※モトリーフール米国本社、2021年5月24日投稿記事より
S&P500指数が2020年3月23日の底値から88%という驚異的な上昇率を見せ(執筆時点)、最高値更新を繰り返す中、優れた運用マネジャーは積極的に投資を続けています。
大手資産運用会社が四半期ごとに米証券取引委員会(SEC)に提出するフォーム13F(保有銘柄報告書)を見ると、ウォール街の優秀な頭脳が第1四半期にどのような判断をしたかが分かります。
以下では、大手資産運用会社5社が第1四半期に購入した銘柄を紹介します。
バイキング・グローバル:バンク・オブ・アメリカ
バイキング・グローバルは、大手銀行バンク・オブ・アメリカ(BofA)(NYSE:BAC)への投資を開始し、第1四半期だけで3,130万株超(約12億1,000万ドル相当)を購入しました。
購入の理由を一言で言うと、大手銀行の中で最も金利感応度が高いからです。
米連邦準備制度理事会(FRB)は早期の利上げに消極的ですが、金利の上昇は不可避とみられ、そうなればBofAの金利収入は大手銀行の中で最も大きく押し上げられる見通しです。
イールドカーブのスティープ化は米国経済が上向いていることを示唆し、銀行にとっても好材料です。
BofAは優れたコスト管理により利益率が改善していることに加え、オンライン/モバイルバンキングに積極的に投資しており、支店の統合や非金利費用の削減を実現しています。
タイガー・グローバル・マネジメント:マイクロソフト
タイガー・グローバル・マネジメントは第1四半期にマイクロソフト(NASDAQ:MSFT)株180万株超を買い増し、保有株数は1,372万株(約32億4,000万ドル相当)となりました。
マイクロソフトのアジュールは急成長が続いており、こういったクラウド分野でのイノベーションが同銘柄の選好理由と見られます。
Windows、Dynamics、Office 365といったほぼ全ての主力製品にクラウドが関係し、同社は2桁の増収率を維持しています。
また、マイクロソフトの営業キャッシュフローは群を抜いており、同社は上場企業の中でAAAの最高格付けを得ている2社のうちの1社です。
つまり、格付け機関はマイクロソフトを、AA格付けを付与されている米国政府よりも債務返済能力が高いとみているのです。
保有現金(1,250億ドル)と実績12カ月営業キャッシュフロー(727億ドル)があれば、他社買収を続けることも可能です。
サード・ポイント:ウーバー・テクノロジーズ
サード・ポイントは、配車サービス大手ウーバー・テクノロジーズ(NYSE:UBER)への投資を開始し、第1四半期に675万株(3億6,800万ドル相当)を購入しました。
2020年は新型コロナウイルスのパンデミックによる外出自粛で需要が落ち込みましたが、コロナ禍の収束とワクチンの普及に伴って先進諸国では需要の急反発が予想されます。
一方で、同社は優位性の低下が懸念されており、調査会社セカンド・メジャーによれば、米国の配車サービス市場におけるウーバーのシェアは2017年1月の82%から2021年4月には68%に低下しています。
さらに、フードデリバリー事業のウーバー・イーツは依然として大幅な赤字です。
昨年12月には同業のポストメイツを買収して同事業の強化を図っていますが、フードデリバリー業界は競争が激しく、生き残れる保証もありません。
そのため、サード・ポイントによるウーバーへの投資には疑問も残ります。
ツーシグマ・インベストメンツ:ファイザー
ツーシグマ・インベストメンツは、第1四半期に製薬大手ファイザー(NYSE:PFE)の株式708万株(2億5,650万ドル相当)を購入しました。
ビオンテックとの共同による新型コロナウイルスワクチン開発に成功し、米国市場で緊急使用許可が認められた3社のうちの1社です。
同社は第1四半期決算発表の中で、新型コロナウイルスワクチンの2021年の売上高が260億ドルに上るとの見通しを明らかにしました。
同ワクチン以外でも年間445億~465億ドルの売上高が予想されています。
例えば、ファイザーはがんや希少疾病の分野の治療薬でトップクラスの企業であり、がん分野の売上高は第1四半期に前年同期から18%増、希少疾病分野は同29%増でした。
希少疾病治療薬に関しては競合が少なく、薬価への押し下げ圧力はほとんどありません。
2021年予想株価収益率(PER)は11倍未満と(執筆時点)、バリュエーションも魅力的です。
バークシャー・ハサウェイ:クローガー
最後はウォーレン・バフェット氏率いるバークシャー・ハサウェイ(NYSE:BRK.A)(NYSE:BRK.B)です。
同社は第1四半期にスーパーマーケットチェーンのクローガー(NYSE:KR)株を1,753万株買い増し、保有株数は5,106万株となりました(発行済株式の6.71%)。
バフェット氏は以前から、クローガーをそれほど選好していないと公言しているため、今回の投資判断を下したのは同氏の参謀を務めるトッド・コームズ氏かテッド・ウェシュラー氏と考えられます。
購入した理由として考えられるのは、食料品などの生活必需品を取り扱っていることで、少なくとも今のところはインフレも大きな問題にはなっていないようです。
また、デジタル、オンライン、オムニチャネルに焦点を当てた成長戦略「リストック・クローガー」にも期待が寄せられています。
低成長と低い利益率という特性を持つスーパーマーケット業界において、同社は2020年に14%の増収を達成しました。
2%の配当利回りもあり(執筆時点)、安全性では申し分のない銘柄ですが、2020年の好業績の後でさらなる成長を実現できるかどうかは不透明です。
転載元:モトリーフール
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