FIREという新しいライフスタイルに憧れはするものの、今の暮らしに慣れてしまい、現実的なイメージがわかない人も多いのではないかと思います。

 そこで、世間によくありがちな、25歳シングル、30歳既婚子供なし、35歳既婚子供ありの、3人の人物像を設定。FIRE後から老後まで、資金不足にならずにやっていけるのかを、ファイナンシャルプランナーの横田健一さんに試算してもらいました。

 FIREした後、ぜいたく三昧で暮らせば、あっという間に資金が尽きてしまいます。今回は、あくまでも現時点での生活水準をベースにして、「自由な生き方を模索する」ということを意識して、試算していただきました。

 どのようにライフプランを組めば、より長く、より不安なく、FIRE後の生活を送ることができるのかが、よく分かるシミュレーションとなっています。無理しすぎることなく、実現できるFIRE方法と、FIRE後、安心して暮らす資金プランニングをなぞってみてください。夢をかなえた後の生活費、収入、暮らし方などが、よりリアルに見えてくるはずです。

▼試算してくれた人
株式会社ウェルスペント 横田健一さん
ファイナンシャルプランナー。大手証券会社にてデリバティブ商品の開発やトレーディング、フィンテックの企画・調査などを経験後、2018年1月に独立。「フツーの人にフツーの資産形成を!」というコンセプトで情報サイト「資産形成ハンドブック」を運営。YouTube「資産形成ハンドブック」も人気上昇中。

横田さんより補足

4:結婚などのライフイベントや大きなケガ、病気などは追加的に発生しない、という仮定で試算しています。人生の途中で大きなイベントや方向転換があった場合、その時点で、変わった条件に合わせてシミュレーションをし直すことが必要なため、スタート時の条件で試算しています。

5:年収・支出は固定としていますが、年収が上がるにつれ、支出も増える可能性が高く、どれくらい支出がアップするかは環境や個人的趣向により変わるため、今回は、収入・支出ともに将来も一定という仮定で試算しました。実際、私が相談者のシミュレーションを行う際も、その時点での収入・支出額で、固定して試算することが多いです。

※実際の人生はそんなにシンプルなものではありませんが、あくまでシミュレーションのためということでご理解いただければと思います。

Aさん

年齢25歳

B夫妻

年齢:30歳

C一家

年齢:35歳
家族:シングル
現在の仕事:国内メーカー中小企業の営業職
現在の手取り年収:248万円
現在の年間生活費:211万円
現在の金融資産:銀行預金150万円
Aさんのシミュレーションを見る!>>
家族:既婚
現在の仕事:ダブルインカム
夫は公務員、妻は看護師
現在の手取り年収: 691万円
(夫375万円+妻316万円)
現在の年間生活費:480万円
現在の金融資産:銀行預金600万円
B夫妻のシミュレーションを見る!>>
家族:既婚、子供あり(5歳)
現在の仕事:夫は金融機関勤務、妻は専業主婦
現在の手取り年収: 447万円
現在の年間生活費:360万円
現在の金融資産: 銀行預金700万円

●35歳の片働き(金融機関+専業主婦)夫婦Cさんの場合

Cさん

年齢:35歳
家族:既婚、子供あり(5歳)
現在の仕事:夫は金融機関勤務、妻は専業主婦
現在の手取り年収: 447万円
現在の年間生活費:360万円(教育費を除く)、教育費は大学卒業まですべて公立と仮定
現在の金融資産: 銀行預金700万円

 このCさんが、「トウシル版・FIRE3タイプを分析。HappyになれるFIRE型はどれ?」で分類した「リッチ型」、「サイド型」、「節約型」それぞれのFIREを目指す場合、どのように実践していけばよいのかシミュレーションしてみます。

 Cさんの場合、現在お子様が5歳(年中)ということで、これから教育費負担が増えていく時期に入っていきます。今回のシミュレーションでは、お子様の教育費は大学まで含めてすべて公立、今後必要となる教育費は約1,000万円という前提で計算します。

 また、現在奥様は専業主婦ですが、お子様が中学生に上がると同時にパートで働き始め、中学生の間は年間60万円、高校生以降は年間84万円の収入で働いていくという前提でシミュレーションを行います。

 では、さっそく計算していきましょう。

リッチ型の場合、58歳、総資産額は4,146万円でFIRE達成

リッチ型FIREとは:目標額を設定し、達成したら退職。FIRE後は、基本は働かず、株式投資などの資産収入で暮らす

 

