株式市場で先週起こったことをお伝えし、今週起きる出来事から株価の行方を占う週刊トピックス。今週6月第4週(21~27日)は波乱の展開になりそうです。

米国の金融政策変更で市場が急変動。日本株も急落!

 先週の市場を大きく揺るがしたのは米国の金融政策を決める会議FOMC(米連邦公開市場委員会)でした。

 米国ではコロナで落ち込んだ景気対策のために「ゼロ金利」が続いていますが、6月16日(日本時間では17日未明3時)の会議終了後、これまで2024年以降としてきた「利上げ開始の時期」について、2023年末までに2回行う見通しが示唆されたのです。

 このニュースを受け、為替では米国の通貨ドルが1ドル110円台後半まで上昇するなど、ドル高が加速。インフレ(物価上昇)期待で上昇していた銅などの商品価格は急落しました。

 株式市場では、米国のニューヨーク・ダウ平均株価が5日間、ずっと下落を続け、1週間で3.5%安と今年最大の下落率を記録。

 日経平均株価も16日終値の2万9,291円から18日終値2万8,964円まで327円下落。18日金曜日の夜間に取引された日経平均株価の先物市場でさらに500円以上下がったこともあり、今週も大きく急落して始まりそうです。

 株式市場は景気や企業業績を表す鏡といわれていますが、それ以上に大きな影響力があるのが米国の中央銀行FRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策です。

 いわば「世界に流れるお金の蛇口」をコントロールしているのがFRBですが、米国ではワクチン接種による経済再開が続くことで、物価の上昇が加速しています。

 今回のFOMCでは、このインフレを防ぐために利上げ時期の前倒しがほのめかされたわけです。

 2023年に2度の利上げを行うためには、まず、これまでFRBが続けてきた「量的金融緩和策」を縮小する必要があります。

「量的緩和策」とは、中央銀行が市場で取引される国債などの債券を大量購入することで、世の中にお金を広く行き渡らせ、景気を刺激しようという政策です。

 現在、FRBは毎月1,200億ドル(約13兆円)もの債券を購入していますが、その金額をゼロまで引き下げる「テーパリング(量的緩和策の資産買い入れ額を徐々に減らしていくこと)」が2022年早々にも始まる、という観測が相場急変動の原因になりました。

緊急事態宣言の解除の行方は⁉過去2回は株価上昇

 一方、日本国内では、6月20日(日)をもって、沖縄県を除く9都道府県に発令されていた緊急事態宣言が解除されました。

 これまで合計3回発令された緊急事態宣言ですが、2020年4月7日開始の第1回目が解除されたのは昨年5月21~25日。日経平均株価はその後、5月22日から6月4日にかけて2,500円以上、上昇しました。

 第2回目は今年1月8日に発令され、2度の延長を経て、3月21日に解除されましたが、解除後の3月22日から4月5日にかけて640円上昇しています。

 反応は鈍くなっていますが、解除後には上昇する傾向が強いので、今回も少しは期待できそうです。

 しかし、解除後に再び感染者が増加する状況が繰り返されており、特に今回は海外から多数のアスリートが訪れる東京五輪も控えています。

 ワクチン接種の拡大で、国内の感染者数が明らかに減少に転じる兆候が出るまでは、コロナ禍で打撃を受けている外食、百貨店、運輸、旅行、ホテルといった業界の株が大きく上昇するのは望み薄かもしれません。

今後の米国市場の動きは?

 米国市場では、FRBの金融政策の変更見通しで、景気循環株や銀行株、資源株が下がる一方で、成長期待の高いIT企業が多数上場するナスダック市場は底堅く推移しました。

 FRBがこれまでより早くテーパリングや利上げを始めることで、経済は低成長になるという思惑から、成長期待の高いハイテク株へ資金シフトが起こったのです。

 このように、すべてのタイプの株が一斉に売られているわけではないことから、今週初めの市場の混乱はそれほど長引かないかもしれません。

 6月25日(金)には米国の5月の個人支出が発表され、個人消費の物価動向を示す「PCEデフレーター」も示されます。この指標はFRBがインフレを測るものさしとしてとても重要視している指標です。「インフレ→金融引き締め」が市場の一大関心事になっていることもあり、注目されそうです。