昨今では世界的に「企業統治方針(コーポレート・ガバナンス・コード)」への取り組み強化の動きが広がり、株主をはじめとする幅広いステークホルダーとの良好な関係構築を通して企業価値を向上させるという難度の高い経営手腕が必要とされています。

 そこで、今回はダイナミックな経営ビジョンかつ、強い指導力で起業したビジネスを飛躍的に成長させるカリスマ経営者がけん引するオーナー企業を投資ユニバースとするETF「BOSS(Global X Founder-Run Companies ETF)」を分析対象としてその投資環境及び、今後長期にわたって持続的な企業価値の拡大が期待される優良銘柄をご紹介致します。

 まず、「BOSS」はオーナー経営者が自ら率いる米国上場企業を投資対象とするETFとして、コロナ禍の景気回復局面において、米主要株価3指数をしのぐリターンを見せています。

【ベンチマーク:Solactive U.S. Founder-Run Companies Index】

投資対象:米国取引所に上場するオーナー経営企業のうち、時価総額上位100銘柄
構成銘柄数:100銘柄(均等加重平均)
構成銘柄の見直し:リバランス年1回(5月)/ *レビュー(2.8.11月)
算出開始日:2010年5月14日の終値を1,000を基準とする
*「創業者兼経営者」のステータスを満たしているか判断
出所:Solactive AG「Solactive U.S. Founder-Run Companies Index」を基に筆者作成

 次に「BOSS」ではオーナー経営企業のメリットを「3つの特徴」に分類しており、カリスマ性を備えた創業者兼CEOらが率いる革新的な企業への幅広い投資機会を可能にする事で、長期的に伝統的な株式インデックスを上回るリターンの源泉としています。

特徴     概要
創業者兼CEO オーナー経営企業に投資する事で、会社の成功から恩恵を受ける投資家と
経営者の利益が一致しやすい点
超過リターンα 創業者は、自分が率いる企業と結びついた多額の個人資産を持っているため、
イノベーションと起業家精神による長期的な価値創造を重視する傾向にある点
分散投資 創業者が経営する上場米国株式の幅広い投資ユニバースへのアクセスが可能な点
出所:Global X「Factsheet」を基に筆者作成

 そこで、世界の時価総額ランキングで上位数社を見ると創業者が長らく経営の最前線で活躍しており、米アップルやマイクロソフトのようにカリスマ経営者の退任後も彼らの企業理念やビジョンが後継者に受け継がれている事で、持続的に企業価値を向上させています。

Founder Company Market Cap($ Billion) Since Foundation
ラリー・ペイジ Google 1,623 23年
スティーブ・ジョブス Apple 2,101 44年
マーク・ザッカーバーグ Facebook 937 17年
ジェフ・ベゾス Amazon 1,617 27年
ビル・ゲイツ Microsoft 1,889 46年
李彦宏(ロビン・リー) Baidu 65 21年
馬雲(ジャック・マー) Alibaba 595 22年
馬化騰(ポニー・マー) Tencent 773 23年
出所:各社HP、yahoofinance.comを基に筆者作成

 実際に「BOSS」のリターンは、特にコロナショック以降の景気回復局面で力強い反発を見せており、株価は今年2月に過去最高値を更新して以来、高値圏の推移が続いています。

Performance as of June 1, 2021

  YTD 1 Year Return 3 Year Return
BOSS 9.68% 51.16% 77.88%
SPY 12.61% 39.55% 63.71%
出所:etfdb.com「Performance」を基に筆者作成

 また「BOSS」の業種別構成銘柄では、代表的なディフェンシブセクターの「コミュニケーション」、「金融」、「ヘルスケア」といった私達の生活に欠かすことのできないインフラを担う業種が上位を占めており、近年のAIの発達を背景に「IoT」、「フィンテック」や「ゲノム編集」といった最先端技術の恩恵を受けやすいセクターと言えます。

出所:Global X「Founder-Run Companies ETF」を基に筆者作成

 では、「BOSS」において構成比率の上位10銘柄を対象に、直近1年間で株価リターンが最も優れた優秀銘柄をご紹介致します。

        5-Year Average
Growth Rate
TTM As of May 31,2021
  Ticker Industry Market Cap ($) Revenue FCFM Trailing Return
(1-year)
1 TSLA Auto Manufacturers 582.93B 50.78% 6.69% 243.21%
2 PTON Leisure 32.91B *102.90% 10.54% 161.46%
3 FDX Integrated Freight & Logistics 83.53B 7.84% 4.88% 143.11%
4 COF Credit Services 72.59B 4.28% 43.79% 137.77%
5 STLD Steel 13.19B 21.49% 62.07% 118.86%
6 WLK Specialty Chemicals 12.93B 10.95% 12.60% 113.73%
7 TWTR Internet Content & Information 46.29B 10.87% 5.18% 87.28%
8 ZM Telecom Services 97.62B *159.64% 52.25% 84.72%
9 NVDA Semiconductors 404.81B 27.19% 28.65% 83.21%
10 BLK Asset Management 133.77B 7.29% 23.19% 68.75%
出所:morningstar.com「Key Ratios」を基に作成
*FCFM:フリーキャッシュフロー・マージン
*3-Year Average Growth Rate

テスラ

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 EV世界最大手の同社(NASDAQ:TSLA)を率いるイーロン・マスク氏は世界でも類まれな起業家として、これまでに電子決済大手のペイパル、宇宙開発ベンチャーのスペースXなどの設立及び、5つの企業の現役経営陣として活躍する一方で、ツイッター上でのコメントで仮想通貨ビットコインの乱高下を引き起こす等、同氏の一挙手一投足は市場関係者からも注視されています。