Cさんのリッチ型FIREライフプラン


FIRE達成方法:収入(447万円)-教育費以外の支出(360万円)=87万円(年間)から、教育費を差し引いた金額すべてを利回り4%の商品で運用。58歳時点で資産が4,146万円となり、リッチ型FIREが達成できる見込み。
何歳でFIRE達成?:58歳
FIRE達成時の資産は?:4,146万円
FIRE後の暮らしは?:現在の生活水準をキープ
FIRE後の収入は:働かず、財産収入で暮らす
老後は?:85歳時点で、金融資産が1,671万円残っている。

 まずリッチ型FIRE=FIRE前と同じレベルの生活水準をキープするというケースでは、FIRE後の年間生活費は現在と同じ360万円。Bさんご夫婦の手取り年収は447万円ですから、年間の黒字は教育費を差し引く前で87万円となります。

 この場合、資産収入だけで生活していき、85歳でも約1,671万円の資産維持が可能になるFIRE達成は58歳で、その後も生活水準を落とすことなく、働く必要はなくなります。

 家計収支は次のグラフのようになり、子育てから手が離れた時点から、奥様のパート収入で補うものの、お子さんの教育費負担も増加していくため、資産形成のスピードを上げるのはなかなか難しい状況になっています。

 58歳でFIREした後、公的年金を受け取り始めるまでは大きな赤字になりますが、65歳からはご夫婦二人分の公的年金収入268万円/年を受給しますので、赤字幅は小さくなります。

生活費はFIRE前後ともに変わらず同じ水準をキープ。58歳でFIRE達成後、収入がゼロになり大きな赤字となるが、65歳で年金支給が始まると少し持ち直す。不足分は資産を取り崩しながら老後生活を送る。Cさん一家の課題は、ズバリ、お子さんの教育費用。万一、お子さんが「留学したい」「私立へ進学したい」など、設定より教育費がかかる進路を希望された場合、塾代や場合によっては下宿代などの追加負担が発生する。その場合は、再度、シミュレーションを行い奨学金などの利用も視野に入れながらライフプランを修正する必要がある。

 そして資産残高の推移を確認すると次のようになります。

預貯金の700万円は決して手を付けず銀行預金としてキープ。収入と支出の差額を全力で利回り4%で運用。複利も生んで右肩上がりし、58歳で4,146万円に到達(横田さんの試算上、85歳で1,000万円を上回る金額が残るのはこの年齢がギリギリ)。FIRE後は給与がなくなり、65歳で年金受給が開始になるまでは資産が大幅に減っていくが、年金受給開始後は資産の目減りが緩やかになる。お子さんが働き始め、いくらか家計を負担してくれる場合も期待できるが、夫婦で結婚資金などを援助してやりたい場合は、副業などで追加資金を作っていくことも必要。

 資産残高のピークはFIRE達成時点の58歳で約4,146万円となり、その後は金融資産を取り崩しながら生活していくことになりますが、85歳時点においても金融資産は約1,671万円残っています。

 計算上はこのようになりますが、お子様の教育費について、現実的には高校や大学では私立に進学される、受験準備で想定以上にお金がかかるといったことも十分考えられます。

 Cさんご夫婦の考え方にもよりますが、FIRE実現とお子様の教育のどちらにどの程度の優先順位を設定するか、子どもにはできれば良い教育を受けさせたいというお考えの方も多いと思いますので、このあたりはFIRE実現に向け大きな不確定要因になるかと思います。

 もちろん奥様の働き方をパートではなく、フルタイムに近い形にするなど家計としての収入アップを図れればFIRE達成確率を上げたり、達成時期を早めることは可能ですので、そういった選択肢も含めてプランニングしていくとよいでしょう。

 Cさんがリッチ型でFIREする場合は、58歳で約4,146万円の資産を保有することで達成できるわけです。片働き子持ち家計ということで、教育費負担が増大していく時期を迎えることもあり、リッチ型FIRE達成は58歳と遅めになります。

 次にサイド型FIREを達成する場合を考えてみたいと思います。

サイド型の場合、46歳、総資産額は3,531万円でFIRE達成

働く時間を減らし、自由に使える時間を増やす。仕事で得る収入は差があるが、副業や資産収入で補う。

Cさんのサイド型FIREライフプラン


FIRE達成方法:収入(447万円)-教育費以外の支出(240万円)=207万円(年間)から、教育費を差し引いた金額すべてを利回り4%の商品で運用。46歳時点で資産が3,531万円となり、サイド型FIREが達成できる見込み。
何歳でFIRE達成?:46歳
FIRE達成時の資産は?:3,531万円
FIRE後の暮らしは?:FIRE後は現在の2/3(約240万円)の生活水準で生活する 
FIRE後の収入は:FIRE後は生活費240万円の1/2、120万円を勤労収入(1人あたり60万円/年)で、残りの120万円を財産収入で賄う。
老後は?:85歳でも約1,392万円の資産が残っている。

