今週の予想

2万8,500円水準まで戻した後の動きに注目

 日経平均株価は、先週末の急落で2万7,419円まで下げて、5月13日の2万7,385円に接近して反発したことで、底打ちの期待感が高まることになり、今週は2万8,500円水準を中心に押し目買いと、戻り売りのせめぎ合いとなる可能性があります。

 先週末の9日(金)は、700円近く下げた後、後場から急速に下げ幅を縮小し、終わってみれば▲177円の2万7,940円と、2万8,000円を割り込んで引けたものの、引け後の米国市場で主要3指数がそろって最高値更新となり、シカゴの日経先物も+325円の2万8,535円まで上昇しています。

 結果的には、5月の安値2万7,385円を下回らず、日足のローソク足では陽線となっているため、目先は底打ち感が期待されるところです。

 ETF(上場投資信託)の分配金捻出売りが大きな懸念となっていましたが、これも通過したことで需給要因が改善されました。

 先週の下げは、5月の安値(2万7,385円)のように、7月9日(金)のSQ値(特別清算指数)に絡む一時的な需給要因の側面があり、再び切り返す可能性はありましたが、米国株式の主要3指数の最高値更新に連動して大きく戻していくには、限界があると思われます。それは、日本の現在の環境が理由です。

 東京都議会議員選挙で自民、公明両党が過半数の議席を取れなかったという結果から、政権与党の弱体化の懸念、新型コロナウイルスの感染の再拡大、東京五輪前に出された4度目の緊急事態宣言、経済正常化に向かう頼みの綱であるコロナワクチン接種のスピードダウンなどを考えると、外国人投資家がどこまで日本株を買ってくるのか、疑問といえます。

 さらに外国人投資家の夏休みを前に日本株を手仕舞う動きが出てくると、ますます上値は重くなります。

 また、2月16日の年初来高値(3万714円)からの信用期日が8月15日に到来することを考えると、慎重な投資が必要といえます。

 逆の視点から言えば、8月に安いところが再びあれば買い下がって、信用期日明けの8月中旬以降の上昇を待つことになります。

今週の指標:日経平均株価

 今週の日経平均は、週末の米国市場でCME(シカゴ・マーカンタイル取引所)日経先物が+325円の2万8,535円となっていることで、大幅上昇して始まり、その後は2万8,500円水準を中心にした、もみ合いが想定されます。

 チャートでは、目先に注目する必要があるのは、8月15日が今年2月16日の最高値(3万714円)からの信用期日が到来するため、相場が弱くなると、下値模索となる場合もあります。

先週の動き

 週前半は2万8,600円水準でもみ合っていましたが、その後は新型コロナ感染再拡大を受けて下落に転じ、8日(木)までは2万8,000円を守っていました。

 ところが、引け後の欧米株が大幅下落となったことで、週末の9日(金)はSQに向けて、ETFの決算に伴う分配金捻出売りもあり、一時▲698円の2万7,419円まで下げました。

 しかし、後場には急速に下げ幅を縮小し、終値では日本銀行のETF買いの思惑や年金の買い観測もあって急速に下げ幅を縮小、▲177円の2万7,940円で引けました。

今週の指標:NYダウ平均株価

 先週は、新型コロナのデルタ株などの変異株感染リスクが織り込まれ、経済活動再開を巡る好材料が織り込まれたとの見方から利益確定売りが先行しましたが、週末にはFRB(米連邦準備制度理事会)が大規模緩和を実施していることで、押し目買いは続いていました。

 そのため、今週は企業決算シーズン開始に伴い、好決算への期待から、NYダウは底堅い動きが期待されます。

先週の動き

 週半ばまでの米国市場は、経済指標がマチマチの内容から、景気回復の腰折れ懸念が高まり、軟調な動きとなっていましたが、週末の7月9日(金)は、景気回復のピークアウト懸念が後退し、景気敏感株中心に幅広く買われ、主要3指数そろって、最高値更新となりました。

今週の指標:ドル/円

 米国では、足元の経済指標の発表で景気回復の一服感が示され、また、原油産油国による政策の不一致による原油の需給引き締めが強まり、原油価格は不安定な動きを見せています。

 先週末の米国市場で主要3指数とも最高値更新となったものの、世界経済の早期回復への期待は低下しており、リスク回避的な動きはまだ続きそうです。

 この地合いではFRBによる将来的な金利引き上げの可能性も意識され、ドル選好が見込まれます。経済指標が予想を上回れば、金融緩和の早期縮小観測で、ドルは売りづらい展開となります。

先週の動き

 週始めに1ドル=111.16円までのドル買い・円売りとなりましたが、7月7日のFOMC(米連邦公開市場委員会)議事録公開を受け、量的緩和策の早期縮小は後退し、ドル売り・円買いが優勢となりました。

 また、世界的に経済の早期回復は困難との見方が広がり、リスク回避の円買いが強まり、一時1ドル=109.55円まで円が買われました。週の引け値では1ドル=110.11円で引けました。

先週の結果

2万8,000~2万8,700円のレンジを下に向かい、週末2万8,000円割れ

 先週の予測では、米国株式が上昇して最高値更新したにもかかわらず、日経平均は連動しない状況や先々週末の7月2日(金)の6月米雇用統計の結果を受けて、米国株が主要3指数は大きく上昇したにもかかわらず、シカゴの日経先物がほとんど上昇していなかったことで、先週は下値を探る展開を想定しました。

 新型コロナウイルスの感染者が東京五輪を前に増加しており、日本の経済正常化への懸念から外国人は当面、日本株から資金を引き上げているということや、米国では独立記念日後はバカンスに入り、ポジション調整の売りも出てくる可能性がありました。

 国内の需給要因では、日経平均やTOPIX(東証株価指数)などの指数連動型ETFの決算に絡む分配金の捻出売りが懸念されており、上値は重く下値を探る動きが強まるとの見方も多くありました。

 チャート(柴田罫線)を見ると、2万8,000~2万9,000円のレンジの中で、2万8,500円水準を上値に2万8,000円に向けて下値を探る展開を想定していました。

 ところが、週の前半こそ2万8,500円水準でもみ合っていましたが、その後は新型コロナ感染者が日ごとに増加したことで相場の重しとなり、8日(木)までは想定したレンジの下限2万8,000円を守っていました。

 しかし、引け後の欧米株式が、新型コロナ変異株の世界的な感染拡大を嫌気して、大幅下落となったことで、週末の日経平均は寄り付きから▲378円の2万7,739円となり、一時▲698円の2万7,419円と、2万8,000円を大きく割り込みました。

 ところが、後場になると日銀のETF買いの思惑や年金資金の買い観測で下げ渋ると短期筋の買い戻しが広がり、▲177円の2万7,940円と急速に下げ幅を縮小しました。

 この日の引け後の米国市場は、これまで景気回復のピークアウト懸念を背景に続いていた債券買いが一服したことで、大きく下落していた景気敏感株中心に買い戻され、大幅上昇となりました。

 米10年債は9日ぶりに反落して利回りが上昇し、これを好感し、金融株が軒並み大幅反発しました。

 前日に▲259ドルのNYダウは、+448ドルの3万4,870ドルと1週間ぶりに最高値を更新し、S&P500種株価指数、ナスダック総合株価指数も最高値更新となりました。

 週間で見ても、主要3指数そろって3週続伸となっています。これを受けてシカゴの日経先物は+325円の2万8,535円となりました。