抗がん剤R&Dに関する新ガイドライン、優良パイプラインを持つ大手に有利

 中国の国家薬品監督管理局は7月2日、抗がん剤の臨床試験に関する新たなガイドラインの草案を発表。この分野の新薬研究開発(R&D)に関しては、治験対象者への付加価値が見込めるような手法を取るべきだとする方針を示した。成功率引き上げに主眼を置き、参加者のメリットが軽視される一部の治験に警鐘を鳴らしたものだが、結果的に新薬開発のハードルが上がり、R&D費用が縮小。CRO(臨床開発・治験業務の外部受託機関)への発注が細るとの見方が広がり、香港市場ではH株のCRO銘柄、バイオテック銘柄がここ2日間で各6-14%、2-5%下落した。BOCIはCROやバイオテックの大手に対する長期の投資判断には影響しないとみる半面、短期的な株価動向には不透明感がくすぶるとの見方。理由として政策的な不透明感に加え、成長株の値ごろ感の後退を背景に、2021年下期には投資家のリスク許容度の低下が見込まれる点を挙げた。

 中国ではこの先、長期的に新薬開発に向けたR&Dの質的な基準や要件が高まる見込み。BOCIはその影響として、新薬開発の難易度の上昇と、臨床試験デザインの複雑化によるR&Dの失敗リスクの拡大という2点を指摘している。また、こうした長期のトレンドは企業別の格差につながると予想。信達生物製薬(01801)、百済神州(06160)、康方生物科技(09926)など、R&D能力が高く、他社と差別化したパイプライン(製品候補)を持つバイオテック大手が長期的に主導権を握り、それ以外の同業他社は新薬の開発・投入が難しくなる見通しを示した。

 BOCIはまた、このガイドラインが長期的に業界の集約を後押しすると予想。高質のプロジェクト獲得で優位に立つワンストップ型の大手CROが市場シェアをさらに伸ばすとみる。ただ、薬明生物技術(02269)や無錫薬明康徳新薬開発(02359)、康龍化成(03759)などの前臨床CRO大手は、いずれも海外からの受託業務の比重大きく、2020年の売上構成比は56-86%。こうした海外向け業務は、国内の規定変更による影響を受けない。

 バイオテック企業についても、BOCIは同様に、R&D能力や優良なパイプライン資産を持つ大手に有利とみる。カバー銘柄の中では、特に強力なパイプラインを持つ康方生物科技(09926)、百済神州(06160)に最大の恩恵が及ぶとの見方だ。一方、製薬大手に関しては、パイプラインの強化と時間の短縮に向けたライセンスイン(他社からの開発権購入)やBD(事業開発)が、戦略面でより重要性を増すとみる。

 BOCIはファンダメンタルズ面から、CRO大手およびバイオテック大手の長期見通しを楽観しているが、短期的には高バリュエーションを理由に、やや慎重。適切な買いのタイミングを待つよう投資家に助言している。MSCIチャイナ・ヘルスケア・インデックスは現在、2022年予想PER(株価収益率)で52倍。2019年1月以来3年間のヒストリカル平均値(30倍)を大きく上回る水準にある。