エルさん流 米国株の選び方

 本格的に米国株投資を始めたことをきっかけに大きく資産を増やし、2019年にアーリーリタイアを実現したエルさんのインタビュー中編をお届けします。

 今回は、米国株投資の魅力、さらには銘柄選びのポイントについて聞きました。

米国には高収益企業が山ほどある

──エルさんは2015年ごろ、本格的に米国株投資を始め、そこから一気に資産を増やしたんですよね。始めたばかりの米国株で大成功できたのはなぜだったのでしょう?

 ひと言でいえば、米国には高い収益力を誇る企業がたくさんあるからです。日本企業も、私が株式投資を始めた30年前に比べると、財務基盤は格段によくなりました。しかし、残念ながら収益性の低さは変わっていません。

 収益力がないと、絶対的な利益額が低いため、株価の上昇は見込めません。これに対して米国には、高いブランド力を武器に世界中でビジネスを展開している、高収益企業が山ほどあります。当然、株価上昇が期待できるわけです。

──米国にはGAFAMをはじめ、世界的な企業になったにもかかわらず、いまだに成長を続けている企業が多いですよね。

 はい。その点も日本とは決定的に異なる点です。日本の大企業は経営が安定しているというよさはあっても、総じて成長性が低い。だから、長期にわたって安定して株価が上がり続けるということが少ないんです。

──そういえば先日、アマゾンが上場来高値を更新しました。

 アマゾンは、今も30%以上の成長率を示しています。日本の大企業で、今も急成長を続けているような企業は、なかなか見当たりませんよね。

──日本にも20%、30%の勢いで成長を遂げている会社はありますが、だいたいは新興企業、中堅企業ですよね。だから、日本株で大きく稼ごうと思ったら、大型銘柄でなく、新興銘柄や中小銘柄を狙うのが普通です。

 しかし、成長銘柄で勝負するのはリスクがともないます。2倍、3倍に上がる可能性がある半面、その逆もありえますから。

 その点、GAFAMのような銘柄であれば、ある程度、安全を確保しながら、大きな利益を狙えるよさがあります。それが米国株投資の大きな魅力だと思います。

──米国の優良銘柄のほうが乱高下が少ないのでしょうか​。

 一概には言えませんが、感覚的には日本株のほうが大型銘柄でも今日は上がったけど、明日になったら下がるみたいことがあるように思います。だから、こまめに値動きをチェックしなければならないし、買い時や売り時が難しい。米国の優良銘柄には、素直に右肩上がりになるものも多いので、値動きをそれほど気にせずに済みました。

 その点、米国の優良銘柄の多くは、基本的に右肩上がりなので、あまり値動きを気にする必要がない。そういう意味でも投資初心者に向いていると私は思います。

米国には連続増配銘柄が多い

──もう1つ、米国株の特徴として、連続増配銘柄が多いことが挙げられます。

 それも大きな魅力の1つです。日本株で30年以上増配を続けているのは花王1社だけです。ところが、米国には50銘柄近くあります。

 コカ・コーラ(KO)プロクター・アンド・ギャンブル(PG)ジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ)などは50年以上連続増配を続けています。これも収益性が高いからこそ、成せる業です。

──株価上昇による値上がり益を狙いたいという人はもとより、配当金で稼ぎたいという人にとっても米国株のほうが有利だということですね。

 それは間違いないでしょう。もちろん、これまで50年連続で増配してきたからといって、来年以降も増配するとは限りません。しかし、こうした企業は2000年のITバブル崩壊時やリーマンショックのときですら、増配してきました。

 それだけ財務基盤が盤石で、危機に対する余力が十分備わっているということです。だから、今後、経済危機が訪れるようなことがあっても、意外と減配する企業は少ないかもしれません。

──エルさんは配当金目当てで買うことはあるのですか。

 私の場合、「株価上昇が見込める銘柄を買う」というのが基本スタイルです。だから、配当利回りが高いという理由だけで買うことはありません。

 ただし、当然、保有銘柄の中には配当のある銘柄も多いので、一定の配当金は得ています。

──では、どういう観点から銘柄を選ぶのですか?

