとまず反発。200日・75日移動平均線まで戻せるか?
先週末8月27日(金)の日経平均は2万7,641円で取引を終え、前週末終値(2万7,013円)からは628円の上げ幅となり、週足ベースでも反発しました。
注目イベントだった、米国の「ジャクソンホール会合」(カンザスシティ連銀主催の経済シンポジウム)でのパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長講演を受けた米国株市場は上昇の初期反応を見せました。
金融政策のテーパリング(量的緩和の縮小)の年内開始について触れたものの、開始時期やその後の利上げについては言及がなかったが安心感をもたらしたと思われます。
日経225先物取引も、大阪取引所で2万7,860円、CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)で2万7,845円と現物市場の終値よりも高い値段で終えており、今週の国内株市場は上昇してのスタートが見込まれます。出遅れ感も指摘される中、日本株はこのまま「見直し買い」モードへ入ることができるのでしょうか?
まずは、いつものように足元の状況から確認していきます。
■(図1)日経平均(日足)とMACD(2021年8月27日取引終了時点)
あらためて、先週の日経平均の値動きを振り返ると、週を通じて「ひとまず反発」の印象が強まりました。
まずは、週初23日(月)の大幅上昇によって、2万7,000円台割れが意識される状況から一気に2万7,500円をうかがうところまで株価水準が引き上げられ、翌24日(火)には、いわゆる「窓」空けで一段高となり、25日移動平均線を超えてきました。
25日(水)と26日(木)は上値を伸ばせず、25日移動平均線上で推移し、週末27日(金)には先ほどの「窓」を埋めるような格好で下落し、25日移動平均線を下回って週間の取引を終えています。
反発の一方で上値の重たさも気になる動きではありました。
しかし、直近の上値どうしを結んだ線をキープしていることや、小数点以下のレベルではありますが、5日と25日移動平均線が微妙に「ゴールデンクロスしている」こと、下段のMACDがシグナルを上抜けて右肩上がりになっていること、そして、冒頭でも触れたように先物取引が上昇していたことなどを踏まえると、戻りを試す展開がもうしばらく続いてもおかしくはなさそうです。
となると、現在の株価と距離がある200日移動平均線や75日移動平均線あたりまで戻せるか否かが気になるところです。27日(金)時点では、200日が2万8,220円、75日で2万8,283円です。ちょうど8月12日の直近高値(2万8,279円)の株価水準でもあります。
目先の株価の上下の目安を探る
そこで、とりあえず75日移動平均線をベースに、目先の株価の上下の目安を探っていきます。下の図2は75日移動平均線乖離(かいり)率のボリンジャーバンドです。
■(図2)日経平均の移動平均線乖離率(75日)のボリンジャーバンド
先週末時点の75日移動平均線乖離率は▲2.33%です。ボリンジャーバンドの中心線(MA)を回復しつつありますが、図2をさかのぼってみると、このMAで跳ね返されている傾向が続いています。
ただ、バンドの幅が狭くなる「スクイーズ」の状況でもあるため、MAを超えていくと、上方向への動きが大きくなる可能性があります。
ちなみに、27日(金)時点の+2σ(シグマ)から▲2σの値は、それぞれ2万8,548円(+2σ)、2万8,093円(+1σ)、2万7,638円(MA)、2万7,182円(▲1σ)、2万6,727円(▲2σ)です。
日経平均・マザーズ指数・TOPIXの上値の目安
続いて、日本株が見直し買いモードに突入した場合の上値の目安についても見ていきます。
■(図3)日経平均(日足)とギャン・アングル(2021年8月27日取引終了時点)
上の図3は日足の日経平均チャートのギャン・アングルです。足元の日経平均は2×1ラインと3×1ラインのあいだで推移していることが分かります。見直し買いムードが強まるにつれて、株価は4×1ラインや8×1ラインへと向かっていくことになります。
2月に日経平均が今年の高値をつけて以降、上値が切り下がっていますが、いずれも4×1ラインあたりで上昇が止まっていますので、今回も上値のメドとして意識されそうです。
■(図4)マザーズ指数(日足)とギャン・アングル(2021年8月27日取引終了時点)
先週大きく上昇したマザーズ指数についても、ギャン・アングルで眺めて見ると、日経平均と同様に3×1ライン超えのところに位置しています。
間隔の空いている25日移動平均線や75日移動平均線、そして4×1ラインへと向かっていけるかが注目されます。
■(図5)TOPIX指数(日足)とギャン・アングル(2021年8月27日取引終了時点)
日経平均やマザーズ指数よりも状況が良いのがTOPIX(東証株価指数)です。ギャン・アングルではいちばん上の8×1ラインをうかがうところに位置しています。ココを超えてくると上昇に弾みがつきそうなため、今週のTOPIXの動きが日本株のカギを握るかもしれません。
日本株のチャートの形は改善。今週は雇用統計に注目
以上のように、テクニカル分析的には明確な上昇サインはないものの、チャートの形状は改善しつつあります。
ただ、今週は「月またぎ」となり、ここ11カ月続いている月末安の傾向が意識されやすいほか、月初恒例の米雇用統計も控えているため、動きづらい相場地合いとなることが想定されます。
さらに、新型コロナウイルスの状況や、国内政局の不透明感、アフガン情勢などの手控え要因も多くあります。
ジャクソンホール会合を無難に通過したことで、米金融政策への警戒が後退した格好になっていますが、FRBは今回の会合で「テーパリングを開始するよ」という告知に成功した段階と言えます。
今週末の米雇用統計の結果次第では、「テーパリング開始のスケジュールを決めるよ」という流れになると思われるため、次の焦点はテーパリングの開始時期と縮小額のペースへと移ります。
テーパリング終了後に利上げが控えていることを踏まえると、利上げの開始時期も想定することになり、相場が米国の金融政策の動向を織り込むタイミングは再び訪れると考えられます。
また、今週は、米雇用統計のほかに、中国のPMIや米ISM景況感指数などの公表が控えており、米中の景況感の見極めも相場の手掛かりとなる可能性があります。とりわけ、中国景気の影響を受けやすい日本企業は多く、中国PMIが悪化した場合には注意が必要かもしれません。
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