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 菅首相は昨年10月、2050年の温暖化ガス排出の実質ゼロを宣言しました。これを反映した第6次『エネルギー基本計画案』が7月21日に公表されました。10月までの閣議決定を目指します。中間点の2030年度に温暖化ガス排出を2013年度比46%削減する約束の実現に向けた目標を定めています。この中で再生可能エネルギー(再エネ)の比率が現行の計画から大幅に引き上げられており注目されます。

【ポイント1】『エネルギー基本計画案』は再エネ比率引き上げ

 菅首相は昨年10月、2050年の温暖化ガス排出の実質ゼロを宣言しました。エネルギー基本計画はほぼ3年ごとに見直しますが、これを受けた今回の『エネルギー基本計画案』が経済産業省より7月21日に総合資源エネルギー調査会で示され、公表されました。『エネルギー基本計画案』は温暖化ガスを中間点の2030年度に2013年度比46%削減する約束の実現に向けた目標を定めています。

 最も注目された再エネの比率をこれまでの2倍近くに引き上げるなど、再エネの比率を現行の2030年度計画の22~24%程度から大幅に引き上げたのが特徴です。一方で化石燃料の火力発電は大幅に引き下げられたものの、なお41%程度依存する構図にあります。原子力は据え置きとなっています。

【ポイント2】再エネでは太陽光、陸上風力導入促進

 再エネは主力電源と位置付けられ、内訳として太陽光15%程度、水力10%程度、風力6%程度、バイオマス5%程度、地熱1%程度という案が示されました。再エネの中でも固定価格買取制度(FIT制度)下で発電量が拡大した太陽光と、陸上風力の導入拡大を図ります。

 太陽光は発電コストが2020年時点で石炭火力と同程度であり、今後も低下が予想されていることから、経済性の観点などからも推進されていると考えられます。風力では陸上風力の適地の確保を進めることで、導入量の拡大を目指すことが記されています。一方で洋上風力は案件形成加速に取り込む方針です。

【今後の展開】『エネルギー基本計画案』達成には官民一体の取り組みが不可欠

『エネルギー基本計画案』では19%程度は化石燃料のなかで最もCO2排出の大きい石炭が「低廉で保管が容易、安定供給や経済性に優れたエネルギー源」と位置付けられています。化石燃料による発電に関するこうした日本の姿勢は、先進各国からの理解を得ることは容易ではないとの見方があります。再エネも達成は容易な水準ではありません。そのため安定供給や経済性に目配りしつつ、カーボンゼロに近づける今後の具体的な取り組みが重要になります。これまで培ってきた脱炭素技術を一段と高めていくことや、国や企業、研究機関、消費者など関係者が力を結集することが不可欠とみられます。