FIREするなら移住も考えたほうがいい理由

 FIRE(Financial Independence, Retire Early:経済的に自立して早期退職)を達成して会社に縛られない生活を送れるようになったら、月々の生活費の削減を考えたいものです。

 その中でも、物価が安い地域に移住するのは一つの考え方でしょう。当然、東京など首都圏ではなく、地方に住んだほうが住居費などを安くできます。最近は過疎化が進む地方自治体を中心に移住者をサポートしてくれる制度も充実。FIRE生活に最適な場所はどこか、具体的に検討してみましょう。

住めば都!物価が安い県庁所在地ランキング

 全国47都道府県の県庁所在地別の収入や支出については、総務省が毎月家計調査を行っています。2021年5月調査の2人以上の世帯の1カ月平均の消費支出は28万1,063円でした。県庁所在地別に、消費支出の少ない県を探すと、ベスト10は以下のようになります。

2人以上の世帯の月別平均消費支出額

順位 都道府県名・市町村名 平均消費支出額(円)
1 和歌山県 和歌山市 21万3,696
2 沖縄県 那覇市 22万2,101
3 佐賀県 佐賀市 22万6,244
4 福井県 福井市 22万6,989
5 長崎県 長崎市 22万8,033
6 大阪府 大阪市 23万3,945
7 宮崎県 宮崎市 23万7,027
8 愛媛県 松山市 24万5,813
9 山梨県 甲府市 24万6,252
10 香川県 高松市 24万6,536
出所:総務省「家計調査」(2021年5月調査)より筆者作成

西日本が安い傾向。大都市を選ぶなら大阪市

 調査結果を見ると、近畿圏南部に位置して、気候が温暖な和歌山県和歌山市が最も安い21万3,696円。次いで沖縄県那覇市が22万2,101円、九州北部の佐賀県佐賀市が22万6,244円となります。

 全般的に見ると、日本列島の西側に位置し、気候が温暖な地域のほうが、上位を占める結果になりました。大阪市などを除くと、農業や漁業が盛んで、食材などを安く調達できそうな地域が上位に来ているようです。

 また、上記の大阪市も都市部でありながら23万3,945円と、東京都区部の33万1,727円よりはるかに安い支出で生活できます。細かい内訳を見ると、住居費は8,000円程度の差ですが、食料や自動車等関係費、教育や教養娯楽の費用が大きく下回っています。

 移住先を都市部にこだわるなら、大阪市の23万3,945円、名古屋市の24万7,945円、福岡市の27万5,534円が全国平均よりも安い数字となっています。東日本では、仙台市の33万4,079円、横浜市の30万5,439円と、平均支出が30万円台の都市もあります。西日本の方が比較的、安い生活費で暮らすことができる都市が多いといえるでしょう。

移住サポートが手厚い自治体を探そう

 地方には、移住に際して、家賃補助など手厚いサポートをしてくれる市町村が多数あります。「一般社団法人移住・交流推進機構」の「移住を後押し 自治体支援制度検索」を利用すると、全国の自治体が行っている子育て支援、住宅建築補助、起業支援など、各種支援制度を検索することが可能で、移住体験や移住者限定の支援制度を探すことができます。

 全国各地方の中から、補助金が高額だったり、ユニークな移住サポートを行っている市区町村を紹介しましょう。

北海道・東北

北海道上川町

 北海道の道央に位置する上川町(「上川町観光・移住ポータル」)では移住・定住を促進するために最大80万円の「空き家改修支援事業補助金」、住宅を新築する移住者には最大250万円の「住宅建築促進支援事業補助金」が交付されます。

関東

群馬県高崎市

 群馬県高崎市(「高崎市移住定住情報コーナー」)では新たに農地を取得したり借り受けたりして、自営農業を始めてから経営が軌道に乗るまで、年間最大150万円を最長5年間交付する「農業次世代人材投資事業」を行っています。

中部

富山県南砺市

 富山県南砺(なんと)市(「南砺市南砺で暮らしません課」)では、市内で新規に事業を起こす起業家に対して、最大200万円の事業所等開設経費や賃貸料月額2.5万円(最大3年間)などを助成する「起業家育成支援事業補助金制度」を提供しています。

近畿

兵庫県洲本市

 兵庫県の淡路島にある洲本市(「SUMOTTO/洲本市田舎暮らし応援サイト」)では、50歳未満2人以上の転入者に対して最長3年間、月額1万円の補助金を交付しています(令和3年4月以降は制度の見直しを予定中)。その他にも移住に関して多くの支援制度を用意しています。

中国・四国

愛媛県西条市

 愛媛県西条市(「西条市移住推進課」)では、宿泊費・往復交通費・食費すべて無料で体験可能な完全オーダーメイド型の移住体験ツアーを実施しています。電子黒板など小中学校ICT教育推進事業を進め、移住者の子供の教育にも力を入れています。

九州・沖縄

熊本県山江村

 熊本県山江村(「熊本県山江村移住サイト」)では、移住者に対し、子供1人につき5万円支給する「こんにちは赤ちゃん祝金」や週1回の子育てサロン、小・中学校教育費無料の助成などを行い、子育てやICT教育、スポーツ環境の整備に力を入れています。

 他にも、移住の際の住宅改修や新築に対して補助金を交付してくれる地方自治体は多数あり、「空き家バンク」制度なども完備されているので、地方に移住する場合は安価な住宅を簡単に見つけることができそうです。

 しかし、移住してみて「イメージとは違った」「思ったより住みにくい」といった残念な結果になるリスクもあるので、移住先は家族とよく相談しながら、自治体の説明会・体験移住などに参加して、じっくり吟味して決めましょう。

地方は「移住ウェルカム」。移住場所の選定は慎重に

 いまや多くの地方自治体が独自に移住者向けの情報を発信する、かなり手の込んだホームページなどを作成し、首都圏など都市部で移住に関する説明会や相談会を開いています。コロナ禍の今は、オンラインでの移住相談に乗っている自治体もあるので情報収集に困ることは少ないでしょう。

 投資の運用益だけで生活を十分にまかなえる状況であれば、地方と都市部に生活拠点を2つ持つことも可能かもしれません。地方に関しては、ある意味「より取り見取り」で移住地を選べる時代になっているのです。

 全般的に「移住ウェルカム」な自治体が非常に多いので、自分のライフスタイルや家族の状況、生活に必要な消費支出、FIRE後に挑戦したい活動や仕事、事業、コミュニティ活動などを選別基準に、移住場所を選んでみましょう。