米国の株式市場は世界最大の時価総額を持ち、建国当初から株価は右肩上がりの成長を続けています。その理由の一つとして、常に企業の新陳代謝が起こり、時代ごとに革新的な企業を生み出しています。

 米国株式の代表的な株式指数は、鉄道・公共事業以外の工業株30銘柄で構成される「NYダウ平均株価」、NASDAQ(ナスダック)に上場している全銘柄を対象とした「ナスダック総合指数」、NYSE(ニューヨーク証券取引所)とNASDAQに上場している大型株500銘柄を対象とした「S&P500種株価指数」があります。

 これらに採用されている企業は長期間にわたり利益を出し続け、株価も上昇し、配当を増配し続けている銘柄も珍しくはありません。

 そこで2021年9月権利落ちの米国株高配当5銘柄について解説します(株価、配当利回りなどのデータは2021年8月13日現在、為替は1ドル=110円で計算)。

 その前に、日本と米国の高配当銘柄への投資で、特に重要な3つの違いについて、お伝えします。

(1)米国株の配当金は、通常米国で10%、日本で20.315%の2段階、約30%の課税がされます。しかし確定申告で還付を受けることにより、日本株と同じように20.315%の税率と同じになります。

 ただし、NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)口座で購入した場合は、日本での利益・配当金はもともと非課税のため、還付を受けることはできません。この場合は米国で10%の課税のみとなります。

(2)米国株は日本株と異なり、権利落ち日が月末に集中していません。そのため、銘柄ごとに権利落ち日を確認する必要がありますので注意が必要です。

(3)米国株は日本円で買う円貨決済と、米ドルで買う外貨決済を選べます。日本円から外貨に替える為替手数料も積もれば大きな金額になるので、米国株を買い続けるなら売却時にも外貨決済で米ドルにしなければ無駄に手数料を支払うことになります。

米国高配当株1:トリトン・インターナショナル・バミューダ(TRTN)

 世界最大のインターモーダル・コンテナのリース企業です。インターモーダル・コンテナは物品の国際輸送の際に利用される主要輸送手段となっており、同社は世界の主要なコンテナ船会社のすべてにコンテナを供給するリーディングカンパニーです。

 時価総額は36億6,000万ドルで、日本円で約4,030億円となっています。

事業の注目ポイント

 事業の大部分は機器リース事業(Equipment Leasing)で、一部で機器販売事業(Equipment Trading)も行っています。

 機器リース事業ではコンテナや車両の貸出を中心に事業を展開し、機器販売事業ではコンテナの販売を中心に事業を展開しています。

 同社は、日本を含む16カ国にある20の自社オフィスと、44カ国にある約410の他社コンテナデポ施設を通じて世界中の顧客にサービスを提供しています。

出所:トリトン・インターナショナル・バミューダ決算データより筆者作成

競合他社

 競合他社として、同社は米国およびカナダで事業を展開する機器レンタル会社であるユナイテッド・レンタルズ(URI)、複合コンテナ船の購入、所有、管理、リースおよび処分に従事しているテクステイナー・グループ・ホールディングス(TGH)、中古機器や建設用消耗品、工具、小型機器、安全用品などのコントラクター用品の販売や機器の再レンタルを行うハーク・ホールディングス(HRI)などがあります。

株式の注目ポイント

 株価は2020年の高値を超えています。

 また、配当は業績が好調なこともあり、2020年末に増配を行っています。

 好調な貿易量の拡大に伴いコンテナ価格およびリース料が高騰していることによって、同社の業績は好調に推移し、それに伴い株価も上昇しています。2021年は、これからさらにコンテナ取扱量の拡大が予想されており、今後の株価上昇が期待されます。

業績動向

 2021年7月27日開示の四半期決算ではEPS(1株当たり利益)・売上高ともに市場予想を上回りました。

 決算発表以降の株価はさらに上昇しており、今後も海運会社がリースに大きく依存している状況が続くことが想定され、それに伴って同社の業績は拡大が予想されています。

 次回は11月11日に四半期決算の開示予定ですが、市場予想を上回る数字を出せるか注目です。

注意点

 現在コンテナの稼働率は99%を超えており、需要に応えるため、さらなるコンテナの納入を予定していますが、一方で何らかの事情で貿易の流れが2020年3月ごろのように停滞した際には、大きく業績に悪影響を及ぼす可能性がある点には注意が必要です。

