日経平均のチャートは悪化。株価はレンジ内にとどまる

 先週末7月2日(金)の日経平均は2万8,783円で取引を終えました。前週末終値(2万9,066円)からは283円安、週足ベースでは4週ぶりの下落に転じています。

 今週は「アフター米雇用統計」で相場が始まりますが、一足先にその結果を受けた先週末の米国株市場は、3つの株価指数(NYダウ平均株価、S&P500、NASDAQ)がそろって最高値を更新する初期反応を見せています。

 日本株もその流れに乗って上値を目指したいところですが、最近は、米株市場の上昇についていけない場面が増えている印象です。

 まずは、そのあたりを確認していきます。

■(図1)日経平均(日足)とMACD(2021年7月2日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 あらためて、先週の日経平均の値動きを振り返ると、週を通じてジリ安傾向が続き、週末に下げ止まる展開となりました。ローソク足も陰線が並び、ようやく最後に陽線が出現した格好です。

 冒頭でも触れたように、週間の下げ幅自体はすごく大きいというわけではないのですが、2万9,000円台や75日・25日・5日の3本の移動平均線といった節目を下回ってしまいました。下段のMACDも再びシグナルを下抜けていて、チャートの形は悪くなっています。

 とはいえ、これまでのレポートでも指摘してきたように、5月終盤からのレンジ相場の範囲内での株価推移にとどまっているため、今のところは新しい相場に向けた兆候もなさそうです。

TOPIXもさえない展開。チャートの形は日経平均より良好

 次にTOPIX(東証株価指数)についても見ていきます。

■(図2)TOPIX(日足)のギャンアングルとMACD(2021年7月2日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 先週のTOPIXもさえない展開となっていましたが、75日移動平均線が株価のサポートとなっているほか、週末の上昇で25日移動平均線を回復しています。下段のMACDが下向きを継続していることは気掛かりですが、チャートの形状は日経平均よりも良い状況といえます。

 また、株価の動きをギャンアングルで捉えても、4×1ラインと8×1ラインとのあいだで方向感を探っているようにも見えます。

米国株市場は雇用統計を受け、3指数そろって最高値更新

 その一方で、上昇基調が続いていたのが米国株市場です。

■(図3)米NYダウ(日足)とMACD(2021年7月2日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 先週のNYダウは25日移動平均線を意識したもみ合いから、週末にかけて上昇を加速させ、週末7月2日(金)の取引では、終値ベースでの最高値を更新してきました。下段のMACDもシグナルや「0ドル」ラインを上抜けており、上方向への意識を強めているように見えます。

■(図4)米S&P500(日足)とMACD(2021年7月2日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 S&P500については、7営業日連続で最高値更新が続いています。ローソク足の並びもジリ高から週末にかけて上昇に勢いが出始めているようにも見えます。

 また、最近のS&P500は、5日移動平均線が下向きになった時に、株価が25日移動平均線の攻防まで調整することが多いことは、一応認識しておく必要がありそうです。

■(図5)米NASDAQ(日足)とMACD(2021年7月2日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 NASDAQは直近高値を超えたあたりから上昇に勢いが出始め、足元ではS&P500のように連日ではありませんが、最高値を更新する場面が増えています。下段のMACDも順調に右肩上がりを描いています。

 それぞれの米株指数を日足チャートでみた場合、米株市場には死角がないようにも見えますが、あえて言えば、週末の一段高の強さがポイントかもしれません。

 米雇用統計を受けて、3指数がそろって最高値を更新したことは先ほども述べた通りですが、最近の米株市場は、例えば、NYダウが上昇する一方でNASDAQが下落するといった具合に、米金利や景況感の動向に合わせて、景気敏感銘柄をはじめとするバリュー株とIT・ハイテク銘柄を中心とするグロース株とのあいだを交互に売り買いしながら株価水準を保ってきました。

 それが、先週末にそろって上昇したことで、米株市場が新たな上昇局面に入った可能性がある一方、「いいところ取り」で楽観ムードが強まっているだけの可能性もあり、どちらなのかを見極めていくことになりそうです。

 仮に後者だった場合、そのかみ合わせがズレた際に、大きな調整局面が訪れる展開も有り得ますが、足元では、決算シーズンが近いことによる業績期待と、米金利市場や為替市場の落ち着きが共存している環境でもあるため、米株市場は利益確定売りなどをこなしつつ、株価の上昇基調が続くかもしれません。

今週株価が下落した場合は押し目買いの好機?

 ここで気になるのは、こうした米株市場の流れについていけない日本株の動きです。

 基本的には、国内ワクチン接種進展による日本株の出遅れ修正や、企業業績という相場の視点自体は大きく崩れているわけではなく、引き続き、ワクチン供給や感染状況などをにらみながら動く相場地合いなのですが、ここにきてワクチンの供給が滞りがちになっていることや、五輪開催までカウントダウンとなった現段階において、変異型ウイルスの感染が拡大していること、4日(日)が投開票日の東京都議会選挙の結果待ちなどもあり、買いが入りづらかったと考えられます。

 さらに、株価指数連動型ETF(上場投資信託)の決算が今週多く予定されていることが警戒されているという見方もあるようです。

■(図6)今週決算を迎える主な指数連動型ETF

出所:MARKETSPEEDⅡデータおよびJPXのウェブサイトを元に筆者作成

 上の図6は、今週に決算を迎える、日経平均とTOPIXに連動するETFの決算予定の一覧です。確かに8日(木)と10(土)に集中していることが分かります。ETF決算の何が警戒されているかというと、決算日が分配金支払いの基準日でもあるからです。

 つまり、分配金の支払い原資をつくるために、8日(木)と9日(金)に換金売りが出やすいと考えられています(10日[土]決算の銘柄は前日の9日[金]に売りが出てくると思われます)。この両日で約8,300億円の売りが出てくるとも報じられています。

 実は、指数連動型ETFの分配金総額は増加傾向にあり、具体的には、2018年が4,850億円、2019年が約6,300億円、2020年が約7,200億円、そして今回の約8,300億円と、ここ数年で倍近く増えており、市場に与える影響も大きくなっています。

 しかも、今週末はオプション・mini先物取引のSQ日というタイミングでもあり、注意が必要です。

 逆を言えば、こうした需給要因から解放される来週以降は買いが入りやすくなると考えることもできますので、今週株価が下落した場合には押し目買いの好機となるかもしれません。