私自身、中学3年から株式投資を始めてもう35年目になりますが、始めて数年後にバリュー投資に出会い、以降、今もバリュー投資に魅了され続けています。

 私のバリュー投資は、割安成長中小型株を対象としたスタイルですが、バリュー投資を通して、3つの喜びを感じています。

 1つが、キラリと光る中小型株を発掘したときの喜び、そして、実際に投資をして利益を得たときの喜び、さらに発掘した企業が売却後も含め、成長していったときの喜びです。

 バリュー投資になぜ、そこまで魅了されているのかというと、前述の喜びにもつながりますが、1つが「効率がよい」という点、もう1つが「企業を調べれば調べるほど人の息吹が感じられて興味深い」という点です。この2点についてお伝えしていきたいと思います。

そもそもバリュー投資は効率がよい

 まずは「効率がよい」からお伝えしていきましょう。現在、日本におけるさまざまな投資対象の利回り相当は次のようになっています。

・普通預金・・・・・・0.001%
・10年日本国債・・・・・・0.07%
・J-REIT(予想分配金利回り)・・・・・・3.47%
・日本株(東証1部全銘柄 予想株式益回り)・・・・・・6.18%
出所:普通預金・・・三菱UFJ銀行 2021年6月30日
10年日本国債・・・財務省 2021年6月30日
J-REIT・・・一般社団法人不動産証券化協会 2021年5月末日
日本株・・・日本経済新聞社 2021年6月30日

 J-REIT(ジェイ・リート:国内の不動産投資信託)について少し触れておきましょう。J-REITの予想分配金利回りは、日本株でいうと予想配当金利回りに相当するので、日本株の予想株式益回りと比較するのはフェアではないと思われる方もいるでしょう。そこで、次のように補足をしていきたいと思います。

 J-REITは利益の9割以上を投資家に分配金という形で還元しているので、日本株の予想株式益回りに相当する値(最大値)は、「J-REITの予想分配金利回り÷0.9」で導くことができます。実際に計算してみると、「3.47%÷0.9=3.86%」となります。

 J-REITの利回りをこの3.86%としても、日本株の6.18%はやはり高いといえるでしょう。

 預金は減らないという強みがありますし、一方で、企業の利益は大きく上下し、株価も大きく下落する局面があるので、一概には言えないですが、日本株を対象としたバリュー投資は、この6.18%を活用しているという点が、効率がよい1つの要因になっています。

 さらに、この6.18%は東証一部全銘柄の平均値ですが、バリュー投資においては基本、平均よりも株式益回りが高い銘柄や、低くても成長している銘柄を選定していくので、このことが、より効率のよさにつながってきます。

 当然ながら保証があるわけではありませんが、「なるほど、効率がよさそうだな」と皆さまも感覚的に思われるのではないでしょうか。

企業を調べるほど、人の息吹が感じられるから興味深い

 もう1つの「企業を調べれば調べるほど、人の息吹が感じられて興味深い」という点についてみていきましょう。

 企業は調べれば調べるほど、人の念い(おもい)が動かしていることが感じられます。中小企業においては、特に社長の影響力が大きく、社長が交代することで会社がガラッと変わったりします。

 このため私がまず着目する点は、社長が何を考え、どのように会社を導こうとしているかです。それを調べていった結果、社長の言動に人徳が感じられようものなら、私はその会社を大好きになったりします。

 例をあげてみましょう。

 ある企業は、中期経営計画の中に売上高や利益の目標といった数字が全く出てきません。

 何が書かれているのかというと、全社員が考える集団となるように、現場での業務改善や工夫などの気づきを提案する「ヨクスル」という制度を設けたり、「品質OK?カード」で指摘し合える風土をつくったり、社員同士が「ありがとう」の気持ちを伝えるスマイルカードを展開していたり、全社清掃活動や、読書会、そして人間力研修の話だったり、全体として人間力を高めることが書かれています。

 ここまで徹底されると逆にお見事といえるでしょう。「社員一人ひとりが人間力を高めることで、会社が強くなり、お客様から信頼される。社員も誇りを持てる」という信念が、この会社の根底にあることがひしひしと感じられ、私自身、とても共感できます。

 また、ある企業の社長(現在は会長)は、前の会社にいた50代のときに上場を目指している会社に口説かれ、悩みはしたけれどもそのご縁で会社を移り、無事に上場も果たし、9年後に社長になります。

 関西出身で地元の人たちからの人望も厚く、県人会などの集まりにおいて役員にもなり、「地元を応援したい、盛り上げたい」という地元への貢献の思いから、会社の株主優待に地元の名産品を加えることを考えます。それに対し、他の役員も「それはいいね!」と賛成し、実現。人と人とのつながりの中で生きていることが感じられ、とても感銘を受けます。

 調べれば調べるほど、人の息吹が感じられ、会社を支えているのは「人」であることを改めて思います。その人間模様を見ることはとても楽しいですし、興味を持ち、実際に投資をした企業が成長していくのはとてもうれしいことです。

 一方で、先日、大企業で起こった検査不正問題。残念ではありますが、何回も不祥事を繰り返しているということは、「人として」の部分が欠けていると言わざるを得ないと思います。

 厳しい言い方になりますが、小手先の対策ではなく、人としての教育、人間力を高める根本的な取り組みをしない限り、私は変わらないと思います。

 共感できる企業を応援し、一方で、「人として」に反している企業には厳しく叱咤(しった)激励する。このような視点から投資をする人が増えると、世の中はより良くなっていくのではと思います。

 日本企業も捨てたものではありません。共感できるキラリと光る企業を見つけ、その企業を株主として応援し、企業の成長とともに自らの資産も増えていく。そんな世界を是非つくってみてはいかがでしょうか?