株価動向、配当利回り

配当:2.28ドル
配当利回り:4.19%
株価:54.36ドル(約6,000円)

 権利落ち日は9月8日です(権利実施は9月23日予定)。

 配当は2.28ドル、配当利回りは4.19%、株価は54.36ドルで約6,000円から購入できます(2021年8月13日時点)。

 2018年以降の最高値は60.90ドル、最安値は21.67ドルです(終値ベース)。

米国高配当株2:カーディナルヘルス(CAH)

 医薬品の販売、医療製品の製造・販売を行うグローバル企業であり、40カ国以上で事業を展開しています。

 米国内の病院の約90%にサービスを提供しており、それ以外にも診療所、研究所、薬局から家庭までさまざまな顧客にサービスを提供しています。

 時価総額は150億ドルで、日本円で約1兆6,500億円となっています。

事業の注目ポイント

 事業の中心は製薬事業(Pharmaceutical)で、続いて医療事業(Medical)となります。

出所:カーディナルヘルス決算データより筆者作成

 製薬事業では特殊医薬品、ジェネリック医薬品、市販薬、核医学、バイオシミラー(バイオ後続品)などを取り扱っており、医療事業では麻酔用品、OEM(相手先ブランドによる生産)製品、感染対策製品など臨床医のニーズに対応して、さまざまな製造を提供しています。

 同社の取り扱う製品は急性期医療から在宅医療まで広い範囲をカバーしています。

競合他社

 競合他社として、医薬品、医療製品、医療サービスを提供するマケッソン(MCK)、米国小売薬局、国際小売薬局、および医薬品卸売の3つのセグメントを通じて事業を展開するウォルグリーン・ブーツ・アライアンス(WBA)などが見受けられます

株式の注目ポイント

 株価は2020年の高値まで回復していません。

 しかし、配当は2021年5月6日に1%の増配を発表しています。株価は8月初旬には新型コロナ発生前の水準を超えていましたが、直近開示の四半期決算でEPSが市場予想に届かなかったことが嫌気され、その後、株価が急落しました。

 下落の後、株価は横ばいで推移していますが、そのぶん、配当利回りは以前に比べ上昇しており、配当を目的として保有するのにはよい水準ではないでしょうか。

業績動向

 2021年8月5日開示の四半期決算では収益は市場予想を上回りましたが、EPSは市場予想を下回りました。

 新型コロナによって、医療従事者などからPPE(個人防護具)製品のニーズが高まり、それに備えて多くの在庫を抱えていました。しかし、同社が想定したほどには市場のニーズが高まらず、在庫準備金を計上することとなり、結果、EPSが市場予想を下回る要因となりました。

 2022年は、増配・自社株買いなどの株主還元と、成長分野におけるM&A(合併・買収)を推進していく方針で、それらが実施されることによって今後の株価回復が期待されます。

 次回は11月11日に四半期決算の開示予定ですが、市場予想を上回る数字を出せるか注目です。

注意点

 取り扱っている製品などから、今後も業績の大きな変動は少なそうですが、今回のPPE製品の在庫準備金の計上などや、物流コストの増加などが業績に与える影響には注意が必要です。

株価動向、配当利回り

配当1.96ドル
配当利回り:3.79%
株価:51.70ドル(約5,700円)

 権利落ち日は9月30日です(権利実施は10月15日)。

 配当は1.96ドル、配当利回りは3.79%、株価は51.70ドルで約5,700円から購入できます(2021年8月13日時点)。

 2018年以降の最高値は75.23ドル、最安値は41.00ドルです(終値ベース)。

米国高配当株3:ビーシーイー(BCE)

 カナダ最大の通信会社です。傘下に、「Bell」「Bell Aliant」「Bell Media」などの複数の子会社を擁し、それらを通じてカナダ全土の消費者、企業、政府機関にサービスを提供しています。

 1880年の創業以来、カナダの重要な通信インフラの整備を推進し続けており、世界トップレベルのブロードバンド・ファイバーおよびワイヤレス技術への投資を行い、業界をリードし続けています。

