浮上のきっかけをつかめない日経平均。「最後のとりで」200日移動平均線を下回る場面も

 先週末7月30日(金)の日経平均株価は2万7,283円で取引を終え、前週末終値(2万7,548円)からは265円安、週足ベースでも2週連続の下落となりました。

 8月相場入りとなる今週の国内株市場は、引き続き決算を手掛かりにした値動きが見込まれるわけですが、今週はトヨタやソニー、任天堂など1,100銘柄を超える企業の決算が予定されています。

 先週から本格化している国内の決算シーズンは、これまでのところ好業績に素直に反応して株価を上昇させる銘柄が増えている一方で、出尽くし感で売られてしまう銘柄も散見されます。また、新型コロナウイルスの国内新規感染者の急増によって緊急事態宣言の対象地域が拡大されるなど、状況が悪化していることもあり、日本株は株価浮上のきっかけをつかみ切れていません。

 さらに、週末には月初恒例の米国雇用統計が控えています。

 先週開催されたFOMC(米連邦公開市場委員会)では、タカ派(引き締め)色とハト派(緩和継続)色がバランスよく織り交ぜられたことが安心感につながり、主要株価指数(NYダウ平均株価・S&P500・NASDAQ)が最高値圏を維持し、波乱のない堅調な展開となりました。

 その後のパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の記者会見では、「雇用の状況が大幅に改善するまでテーパリングはしない」と述べていただけに、仮に雇用統計が強い結果となった場合には、早期の引き締め観測が浮上して売りのきっかけになる可能性には注意する必要がありそうです(日本株が米雇用統計の結果を織り込むのは来週になりますが)。

 そのため、読みにくい相場地合いが続きそうですが、まずは足元の状況から確認します。

■(図1)日経平均(日足)とMACD(2021年7月30日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 あらためて先週の日経平均の値動きを振り返ると、週初は反発して200日移動平均線を回復させましたが、2万8,000円水準から上値を伸ばせず、週末にかけて再び下落に転じていきました。とくに週末30日(金)は大きめの陰線で、200日移動平均線を下放れするような格好になったほか、直近安値(7月20日の2万7,330円)もわずかに下回っています。

 下段のMACDも下向きが続いているほか、移動平均線についても、5日・25日・75日線がそろって右肩下がりを強め、5日線が200日線を下抜ける「デッド・クロス」も出現していますので、チャートの形からは下げ止まり感は出ていません。

下値を試す場合の目安は?:移動平均線乖離率のボリンジャーバンド

 移動平均線的には200日という「最後のとりで」を下回る場面が増えてきたこともあり、もし、下値を試す場面があった場合、どこを目安にしたら良いのかを考える必要が出てきました。そこでいくつかの指標を確認していきたいと思います。

 まずは、ここ最近のレポートでも紹介している移動平均線乖離(かいり)率のボリンジャーバンドです。

■(図2)日経平均の移動平均線乖離率(75日)のボリンジャーバンド

出所:MARKETSPEEDⅡのデータを元に筆者作成

 まずは、75日移動平均線乖離率のボリンジャーバンドです。

 先週末30日(金)取引終了時点の75日移動平均線乖離率(ピンク色の線)は▲5.16%ですが、▲2σ(シグマ)の近くに位置しています。計算すると2万7,108円ですので、先週末の終値(2万7,283円)からの下げ余地は175円ほどということになります。

 続いては25日移動平均線乖離率のボリンジャーバンドです。

■(図3)日経平均の移動平均線乖離率(25日)のボリンジャーバンド

出所:MARKETSPEEDⅡのデータを元に筆者作成

 先週末30日(金)取引終了時点の25日移動平均線乖離率は▲3.52%です。図2の75日に比べると▲2σ(シグマ)にはまだ少し距離があるように見えます。具体的な▲2σの値は▲4.22%ですが、こちらも計算すると2万7,084円となります。

 75日・25日移動平均線乖離率からみた下値の目安はどちらも2万7,000円台をキープしているため、2万7,000円付近から安いところは買いを入れるポイントとして考えることができそうですが、ボリンジャーバンド全体の傾きが下を向いており、乖離率が▲2σに沿って下げていく可能性も想定されるため注意は必要です。

下値を試す場合の目安は?:トレンドの状況と株価水準による押し目

 続いては、トレンドの状況と株価水準による押し目で見ていきます。

■(図4)日経平均(日足) その2(2021年7月30日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 上の図4は、日経平均が高値を取りに行く起点となった昨年10月30日から今年2月16日の上昇幅に対する押し目ラインです。

 2月16日以降の日経平均は、それぞれのラインがサポートもしくは抵抗として機能する場面が多いことがわかりますが、先週の日経平均は、「38.2%押し」から「50%押し(半値押し)」のゾーンに足を踏み入れる格好となっています。

 そのため、株価が下落して行った場合、50%押しラインである2万6,831円で下げ止まれるかが焦点になりそうです。なお、この価格帯は昨年12月に1カ月近くもみあっていた経緯もあり、下げ止まりの水準として強く意識されそうです。

 反対に株価が上昇した際には、先週乗せきれなかった2万8,000円台や、図2や図3の移動平均線乖離率ボリンジャーバンドの+2σまでの各値あたりが目安となります。

 冒頭でも触れたように、足元の日本株は、(1)新型コロナウイルスの感染状況をはじめ、(2)秋の政局を控えた不透明感や、(3)積み上った信用買い残の期日が迫っていること、そして、(4)先週発表されたIMF(国際通貨基金)の世界経済見通しで、2021年の日本の成長率がG7の中で唯一下方修正されたことなど、懸念材料に包囲されているような状態のため、日本株を積極的に買いづらい状況となっています。

 国外要因についても、中国の景気やIT規制など当局の姿勢などが警戒され始めています。ちなみに、今週あたまに中国7月製造業PMI(購買担当者指数)、3日(火)にアリババの決算発表が予定されています。

 確かに、日本株は上値を追えないものの、これだけの懸念材料がそろっていながら、何とか粘り腰を見せている印象ですし、株価水準の割安感を指摘する見方も増えつつあります。

 現在の「懸念材料の包囲網」が夜明け前のいちばん暗い時期かどうかの見極めがまだハッキリしていないため、下振れ警戒は依然としてくすぶりますが、需給不安が後退すると思われる8月第2週あたりのタイミングで、株価の反発もしくは戻りに勢いが出てくることも考えられるため、ガマンが必要ですが、敢えて安いところを拾うのも悪くないかもしれません。