 サイド型の場合、現在の生活水準の2/3、つまり今回は教育費を除くと約240万円での生活をしていくわけですが、そのうち半分、つまり年間120万円分(1人あたり60万円/年)はアルバイトやパートなどの勤労収入(個人事業も含みます)で確保していきます(今回は64歳まで働くと仮定)。

 この場合も厚生年金保険には未加入となりますので、ご自身で国民年金保険料等を支払っていくことになります。

 収支の推移は次のようになります。生活費の半分を働いて稼ぎ、残り半分を資産収入および取り崩しで暮らしながら85歳でも約1,392万円の資産維持が可能になるFIRE達成は46歳、リッチ型と比較すると12年ほど早く、始めてから11年で達成できることになります。

 公的年金収入は二人合わせて年間231万円となり、社会保険料込での生活費250万円との差が小さいことから年間収支はわずかな赤字に収まります。

リッチ型と異なり、教育費以外の生活費はFIREを目指す前の水準の2/3レベル(240万円)に落として節約。支出ダウンに加えて、奥様のパート収入により投資に回せる金額が大きく増えるので、FIRE達成時は46歳と大幅に短縮できる。ただし、企業の保険を抜けるため国民健康保険等を払う必要があり支出がやや増。さらに、リッチ型と異なり、FIRE達成後も年間120万円分(支出の半分)は労働を続ける必要あり。問題は50代直前に、ちょうどお子さんが20歳前後となり、お子さんが大学へ進学した場合、教育費がピークを迎える点。奥様だけでなくCさんご自身も副業などで援護射撃をする必要があるかも。

 資産残高のピークは、次のグラフのように46歳で約3,531万円と、リッチ型より少し低くなります。

 リッチ型と比較すると、そもそも生活水準が低めであること、サイド型の場合、資産収入でカバーする必要があるのは生活費の半分であることから、このように相対的に少ない金額でのFIRE達成が可能になっています。

FIRE前の2/3に生活費を節約、さらに奥様のパート収入も加わるため、いわゆる「入金力」がぐんとアップ。年間170~230万円程度を投資に回せる。FIRE後も120万円分は働き続けるため、資産の目減りは比較的緩やか。前述のリッチ型に比べて、FIRE達成が早まるため、47歳以降の時期にゆとりをもって過ごせるのもメリット。奥様がパートに出る以上、Cさんは家事育児の腕を磨き、家事育児を分担できる準備も必要。お子さんが就職し、独り立ちした後は、生活費も二人分に減り、さらに支出が抑えられる可能性大。

 この場合、高齢期においては公的年金収入と生活費で考えると年間19万円の赤字になりますが、資産収入がそれを上回ることが期待されるため、資産は少しずつ増加していき、85歳時点で金融資産が約1,392万円となっています。

 最後に節約型FIREについて確認していきます。

節約型の場合、45歳、総資産額は4,024万円でFIRE達成

節約で支出を抑え、収入が低くても生きていけるよう人生設計。働く時間はできるだけ減らす。

Cさんの節約型FIREライフプラン


FIRE達成方法:収入(447万円)-教育費以外の支出(180万円)=267万円(年間)から、教育費を差し引いた金額すべてを利回り4%の商品で運用。45歳時点で資産が4,024万円となり、節約型FIREが達成できる見込み。
何歳でFIRE達成?:45歳
FIRE達成時の資産は?:4,024万円
FIRE後の暮らしは?:FIRE後は現在の時点の生活水準の半分(360万円の1/2=約180万円)で生活する。 
FIRE後の収入は:生活費の全額を資産収入および取り崩しで生活。
老後は?:85歳でも約1,480万円の資産が残っている。

 節約型は現在の生活費をトコトン見直して、生活費を半分にしますので、今後の生活費は教育費を除くと約180万円となります。住居費をいかに低く抑えられるかがポイントになります。

 生活費を現在の半分にし、それを全額資産収入で賄いながら85歳でも約1,421万円の資産維持が可能になる節約型のFIRE達成は45歳と、サイド型とほぼ同じ時期となります。

 シミュレーション上はこのような結果になるものの、節約型FIRE達成時期はお子様が高校、大学と最も教育費がかかる時期に入っていくため、状況によっては、少しでも働くことでサイド型へ移行するなど、柔軟な選択肢も考えておいた方がよいでしょう。

