FIREとは?

 FIREとは、Financial Independence,Retire Early(経済的独立と早期リタイア)の頭文字を取ったものです。

 1992年にヴィッキー・ロビンとジョー・ドミンゲスの書いた『お金か人生か 給料がなくても豊かになれる9ステップ』という本が出版され、それがFIREムーブメントのインスピレーションになりました。同書は消費と自分に残された人生の時間を天秤にかけ、「それにお金を使うことは本当に必要?」ということを常に自分に問うことで、消費至上主義の呪縛から解放されることを説いています。

 米国ではこの本の影響で、根強いFIREムーブメントが起きています。とりわけミレニアル世代(現在25歳から40歳の米国人)は大学を出て就職活動するとき、リーマン・ショックに見舞われた関係で、就職で苦労した経験があり、お金に対する考え方が保守的です。FIREはそんな彼らの価値観にピッタリの主義だといえます。

「FIREを達成!」の具体的な定義は?

 あなたがFIREを達成したか? について客観的に判定する方法は、きわめてシンプルです。

 それはまず、あなたの年間の総支出を合計し、それに25を掛けて求められる数字が、FIREを算術的に可能にする貯金ゴールになります。

 仮にあなたの毎月の支出が20万円だとすれば、1年間の総支出は240万円になります。それを25倍した数字、すなわち6,000万円が貯金目標であり、そこへ到達すればFIRE達成です。

 なぜ25倍という乗数を当てはめるのでしょうか。その答えは4%の逆数が25だからです。

 ではどこから4%という数字が出てくるのでしょうか。

 それは、今日の米国で無理のない手堅い投資方法(=株式市場をまるごと買うことを可能にするインデックス投資がその典型)を用いた場合、保守的に見積もっても、年率4%前後の投資リターンが期待できるからに他なりません。

 先ほどの貯金目標の例に戻ります。

 今あなたが6,000万円貯めたなら、米国株式インデックス投資で年率4%の投資リターンが見込めるわけですから、1年間の投資収益は240万円になります。毎月の生活費を求めるには、これを12で割り算すればいいわけです。20万円という結果になります。

 つまり、今の生活のペース(=毎月20万円)をずっと維持する限り、6,000万円あれば1年後の資産は4%の投資収益込みで6,240万円となるわけですから、そこから240万円だけ取り崩してもまだ6,000万円残る計算になる……このように、永久に投資元本を目減りさせることなく、不労所得だけで暮らせるようになる分岐点が、FIRE達成の定義なのです。

どうすればFIRE達成が近くなる?

 ところで今、毎月の支出を少し切り詰めれば、どうでしょう?

 仮に20万円ではなく16万円まで毎月の出費を切り詰めれば、年間総支出は192万円になります。それに25を掛けると4,800万円がFIRE達成の目標額になります。

 つまり毎月の支出を4万円切り詰めただけで、FIRE達成のゴールポストが1,200万円も近づいたわけです。

 このように、FIREのライフスタイルを実現するにあたり、節約というのはとてもパワフルなツールになります。

 もちろん、よりお給料のよい会社に転職するとか、副業するなどの方法で収入を増やすことにより、毎年貯金できる金額を増やし、ゴール達成を早める方法もあります。

こんな人はFIREに向かない

 ところで、「それなら投資で、うんとがんばって、大きなリスクを取り、大きなリターンを得ればいい」と考える人がいますが、たいていの場合、そういう横着なことを考える人は、お金を増やすどころか大きな損をこうむり、一発でFIREの夢を吹き飛ばしてしまうと思います。こういう虫のいい発想しかできない人は、そもそもFIREに向いていません。

FIRE挑戦で最も重要なこと

 さて、FIREに挑戦するにあたり、最も重要なことは「ほどよいリスクでヘルシーなリターンを得る」ことです。言い換えれば、投資対象を間違え、あまりにもリターンが低いものに投資すると、永遠にFIREを達成できないということです。

 そのダメな典型例が日本の銀行預金です。今、比較的有利だといわれる定期預金にしたところで、定期預金金利は0.03%程度だと思います。せっかく6,000万円貯めても、それを定期預金で運用する限り、1年間で1.8万円にしかなりません。これではFIREどころか、餓死です。

 米国でFIREを実践している人々のほぼ全員が、全米株式型の投資信託やETF(上場投資信託)に投資しているのは、そのような理由によります。

25倍の貯金とインデックス投資

 改めてですが、FIREは経済的独立と早期リタイアの略です。FIREを実現するには、あなたの年間総支出の25倍の貯金をしてください。

 そしてそれを、米国株式をまるごと買うようなインデックスファンドへの投資で運用してください。銀行預金は利子が少なすぎるので、ダメなのです。