 2020年通期にはEV世界販売台数が前年比36%増の49万9,647台と当初目標の50万台をほぼ達成しており、特に主力小型車「モデル3」と小型多目的スポーツ車「モデルY」の2車種が納車数の約9割を占める中、現在建設中の独ベルリン及び米テキサスのギガファクトリー稼働により「モデル3/Y」だけで、近年中に生産容量が100万台を超える見通しです。

 実際に、主要な製造拠点の米フリーモントに加え、昨年1月に稼働した上海工場を中心に、主力4車種を製造しており、特に同社がプレミアムセダンと位置づける「モデル3」は競合社のBMW「3 Series」やメルセデス「E-Class」の販売台数をしのぐ売れ行きを見せており、2017年の導入以降の徹底的な生産コストの引下げに注力した結果、足元の販売価格を当初の約55%カットした低価格で提供と、大衆向けのEVブランドとして定着しつつあります。

 直近の第1Q決算では、売上高が前年同期比74%増かつ、純利益が同27倍強で7四半期連続の最終黒字を確保しており、2021年より上海工場から出荷を開始した新型SUVの「モデルY」の販売が好調で、中国のEV販売台数は前年同期比3.7倍の約6万9,000台となり、米国販売台数とほぼ同水準にまで拡大する一方で、将来的には「オートパイロット(FSD)」の機能向上により自動運転タクシー配車サービスといった高収益事業の商用化が期待されています。

ペロトン・インタラクティブ

1年チャート

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 2012年創業の同社(NASDAQ:PTON)はフィットネスバイク等の家庭用トレーニング機器といった健康器具の販売に加えて、動画コンテンツの配信で継続的な課金収入を得る事業モデルから「フィットネス界のネットフリックス」の異名を持ち、2020年3月末時点での登録会員数は540万人にも及び、インタラクティブ型フィットネスにおいて業界最大級のプラットフォーマーです。

 特に、ワークアウトで使用する音楽へのこだわりが強く、米著名アーティストのビヨンセとコラボしたオリジナルテーマのヨガやブートキャンプのクラスは四半期で100万回以上開催され、またソニーミュージックといった大手音楽スタジオと提携して、メンバー専用のリミックスを開発する等、独自コンテンツを差別化の重要戦略と位置付けています。

 主な事業セグメントには、売上げ全体の8割超を稼ぐ「Connected Fitness」を中心に、「Peloton Bike」等の自宅用フィットネス機器や各種プログラムの提供を行う他、オンラインでインストラクターの指導が受けられるサブスクリプション(継続課金型)サービスの登録者数が1-3月期に前年同期比135%増かつ、初めて200万人を突破と急成長を見せています。

 直近の第3Q決算では、売上高が前年同期比141%増で7四半期増収達成と特に、コロナ禍の自宅エクササイズの需要拡大を背景に、オンラインの継続課金型契約者数が同5倍超に急増した事で、サブスクリプション部門の粗利益率が約64%へ改善する一方で、主に研開発費用がかさみ、営業費用が同51%増と採算悪化から4四半期ぶりの最終赤字を計上しています。

 足元ではフィットネス機器生産で40年以上の歴史を持つ米プリコー社の買収を昨年末に発表しており、国内の生産体制の強化と共に、同社の主力取引先であるフィットネス業界にまで顧客層の拡大が見込まれる一方で、今年後半には海外拠点として、欧州に次いで、アジア初の豪州でのサービス開始と今後のブランド力向上が期待されています。

フェデックス

1年チャート

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 今や物流大手として220カ国以上に輸送サービスを手掛ける同社(NYSE:FDX)は、1965年当時まだイエール大の学生だったフレデリック・スミス氏(現CEO)の薬品、コンピューター部品、電子機器といった時間的制約のある配達ニーズをより効率化する航空輸送システムについて書かれたレポートが後の主力事業となる「FedEx Express」誕生のきっかけとなり、翌日配達をはじめとする半世紀に及ぶ物流事業は業界のパイオニア的存在と言えます。

 主要事業には売上げ全体の50%を稼ぐ航空輸送の「FedEx Express」を筆頭に、陸上輸送の「FedEx Ground」、小口貨物の「FedEx Freight」、バックオフィス業務の「FedEx Services」、サプライチェーン管理等の「Other and Eliminations」の5部門構成であり、世界650拠点の空路といった巨大な物流基盤を軸に、足元では米食品医薬品局(FDA)が緊急使用を許可した新型コロナワクチンの北米及び、海外20カ国への配送も担っています。

 また、近年の世界的な電子商取引(EC)の普及を背景に、2015年にはオランダの同業大手で小口輸送に強いTNTエクスプレスの買収を発表しており、欧州だけでなく中東やアジアを含めた広域でより早く配送するサービス体制を構築する事で、業界首位のドイツポストや2位の米UPSを追い上げ、物流大手3強体制の一角としての競争優位性を高めています。

 直近の2021年第3Q決算では、売上高が前年同期比23%増、純利益は2.8倍とコロナ禍の巣ごもり消費で通販注文の配送が急増した事で、陸上輸送部門の1日あたりの平均貨物量は25%増とグローバルな配送網の強さとEコマースの普及が追い風となる中、配送コスト等の上昇分を吸収して、営業キャッシュフローは同2.2倍と収益基盤を強固にしつつあります。

転載元:モトリーフール

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