※本記事は2020年8月8日に公開したものです。
買い時の何倍も難しい「売り時」の見極め
株式投資では買い時の見極めより売り時の見極めの方が何倍も難しいといわれています。筆者も、売り時を捉えることは非常に難しいとつくづく感じます。
そこで今回と次回は、売り時のタイミングやその見極め方などについて、筆者が実践していることも踏まえながらお話したいと思います。
利益を確定する際の売り時は突き詰めて考えれば「上昇トレンドの途中で売る」か「上昇トレンドの終了を確認してから売る」かの2つに大別できます。そこで、今回は「上昇途中で売る」「上昇トレンド終了後に売る」の2つの方法についてメリットや注意点を考えていきます。
短期売買なら過熱感が高まったら上昇途中でも売る
上昇トレンド途中で売るという方法は、どちらかといえば短期売買の場合により有効なものです。
短期売買では、利益の確保が最重要課題です。「まだまだ上がる」と欲をかいて持ち続けた結果、逆に利益を大きく減らしたり損失が生じてしまっては元も子もありません。したがって、個別銘柄の株価や相場全体に過熱感が生じてきたら上昇途中であっても売却して利益を確保する、という考え方です。
特に新興市場銘柄をはじめ値動きの激しい銘柄は、調子良く株価が上昇していたかと思えばある日ある時突然急落し、2~3日で株価が30%、50%も下落してしまうことも決して珍しくありません。そうなる前に、確実に利益を確保しておくことが重要です。
個別銘柄や相場全体の過熱感はどうやって把握する?
個別銘柄の過熱感をみるには、例えば25日移動平均線からの株価の乖離(かいり)率を参考にします。注意したいのは、銘柄によってどのくらい乖離したら過熱状態といえるかが異なるという点です。
東証1部上場の大型株であれば30%上方に乖離したら買われすぎ、といえますが、小型株や新興市場銘柄などは平気で100%以上乖離することもあります。銘柄ごとの特徴を見極めるために、過去の株価や移動平均線の動きを株価チャートでチェックし、乖離率がどの程度まで達したら株価が反落・調整する傾向にあるのかを確認しておくとよいでしょう。
相場全体の過熱感をはかるには、「騰落レシオ」や「信用評価損益率」、さらには日経平均株価の25日移動平均線からの乖離率などを用います。日経平均株価の25日移動平均線からの上方乖離率が10%に近づいたら要注意といえます。
中長期投資なら上昇トレンド終了後に売ってできるだけ利をのばす
上昇トレンドの終了を確認した時点で売るという方法は、どちらかといえば中長期投資の場合により有効です。短期売買は大きな利益を狙うというよりは少ない値幅であれ利益自体を1回1回しっかりと確保する、というスタイルですが、中長期投資はトレンドが続く限り保有し続けて大きな値幅を取る、というスタイルだからです。
中長期投資では、上昇トレンドの継続途中で売ってしまうと、その後のさらなる大きな上昇があったときにせっかくの大きな利益を得るチャンスを逃してしまいかねません。
実践上も、短期的に多少過熱感が生じたとしても、長い目で見ればその後再び上昇をはじめ、最終的に大きく上昇することもよくあります。
上昇トレンド終了はどうやって把握するか?
上昇トレンドの終了の可能性を探るためには、移動平均線の向きや、移動平均線と株価の関係を用います。たとえば上向きだった移動平均線が下向きに転じたり、株価が移動平均線を割り込んだ場合は上昇トレンド終了の可能性が高まりますから、そこで持ち株を売却することとなります。対象とする移動平均線は、筆者であれば日足チャートには25日、週足なら13週、月足では12カ月のものを使います。
数カ月程度の中期投資であれば日足チャート+25日移動平均線や週足チャート+13週移動平均線で判断すればよいですが、長期投資なら月足チャート+12カ月移動平均線を使って、長期的な上昇トレンドが終わるまでは持ち続けるのもよいでしょう。
結論:短期売買は利益確保を最優先・中長期投資はできるだけ利を伸ばす
以上から、短期売買の場合は上昇途中でも特に過熱感が高まったなら利益確保を優先して売っておく、中長期投資の場合はできるだけ利を伸ばすために上昇トレンドが続く限り持ち続け、上昇トレンドが終了したと思われる時点で売る、というのが筆者としての結論です。
ただし株価上昇のスピードが急速な場合、上昇トレンド終了の可能性が高いサイン(移動平均線の下向き転換や株価の移動平均線割れ)を待ってから売ると、せっかくの利益が大きく減少してしまう恐れもあります。中長期投資であっても、短期間に株価が大きく上昇したようなときには、上昇途中であっても持ち株の一部は利益確定売りを実行しておくべきでしょう。
移動平均線や移動平均線と株価の位置関係から売り時を探る方法は、詳しくは拙著「株を買うなら最低限知っておきたい 株価チャートの教科書」(ダイヤモンド社)をご覧ください。
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