株式市場の最新動向をお伝えする「トレンドマーケットスクールTOKYO」。今週7月12日(月)から16日(金)は波乱含みの1週間になるかもしれません。

月曜日はリバウンド上昇。それでも、日本株が弱い原因とは?

 先週の日本株は、好調な米国株が上昇してもずるずると下落し、米国株が8日(木)夜に下がると、翌9日(金)には日経平均株価が一時700円近く急落する展開になりました。

 日本株がここまで弱い背景には、東京に7月12日(月)から4度目の緊急事態宣言が発令されること、東京都議選で勝利できなかった自民党政権が秋の衆議院選挙で敗北する政治リスク、中国が米国市場に上場する自国IT企業の規制強化に乗り出したこと、日本も含めアジア圏で新型コロナウイルスのデルタ株(インド型変異ウイルス)が猛威を振るっていること、そのせいもあってアジア株全体が売られていることなどがありそうです。

 米国では景気の停滞懸念で、10年物国債の利回りが低下。金利が低下するとドルの魅力が薄れるため、9日(金)未明に1ドル109円50銭近辺まで円高が進んだことも打撃でした。

 とはいえ、明るい兆候もないわけではありません。

 8日(木)には、7月12日から8月22日まで、東京に緊急事態宣言が発令されることが報じられ、ANAホールディングス(9202) やJR東海(9022) など運輸・旅行関連株が下落しましたが、9日(金)には他のセクター以上に反転上昇しました。

 9日(金)夜には米国株がリバウンド上昇。それを受けて、夜間取引の日経平均先物が2万8,500円台に回復していることから、12日(月)の日本株は大幅に反転上昇して始まりました。

 また、9日(金)の取引終了後には、中国向け産業用ロボットなどが主力の安川電機(6506) の決算が発表され、2022年2月期の営業利益予想が上方修正されました。

 安川電機の決算は、他の輸出関連企業に先駆けて発表されるため、ハイテク株全体の業績動向を占う「先行指標」と見なされています。日本株全体にとっても吉報といえるでしょう。

米国の消費者物価指数(13日)と中国実質GDP(15日)に注目

 今週は米国や中国で重要な経済指標が発表されます。

 一番の注目は、5月に米国株が急落した引き金となったCPI(消費者物価指数)。7月13日(火)の夜に発表されます。

 前回6月の発表は、食品・エネルギーを除くコア指数が前年同期比+3.8%と約29年ぶりの上昇率になりましたが、比べる対象の前年がコロナ禍で急激に物価が下落した時期だったこともあり、悪材料出尽くしで、5月とは逆に米国株が再上昇し始めるきっかけになりました。

 今後は前年の物価が低すぎる効果(「ベース効果」と呼びます)が薄れることもあって、それほど高い伸びにはならない、というのが市場の大方の予想です。

 そのため、今回発表の物価上昇率が予想を大きく上回る上昇となると、インフレ懸念で再び株価が急落するリスクもあります。

 一方、先週8日(木)の米国株急落は、新型コロナウイルスのデルタ株まん延が世界的な景気回復の障害になるという不安によるものでした。

 景気が良すぎてインフレが加速することで利上げの時期が早まるという懸念、それとは真逆で、コロナ禍が再燃し景気回復が遅れるという懸念の板挟みで、史上最高値圏にある米国株も、その悪影響を増幅して受けやすい日本株も、波乱含みの展開が続きそうです。

 米国に対する強硬な姿勢を鮮明にする中国では13日(火)に貿易収支、15日(木)には2021年4-6月期のGDP(国内総生産)が発表されます。1-3月期の実質GDPは前年同期比+18.3%と過去最高の伸びになりました。今回は8%前後の伸びが予想されていますが、日本最大の貿易相手国だけあって、その結果は日本の輸出株にも影響を与えそうです。

 7月15~16日には、日本の金融政策を決める日本銀行の金融政策決定会合が開かれます。日銀はすでに打てる金融政策をすべて打ち尽くしている感があるので、これまで株価下支えのために購入してきたETF(上場投資信託)(2021年3月末の元本残高は約35兆円)を個人に割引価格で販売する、といったサプライズな発表がない限り、注目度は低そうです。

 日本でもデルタ株の感染が広がり東京に緊急事態宣言が発令される中、首都圏では無観客でオリンピックが開催されることになりました。ある意味、異常な状況が、株式市場にどんな影響を与えるのか、もしくは与えないのかに注目しましょう。