 大きく分けるとポイントは3つあります。1つはいうまでもなく、その企業、あるいはその会社の事業が強固であるかどうか。具体的には収益性が高いか、同業他社に打ち勝てるだけの競争力を有しているか、ブランド力があるか、成長性が高いか、などです。

 ちなみに収益性は、企業の収入における利益の割合である「売上高営業利益率」や、営業活動で生じる現金収入である「営業キャッシュフロー」、成長性は毎年売上高が伸びているかどうかなどで判断します。

──それらをご自身で調べるんですか?

 もちろんです。ただし、投資関連機関の格付けなどを参考にすることもあります。

情報を入手しやすいメジャー銘柄がオススメ

──2つ目は?

 自分がその企業の製品やサービスを利用しているかどうかです。投資の神様といわれるウォーレン・バフェットは「投資先は自分が理解できるビジネスモデルに限るべきだ」といっていますが、私もそれに近い考えです。

 自分が利用していると、消費者の視点からその企業を評価できるので、売り買いのタイミングが分かりやすいというよさがあります。

 コロナショックのようなことが起こって、保有銘柄が下落すると、このまま持っていて大丈夫だろうかという不安に襲われます。

 結果、「ろうばい売り」してしまうこともあるでしょう。で、売ったらすぐ市場が反転し、後悔するというのもよくあることです。

 その点、自分がその会社の製品やサービスを使っていると、その下落が市場環境によるものなのか、それともその会社の経営自体に起因するものなのかが分かります。

 例えば製品やサービスの品質が極端に落ちているのであれば、明らかに後者と思えます。その場合、市場環境が好転しても株価が回復することは考えにくいので、売るという結論が導き出されるわけです。

──エルさんはリーマンショック時、慌てて売らなかったことが功を奏したとおっしゃっていました。自分にとって馴染みの深い会社の株を持っていたから、いずれ反発すると予想できたのですね​。

 その通りです。

──でも、それなら、なじみのある銘柄が多い日本株のほうが、分かりやすくないでしょうか?

 今は、日本でも、米国製の製品やサービスが、とてもなじみのあるものになってきていますよ。

 私は、マイクロソフト(MSFT)アップル(AAPL)ネットフリックス(NFLX)ビザ(V)マクドナルド(MCD)スターバックス(SBUX)ナイキ(NKE)ジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ)なども保有していますが、これらは、日本でもファンが多く、ユーザーも多い、なじみのある企業のはずです。

──確かにそうですね。では、3つ目はなんでしょうか?

 海外の銘柄に投資する場合、いかに情報を入手するかという問題に直面します。ですから、情報を入手しやすいかどうかも大事です。

──前回、誰もが知っているような銘柄なら、日本でもいくらでも情報を入手できるので、英語力がなくても問題ないとのことでした。ということは、やはりメジャーな銘柄を選んだほうがいいのでしょうか?

 はい、GAFAMなどの有名企業だと、何か大きな動きがあったり、決算に異変が見られたりすると、日本でも必ず報道されます。

 ましてや、最近は、米国株人気が高いため、投資メディアなどでもたびたび特集が組まれます。ですから、基本的にはメジャーというか、ポピュラーな銘柄のほうが情報を得やすいと思います。

──かつてエルさんは、ファーストリテイリング(9983) がブレークする前に株を買って、ひともうけされました。あまり知られていない優良銘柄を探すというのも投資の醍醐味(だいごみ)だと思いますが、それは米国株だと難しいのでしょうか?

「自分は英語が完璧だし、米国の投資事情にも詳しい」という人なら反対はしません。そうでないなら、みんながよく知るポピュラーな銘柄に絞ったほうが間違いないでしょう。

 先ほど話したように、米国株であれば、メジャーな銘柄でも大きく稼ぐチャンスがありますから。

──では、次回は、エルさんが注目している米国銘柄などについてお伺いします。

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