 時価総額は460億ドルで、日本円で約5兆1,000億円となっています。

事業の注目ポイント

 事業の中心は有線通信事業(Bell Wireline)で、続いて無線通信事業(Bell Wireless)、メディア事業(Bell Media)となります。

出所:ビーシーイー決算データより筆者作成

 有線通信事業ではFTTH(光回線)サービスやIPTV(ネットでの動画配信)サービスなどを提供し、無線通信事業では、LTEアドバンスト(4.5G)サービスなどを 、メディア事業ではカナダ最大のマルチメディアとして、「Bell Fibe TV」のサービスを提供しています。

競合他社

 競合他社として、無線・有線を通じて消費者、企業、政府機関に通信、情報、娯楽の製品とサービスを提供するベライゾン・コミュニケーションズ(VZ)、高速インターネットと高度なWi-Fi(ワイファイ)ソリューション、ケーブルテレビ、電話サービスなど、さまざまな接続およびエンターテインメントサービスを消費者に提供するケーブル・ワン(CABO)などが見受けられます。

株式の注目ポイント 

 株価は2020年の高値を超えています。

 また、配当は四半期ごとに変動していますが、2020年、2019年の水準を超えて推移しています。

 同社は、ブロードバンド市場のシェアを拡大し続けています。

 それ以外でも携帯電話、モバイル接続機器、リテールインターネットおよびIPTVの加入者数が大幅に増加しており、それに伴い業績が好調に推移し、株価もコロナ発生前の水準を超えて推移しています。

業績動向

 2021年8月5日開示の四半期決算では、EPSは市場予想を上回りましたが、収益は市場予想を下回りました。携帯電話の加入者数の増加や、加入者の一人当たり利用額が増加したことで好調な業績につながり、決算発表を受けて株価は上昇しました。

 次回2021年11月4日に開示予定の四半期決算において、市場予想を上回ることができるか注目です。

注意点

 今後も業績は堅調に推移することが予想されていますが、配当は四半期ごとに変動するため、想定より受け取りが少なくなる期があるかもしれず、その点には注意が必要です。

株価動向、配当利回り

配当2.79ドル
配当利回り:5.45%
株価:51.12ドル(約5,600円)

 権利落ち日は9月14日(権利実施は10月15日)です。

 配当は2.79ドル、配当利回りは5.45%、株価は51.12ドルで約5,600円から購入できます(2021年8月13日時点)。

 2018年以降の最高値は51.12ドル、最安値は31.96ドルです(終値ベース)。高値更新中です

米国高配当株4:コメリカ(CMA)

 テキサス州ダラスに本社を置く金融持ち株会社で、傘下にはコメリカ・バンクを擁しています。ビジネスバンク、リテールバンク、ウェルスマネジメントの3つの主要事業を戦略的に展開しており、米国以外にカナダ、メキシコでも事業を展開しています。

 時価総額は100億ドルで、日本円で約1兆1,000億円となっています。

事業の注目ポイント

 事業の中心は商業銀行事業(Commercial Bank)で、続いて個人向け銀行事業(Retail Bank)、ウェルスマネジメント事業(Wealth Management)、金融事業(Finance)、その他事業(Other)となります。

 事業収益の約9割を上げる中心事業の商業銀行事業ではミドルマーケットバンキングにおいて、買収資金の調達やリースなどのサービスを提供し、その他にも企業向けの退職金コンサルティングなど幅広く事業を展開しています。

競合他社

 競合他社として、子会社であるFirst Tennessee Bank National Associationを通じて金融サービスを提供するファースト・ホライズン・コーポレーション(FHN)、消費者金融事業と商業銀行事業を行うシチズンズ・フィナンシャル・グループ(CFG)などが見受けられます。

株式の注目ポイント

 株価は2020年の高値近辺で推移しています。

 また、配当は2020年と同じ水準を維持しています。

 2021年に入ってから自社株買いや、貸倒引当金の減少、預金量の増加、長期金利の上昇などさまざまな要因によって、株価は上昇してきました。

 直近5月の高値と比較すると株価は下落していますが、それでも業績は堅調に推移しています。

 同社は今後もミドルマーケットを中心にほとんどの事業でローンの成長が見込まれると予測しており、それに伴う利息収入の拡大と業績改善、株価回復が期待されます。

業績動向

 2021年7月21日開示の四半期決算ではEPS・収益ともに市場予想を上回りました。

 また、中心事業の商業銀行事業や個人向け銀行事業、ウェルスマネジメント事業で前年同期の水準を超えています。

 今後も、流動性を確保したい中小企業オーナーが、預金がありながらも借り入れを行う流れは継続するとコメリカ側は考えており、ミドルマーケットのローン市場は拡大していくと想定され、それに伴って業績も堅調に推移することが予測されます。