 年金受給が始まるまでの20年間を資産収入のみで生活していくのは、心もとないかもしれません。

 また、年金受給開始後は、そもそも生活費を年間180万円程度と低く抑えているため、公的年金収入約228万円の範囲内で十分生活していける形になります。
 

生活費を削れるだけ削ったのでFIRE達成前の入金力は3型のうち最大となり、年間232~288万円(教育費による)。ただし、そこまで削るには、格安スマホを利用する、家賃の安いところに引っ越すなど、固定費を見直す必要がある。FIRE後は収入がなくなるのに国民年金保険料等を支払う必要があり、大きな赤字。これを耐えるだけの資金を45歳までに達成しておく必要がある。また、市場が荒れて運用がうまくいかなくなった場合も想定し、資格を取るなどして、いつでも再就職できる状況に備えておくのも◎。

 資産残高のピークは45歳で約4,024万円となり、サイド型よりも高くなります。サイド型は勤労収入があるため少なくても大丈夫ですが、節約型の生活費は低いものの、資産収入のみに頼ることになるため、より大きな資産を準備しておく必要があるわけです。

 FIRE達成時期は、サイド型とほぼ同じ45歳と、10年ほどでの達成となります。

まず「働かない」という前提の節約型FIRE。その代わり生活費を1/2まで落とすというミニマリスト生活を送る必要があるため、節約生活が苦ではない人でないとやり通せない可能性も。年金受給手前では資産が437万円まで落ち込むものの、受給開始後は年間収支が38万円の黒字となるため、資産が回復していく形となる。しかし、お子さんが結婚する際、「ご夫婦そろって無職」という状態がベストかどうかも不安が残るところ。早めにお子さんとも話し合い、意見のすり合わせをしておいた方が無難。

 45歳でFIRE達成後は、資産運用を継続しながら生活費と教育費を取り崩していくため資産が一本調子で減少していく形になります。

 そして年金受給直前の64歳では437万円まで落ち込むものの、65歳から公的年金を受給し始めると、公的年金受給金額(約228万円)が生活費(約190万円)を上回るため、資産は増加に転じ、85歳時点では約1,480万円まで回復する形となります。

 計算上、お金の面ではこのようになるわけですが、一つ大切なポイントは、お子様が高校、大学といった時期にご夫婦ともに無職になることです。節約型の生活水準で食べていくことができるとはいえ、ご夫婦ともに無職の状態というのはお子様がどのような印象を受けるか、事前に考えておく必要があるかと思います。

 45歳でFIRE達成後、平均余命を考えると40年以上働く必要はなくなりますが、その空いた時間をどのように過ごしていくか、ぜひしっかりと考えていただければと思います。

最後に

 35歳片働き子持ちのCさん一家がFIREを目指すとしたら、FIRE後の生活費や収入減がどう変化するのかをシミュレーションしてみました。

 シミュレーション時点では、お子様がまだ幼いということもあり、奥様が早くから働きに出るのは難しいかもしれませんが、お子様がある程度大きくなったら、教育費負担をカバーするためにも、年間60万円程度はパートで働くことがFIREを達成するためには必要になってきます。

 お子様が私立学校に進学したり、2人目、3人目が生まれたといった場合には、支出の見込みが大きく変わってきますので、プランの大幅な見直しが必要になります。お子様の教育やご夫婦の働き方など、優先順位をしっかり話しながら実行していくことが、FIRE達成に向けて重要になります。

 FIREはあくまでライフスタイルの1つですが、必ずしも非現実的な話ではないということがご理解いただけたのではないでしょうか。

 今回のシミュレーションでは考慮していませんが、ご両親様からの相続により、少しでも資産を相続できると老後のさらなる安心につながりますので、場合によっては頭の片隅に入れておくことも大切です(それを頼りにする形のプランニングというのはおすすめしませんが)。

 今回は大きなケガなどのトラブルや高齢期において要介護になるといった負担は発生しないという少し楽観的な前提になっているところもある一方、今後の勤労収入も上昇しないという保守的な前提にしている部分もあります。

 実際にこのようなライフプランを立てて実行していく場合には、このようなシミュレーションを年に1回など定期的にアップデートしながら確認していくことが重要です。

他の2例のライフプランシミュレーションをチェック!

Aさん

年齢25歳

B夫妻

年齢:30歳

C一家

年齢:35歳

家族:シングル
現在の仕事:国内メーカー中小企業の営業職
現在の手取り年収:248万円
現在の年間生活費:211万円
現在の金融資産:銀行預金150万円

Aさんのシミュレーションを見る!>>

家族:既婚
現在の仕事:ダブルインカム
夫は公務員、妻は看護師
現在の手取り年収:691万円
(夫375万円+妻316万円)
現在の年間生活費:480万円
現在の金融資産:銀行預金600万円

B夫妻のシミュレーションを見る!>>

家族:既婚、子供あり(5歳)
現在の仕事:夫は金融機関
勤務、妻は専業主婦
現在の手取り年収:447万円
現在の年間生活費:360万円
現在の金融資産: 銀行預金700万円