つみたてNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)の口座を開設する人が増加中であることについて、前回の記事で解説しましたが、これに伴って、つみたてNISAに関するご質問をいただく機会も大きく増えました。

 この中で最近、特に目立つのが、対象商品である投資信託に関することです。

 それでは、早速ですが、ここでクイズです。

クイズ金融庁が定義する、つみたてNISA対象商品のスクリーニング(絞り込み)基準に入っていない項目は次のうちどれ?
  1. コスト(販売手数料、信託報酬)
  2. 運用実績(リスクとリターン)
  3. 信託期間

つみたてNISA対象商品の絞り込み基準になっていない項目は?

解答

2.運用実績(リスクとリターン)

 つみたてNISAの対象商品は、一定のスクリーニング基準を満たして金融庁に届け出がなされた、インデックス型、またはアクティブ型の投資信託とETF(上場投資信託)に限定されています。

 そもそも、つみたてNISAは「少額からの長期・積立・分散投資を支援するための非課税制度」(金融庁ウェブサイト)であり、投資初心者をはじめ、幅広い年代の投資家が利用することを想定しているため、商品についても、「長期・積立・分散投資」に適した投資信託がラインアップされています。

 こうした制度設計の背景と、「投資初心者」というキーワードを目にすると、「つみたてNISAでは、(1)リスクが低く、なおかつ(2)過去の実績がよい」投資信託がラインアップされていると思われる方が多いようです。

 ところが、金融庁が設定したつみたてNISA対象商品のスクリーニング基準の中には、運用実績(リスクとリターン)に関する項目は、実は含まれていません。

「つみたてNISA投資対象商品」の概要

出所:金融庁ウェブサイト

 アクティブ型は上記の図の概要に加えて、次の条件もありますが、やはり運用実績に関する項目は明確には設けられていません。

  • 純資産総額が50億円以上であること
  • 設定以降5年以上経過していること
  • 運用期間中の3分の2以上の期間で資金流入していること

 アクティブ型のラインアップに入っているからといって、必ずしもインデックスを上回るリターン(超過リターン)をあげられているとは限らない、という点には留意する必要があります。

 もちろん、過去の運用実績は未来を予測するものではないので、金融庁のスクリーニング項目が間違っていると申し上げるつもりはありません。

 しかし、「つみたてNISAの対象商品だから、十分な実績があってリスクも低いのだろう」と早合点してしまうのは少々危険です。

なぜ?つみたてNISAにインデックスファンドが多い理由

 前述した通り、つみたてNISAという制度の最大のポイントは、「長期・積立・分散投資」です。20年という年月をかけて、コツコツ積み立てができるという前提のもとで商品選定の条件が決まっています。

 インデックスファンドの本数が多いのは、ファンドそのもののリスクが低いからではなく、あくまでも長期積立投資と相性がよいからです。同様にアクティブファンドも、過去の運用実績というよりは、今後20年超という長い期間にわたって運用を継続できるかという、持続性の面が重視されています。

数年以内に使う予定の資金は?つみたてNISA商品の選び方

 以上を踏まえると、例えば、向こう数年以内に使いみちが決まっているような資金を、つみたてNISA対象商品(一部のバランス型を除く)で運用することは、あまりおすすめできません。

 特にインデックス型の場合、運用成績が完全に市場環境に左右されることから、資金化のタイミングで十分なリターンをあげられていないという事態も起こり得るのです。

 では、数年以内に確実に使うことが分かっている資金は、つみたてNISAで運用できないのでしょうか。

 この場合は、楽天証券ファンドセレクションで選出している「たわらノーロード 最適化バランス(安定成長型)」のような、安定運用を目指すバランス型を選んだ方がよいでしょう。

株式市場が右肩上がりでも、大きな下落もある可能性に留意

 つみたてNISAの制度が始まった2018年1月以降、世界の株式市場は、米国を中心に総じて右肩上がりで推移しており、「思うようなリターンが出ない」という状況はなかなか想像ができないかもしれません。

 しかし、今後10年単位の長期投資を続けていく上では、株式市場の大きな下落だけでなく、停滞期に直面する可能性もあるということを覚えておいてください。

 繰り返しになりますが、つみたてNISAは、時間をかけてコツコツと続けていくことを前提とした制度です。個々の投資信託について詳細まで理解することよりも、まずは制度のねらいと、正しい商品との付き合い方を把握し、ミスマッチを防ぐことが大切です。