 次回2021年10月20日に開示予定の四半期決算で、市場予想を上回る決算を発表できるか注目です。

注意点

 長期金利低下の影響もあり、5月の高値と比較すると株価は下落しています。

 今後も長期金利の動向によって株価に影響が出ることが想定され、その点は注意が必要です。

株価動向、配当利回り

配当2.72ドル
配当利回り:3.62%
株価:74.95ドル(約8,200円)

 権利落ち日は9月14日(権利実施は10月1日)です。

 配当は2.72ドル、配当利回りは3.62%、株価は74.95ドルで約8,200円から購入できます(2021年8月13日時点)。

 2018年以降の最高値は102.21ドル、最安値は26.05ドルです(終値ベース)。

米国高配当株5:ボナンザ・クリーク・エナジー(BCEI)

 石油・天然ガスを生産する独立系エネルギー企業で、米コロラド州のワッテンバーグ油田を中心に事業を行っています。

 ワッテンバーグ油田は低コストで生産効率が高く、埋蔵量も確定しており、インフラも整っていることから同社の安定資金源となっています。現在、コロラド州のニオブララ層とコーデル層の開発を行っており、その開発資金もワッテンバーグ油田からねん出されています。

 時価総額は11億ドルで、日本円で約1,200億円となっています。

事業の注目ポイント

 事業の中心は原油販売事業(Crude oil sales)で、続いて天然ガス販売事業(Natural gas sales)、天然液化ガス販売事業(Natural gas liquids sales)となります。

出所:ボナンザ・クリーク・エナジー決算データより筆者作成

 同社の事業は、環境との関わりを避けて通ることができませんが、同社はコロラド州の大気排出基準と地下水モニタリング規制をクリアし、カーボンフットプリント削減に取り組んでいます。

競合他社

 競合他社として、米国のロッキー山脈地域で原油、NGL(天然ガス液)、天然ガスの探査と生産を行うホワイティング・ペトロレウム(WLL)、石油・天然ガス資源の探査・開発・取得・生産に従事するキャロン・ペトロリアム(CPE)、米国西部に位置する従来の石油埋蔵量の開発・生産を行うベリーコーポレーション(BRY)などが見受けられますが、ボナンザ・クリーク・エナジー社と違い、直近の当期純損益は赤字となっています。

株式の注目ポイント

 株価は2020年の高値を超えて推移しています。

 また、今まで出してこなかった配当を前四半期より開始しています。

 2021年4月1日、同業の「HighPoint Resources Corporation」との合併を行いました。

 今後はさらに2021年第3四半期までに同業の「Extraction Oil&Gas Inc」と「ボナンザ・クリーク・エナジー」が合併を行い新会社「Civitas Resources Inc」を設立し、さらにその「Civitas」が「Crestone Peak Resources」を買収する予定となっており、急激に規模を拡大させています。

 これらにより、生産性向上、コスト削減、フットプリント削減などが期待されていることも株価上昇の理由のようです。

業績動向

 2021年5月3日開示の四半期決算ではEPS・収益ともに市場予想を上回りました。

 前年同期に比べて、中心事業の「原油販売事業」の収益がわずかに下がりましたが、エネルギー価格上昇もあり、天然ガス販売事業と天然液化ガス販売事業が大きく拡大しており、それに伴って業績が拡大しています。

 今後は合併によるコスト削減がさらに進むと想定されており、コロナ後の景気回復と合わせてエネルギー需要が高まることで、さらなる業績拡大が期待されます。

 次回2021年8月10日に開示予定の四半期決算で、市場予想を上回る決算を発表できるか注目です。

注意点

 環境への対応、エネルギー価格の変動など様々な注意事項はありますが、やはり今後の合併によって、どれだけの合併効果を生み出していけるかということに注意が必要と思われます。

株価動向、配当利回り

配当1.4ドル
配当利回り:3.83%
株価:36.47ドル(約4,000円)

 権利落ち日は9月14日(権利実施は9月30日)です。

 配当は1.4ドル、配当利回りは3.83%、株価は36.47ドルで約4,000円から購入できます(2021年8月13日時点)。

 2018年以降の最高値は50.44ドル、最安値は9.15ドルです(終値ベース)。

【要チェック】
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