投資に役立つ経済ニュースを初心者にもわかりやすく解説する「トレンドマーケットスクールTOKYO」。いよいよ今週は東京五輪が開催されるため、7月22日(木)が海の日、23日(金)がスポーツの日で祝日。日本の株式市場も休場します。

コロナ感染者数増、海外インフレ懸念で週初の日本株は大幅下落

 先週の日本株は、米国株の上昇に連動して週明け12日(月)からリバウンド上昇。13日(火)には日経平均株価が2万8,800円台まで戻しましたが、その後は力なく下落に転じました。

 16日(金)夜の米国株の下落につられて、夜間取引の日経平均先物が2万7,700円台まで下落しており、19日(月)も2万7,500円台に下げて始まりました。

 国内では、緊急事態宣言下の東京都で新型コロナウイルス感染者が5日連続で1,000人を超えたことが不安要素になりそうです。先週の東証1部下落率ランキングでは下落率1位がアミューズメント施設のラウンドワン(4680) で▲17.9%、4位がアパレルの三陽商会(8011) で▲13.0%、23位にJR東海(9022) が入りました。

 今週もデルタ株(インド由来の変異株)の感染増加で、娯楽、アパレル、運輸など国内消費に関する銘柄の下げがきつくなりそうです。

 米国では、13日(火)発表のCPI(消費者物価指数)が、予想を大きく上回る伸びになりました。しかし、14~15日(水・木)の米国議会証言で、アメリカ中央銀行FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長が「物価上昇は一時的なもの」という従来の説を繰り返したこともあり、市場はそれほど反応しませんでした。

 ところが16日(金)、銀行株など個別企業の決算発表がおおむね好調だったことや、前月比0.6%増と予想外のプラスになった小売売上高にもかかわらず、NYダウは300ドル近くも下落。

 市場開始30分後に発表されたミシガン大学の消費者信頼感指数(消費者のマインド調査を指数化したもの)の7月速報値が予想外に悪化した一方、消費者が想定する1年後の期待インフレ率が4.8%と高水準だったことで、インフレ懸念が再燃しました。

 これまでは「景気が良すぎて、インフレが進むと、FRBの早期利上げや長期金利の上昇で株式市場にお金が流れ込まなくなる」という不安が株価急落の引き金でした。

 しかし、最近は「物価が上昇しすぎて、アフターコロナで好調な米国経済が落ち込む懸念」が台頭しています。つまり、景気は今がピークで今後落ち込むかもしれないというわけです。そのため、景気が落ち込むと買われることが多い長期国債の価格が上昇し、それに反比例して金利が低下しています。

週後半の米国株は企業決算、製造業PMI発表で上昇再開も?

 一方、15日(木)発表の中国の実質GDP(国内総生産)は前年同期比7.9%増と予想の範囲内だったことで中国株は上昇しましたが、日本株は反応薄でした。中国が2021年後半も高い成長を維持できるかどうかに関心が集まっています。

 日本市場が連休に入る22日(木)夜には、ユーロ圏の中央銀行・ECB(欧州中央銀行)が金融政策理事会を開きます。

 サッカーの欧州選手権「ユーロ2020」はイタリアの優勝で幕を閉じましたが、決勝戦を6万人の観衆がマスクなしで観戦するなど、ユーロ圏も経済再開による好景気に沸いています。

 史上最高値を更新するドイツDAX指数をはじめ、ヨーロッパ各国の株価も絶好調。米国同様、物価上昇が続いていますが、大きな金融政策の変更はなさそうです。 

 一方、米国では21日(水)のコカ・コーラ(KO) 、ジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ)、22日(木)のインテル(INTC) など、2021年4-6月期の決算発表が本格化します。予想を上回る決算が続けば、米国株がインフレに対する過度な”気迷い”を脱し、一段高する可能性もあるでしょう。

 23日(金)には、米国の製造業やサービス部門の7月のPMI(製造業購買担当者景気指数)速報値が発表されます。「PMI」は企業の購買担当者に生産状況などをアンケート調査し、指数化したものです。ユーロ圏や中国など世界各国で集計されているため、注目度が高い指標です。

 史上最高値圏にある米国市場には、投資家の利益確定圧力がマグマのようにたまっています。そうした状況では、少しでもネガティブな経済指標が出ると、株価が急落するリスクがあります。

 今週の日本市場は19日(月)~21日(水)までの3日間しか取引が行われません。休場中は海外市場の動きを警戒して、短期売買の投資家が株の保有残高を減らす可能性があります。それは株価の下げ圧力につながるので注意したいところです。