日本史上最高のメダルラッシュに沸いた東京五輪も閉幕し、コロナ禍の現実に引き戻されそうな一週間が始まりました。お盆で会社がお休みの方も多いと思いますが、8月10日(火)から13日(金)までの株式市場は「閑散に売りなし」の展開になるでしょうか。

好決算続出。日経平均2万8,000円台定着か、材料出尽くしか?

 先週8月第1週の日本株は、4-6月期決算で過去最高益を更新したトヨタ自動車(7203) 、日本製鉄(5401)など輸出株の好決算を受けて、底堅く推移しました。一方、5日(木)決算で「Nintendo Switch」の販売減少を発表した任天堂(7974)が一時10%安まで売られるなど、業績鈍化で下げる銘柄も一部ありました。

 しかし、工場自動化向けセンサーのキーエンス(6861)日本郵船(9101)を筆頭にした大手海運3社、ダイキン工業(6367)など好決算を発表した企業の中には、株価が急騰する銘柄も目立ちました。

 日経平均株価自体は2万7,500円を底値に横ばいが続きましたが、今週は2万8,000円の大台回復に期待がかかります。ただし、決算発表後の材料出尽くしや、五輪閉幕で菅政権の支持率がさらに低下、といった不安要素にも注意が必要です。

 米国では、6日(金)に発表された7月の雇用統計で非農業部門新規雇用者数が94.3万人増と予想を上回る増加となり、失業率も5.4%に低下。レストラン、ホテル、物流、運輸関連の雇用増で米国の個人消費が復活するという期待感からNYダウが史上最高値を更新しました。

 4-6月期の決算で黒字転換を果たしたボーイング(BA)、景気回復による金利上昇が収益向上につながるゴールドマン・サックス・グループ(GS)JPモルガン・チェース(JPM)といった金融株が指数上昇に貢献しました。

 週明けにかけては米国議会上院で5,500億ドル規模のインフラ法案の可決に向けた議論が進展しました。

 しかし、米国中央銀行にあたるFRB(米連邦準備制度理事会)がテーパリング(量的緩和策の縮小)の開始時期を早めるのではないかという見通しから、金、銀価格が急落。金利が上がって米ドルが強くなると、ドル建てで取引されているコモディティの価格は下落しやすくなるほか、中国でもデルタ株(インド由来の新型コロナウイルス変異株)の感染が拡大していることもあって原油価格も下落。その影響で、9日(月)のNYダウ、S&P500はともに小幅安となりました。

東京五輪が閉幕。お盆前に「閑散に売りなし」の状況?

 冒頭でも述べたように今週は月曜日が振替休日で4営業日しかなく、お盆も控えていることから、取引高が減少することで大きな売りも出ず、相場が落ち着く「閑散に売りなし」の展開になりそうです。

 ただし、10日(火)には、保有するアリババ株など中国IT株下落で何かと注目されるソフトバンクグループ(9984)の決算発表があります。前期は過去最高の4.99兆円もの純利益を叩き出した同社ですが、株価は決算発表のあった5月12日以降、材料出尽くしや中国政府による民間IT企業の締め付けを受けて下落が続いています。

 中国ではITや教育の規制強化に続き、「オンラインゲームはアヘン(麻薬の一種)」といった論調が打ち出され、テンセントなどゲーム関連企業の株価が下落しました。ソフトバンクGの株が決算発表をきっかけに再上昇するのか、中国の統制強化を嫌気してさらに売られるのか、その株価動向が注目されます。

 一方、米国では11日(水)夜に、7月の消費者物価指数(CPI)が発表されます。7月発表の6月分は前年同期比5.3%と非常に高い上昇率でしたが、株価は反応薄でした。

 今回も5.4%という高い上昇が予想されています。その元凶になってきた中古車価格の値上がりは落ち着きを見せているようです。しかし、結果が予想以上に上振れすると、FRBの早期テーパリング開始の懸念や、物価上昇による個人消費の減退が不安視され、史上最高値圏にある米国株が利益確定売りで下落する可能性もあります。

 東京五輪も終了し、8月24日(火)に開会予定の東京パラリンピックまで“お祭り”は小休止。相変わらず増加の一途をたどる新型コロナウイルス感染者の数が再び国民心理に影を落としそうです。

 感染者拡大で日本株の足を引っ張っている内需株、また、7月以降、海外投資家の売りで下落が続く東証マザーズ市場のIT株などを買い戻す動きが出るかどうかに期待したいところです。