第2四半期決算発表シーズン到来
来週から米国は2021年第2四半期決算発表シーズンに突入します。
今回の四半期EPS(1株当たり利益)は平均して昨年の同期に比べて+58%成長すると見られており、これは極めて強い前年比の数字となります。
もちろん、その一因は昨年の第2四半期が新型コロナの影響で大きくへこんだことにあります。それを考慮した上でも、もし実際にコンセンサス予想通り+58%成長できたなら、それは素晴らしい数字と言えるでしょう。
トップバッターは銀行セクター
決算発表シーズンのトップバッターは銀行株の決算です。予定は下のようになっています。
発表日(寄り前) | 銘柄 | コード | EPS | 売上高 |
---|---|---|---|---|
7月13日(火) | ゴールドマンサックス | GS | $9.23 | 117.6億ドル |
7月13日(火) | JPモルガンチェース | JPM | $3.05 | 296.5億ドル |
7月14日(水) | バンクオブアメリカ | BAC | 75¢ | 218.2億ドル |
7月14日(水) | シティグループ | C | $1.96 | 176.9億ドル |
7月14日(水) | ウェルズファーゴ | WFC | 89¢ | 176.9億ドル |
7月15日(木) | モルガンスタンレー | MS | $1.64 | 139.8億ドル |
いずれの銘柄も決算発表時間は寄り付き前です。またEPSと売上高の数字は7月6日時点でのアナリスト・コンセンサスを使用しています。
銀行決算はクレジットカード、新規貸し付けの動きに注目
銀行決算は各行の業績を知ることも重要なのですが、それぞれの銀行の顧客がどのくらい活発にクレジットカードで買い物をしているか? オートローンや住宅ローンのオリジネーション(=新規の貸し付け)がどうなっている? など、消費者の動きを知る上で役に立つ手掛かりが多いです。
昨年、コロナ禍が襲って以来、米国の消費者は消費を抑制してきました。その関係でオートローンや新規のクレジットカードの発行も低迷していました。下はそれらを件数ベースで示したものです。
しかし、ワクチン接種が進み始めたことで、3月はようやく回復の兆しを見せています。
今回は各行の決算で、このあたりの状況を確認したいと思います。
オートローンとクレカローン
法人顧客の動向は?
次に法人顧客の動きですが、新型コロナですべてがパッタリと止まってしまった後、FRB(米連邦準備制度理事会)が信用市場を再開させるため、一連の積極的な支援策を打ち出しました。
これが功を奏して発行市場は息を吹き返し、昨年は社債を中心として積極的な資金調達が行われました。とりわけ今年は株式による資金調達が高水準となっています。
つまり企業向けビジネスは全体として好調なのです。
キャピタルマーケッツ部門の動向は?
一方、株式や債券のトレーディングを行っているキャピタルマーケッツ部門は、第2四半期に入って出来高がやや低迷している印象を受けます。思わぬネガティブ・サプライズが出るとすればトレーディング部門だと思います。
長短金利差の縮小の影響は?
6月16日のFOMC(米連邦公開市場委員会)以降、長短金利差がかなり急速に縮小する動きを見せています。銀行は短期市場で資金を調達し、それを長期に貸し付けるため、長短金利差の縮小は貸し付け利ザヤの縮小につながる恐れがあります。この点も今回の決算発表で注目したいポイントです。
注目のトピックスは?
FRBは銀行各行に対するストレステスト(※)の結果を発表しており、全ての銀行がストレステストに合格しました。これを受けて各行は相次いで増配を発表しています。とりわけモルガンスタンレー、ウェルズファーゴ、ゴールドマンサックスの大幅増配が目を惹きました。
※ストレステスト:株価の暴落や金利の高騰など、金融市場での不測の事態の発生を想定し、金融機関の危機対応能力を評価するテスト
ウェルズファーゴの場合、架空口座開設スキャンダルの罰として現在、総量規制の対象となっています。そこでは「売上高や総資産を増やしてはいけない」という指導がなされており、同行はまず内部統制をしっかりするなどの経営改善を進めてきました。
この総量規制が、いよいよこの夏から9月くらいにかけて解除されるのではないか? と期待されています。
銀行セクターは少し投資しにくい
来週から第2四半期決算発表シーズンに突入します。銀行株が真っ先に決算を発表します。
経済再開で消費者向けローンは堅調が予想されますが、その半面、トレーディングの減速、貸し付け利ザヤの縮小などが懸念されます。全体として銀行セクターは少し投資しにくい環境にあると思います。
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