1万円といえば、買い物や外食を1度我慢すれば、なんとか投資できる金額です。1万円あれば、複数の投資信託に分散投資したり、1株から買える米国株の場合、個別の企業に投資することも可能です。投資家として、試運転を始めるにはぴったりの金額といえるでしょう。

「習うより慣れろ」ということわざもあるように、投資で成功するために必要なのは何より経験です。「1万円で投資体験を買う」つもりで楽しみましょう。

 ブログ、Twitterで有名な、実績豊富な個人投資家6人に「1万円で投資するならこれ!」という銘柄を聞きました。

井上はじめさんが選ぶ、1万円ポートフォリオ

井上はじめさんのプロフィール:2007年、手取り月収20万円以下だった新入社員時代から月々10万円を世界経済に連動するインデックスファンドに全力で積み立て投資して大成功。2013年からはその利益の一部で不動産投資なども行い、33歳の若さで資産1億円を達成しました。「自分は投資家ではなく節約家」がモットー。

 ブログは「33歳で手取り22万円の僕が1億円を貯められた理由」。同名の著書(新潮社)を昨年発売しました。

銘柄名 商品の種類 割合
世界経済に連動するインデックスファンド インデックスファンド 100%

●この銘柄を選んだ理由

 1,000円、1万円、3万円、10万円まで、すべて同じ「世界経済に連動するインデックスファンドに100%」というポートフォリオを選びました。具体的には全世界株式に連動するインデックスファンドですが、全世界の株式に投資できていれば、その他の金融商品でポートフォリオを組む必要がなく、1つのファンドだけで究極の分散投資ができている理想的な状態だと思うからです。

 米国株オンリーや個別株投資に比べると、世界中に広く分散投資しているのでお金の増え方はゆっくりかもしれませんが、少額で始める投資初心者の方にとって一番大切なのは、始めたばかりの最初の投資では失敗しないこと!

 僕の中では、「全世界に分散されたインデックスファンドに毎月積み立て投資することが、最も失敗する確率が低い」と思っているので、どの金額で行う場合も(たとえ1,000万円でも)、「世界経済に連動するインデックスファンドで100%」を選定します。(井上はじめさん)

●この銘柄の売り時はいつ?

 上記に書いた通り、数年単位で見て上昇相場のときは損益がプラス20%で売却、数年から10年単位で見て下降相場のときは絶対に売却せず、損益がプラス100%以上になったら売却と考えています。売却するタイミングが来たら、そこで1度、成功体験をしっかり身につけた上で、売却後に積み立て投資を再開しながら、他の金融商品への投資についても考えていくのがいいと思います。(井上はじめさん)

>>月10万円の全力投信積み立てで資産1億円!―井上はじめさんに聞く少額投資術

さぶさんが選ぶ、1万円ポートフォリオ

さぶさんのプロフィール:ブログ「元証券ウーマンのお財布事情。」で、子育て世代に向けたお金についての情報を発信。子供の教育資金を児童手当の全額貯金などで貯める仕組みづくりなどを紹介しています。

 節約・ポイ活や料理法・レシピなどを紹介したインスタグラムは23万人のフォロワーから支持を受け、書籍『元証券ウーマンの一生使えるお金の話 貯金ゼロから「貯め体質」』(KADOKAWA)を昨年秋に発刊しました。

商品名 投資先 割合
アッヴィ(ABBV) 米国株式 65%
グラクソ・スミスクライン(GSK) 米国株式 35%

●この銘柄を選んだ理由

 1株からでも買える米国株に魅力を感じています。先進国の高齢化が進む中、生きるために必要な医薬品を提供している企業は配当も高く、今後も成長が見込めると考えています。

 アッヴィ(ABBV)は米国のバイオ医薬品メーカーで、リウマチ薬などが有名。将来性と配当の高さが魅力です。グラクソ・スミスクライン(GSK)は世界的な製薬会社で、日本でも市販のかぜ薬「コンタック」が有名です。こちらは高配当に加え、安定性で選びました。(さぶさん)

●この銘柄の売り時はいつ?

 ともに保有を続けますが、株価が1.5倍ぐらいになるタイミングがあれば利益確定してもいいと思います。(さぶさん)

>>元証券ウーマンが教える、安心して保有できる銘柄の選び方―さぶさんに聞く少額投資術

もみあげさんが選ぶ、1万円ポートフォリオ

もみあげさんのプロフィール:2018年9月に元手1,400万円で米国株投資を開始し、2021年3月時点で3倍の4,200万円まで増やしたもみあげさん。日系企業の駐在員として米国現地から米国株のリアルタイム情報を誰よりも早くTwitter(@momiage0088)で配信。

 たった2年余りでフォロワー数は10万人を超え、米国株投資のシンボル的存在に。ブログ「もみあげの米国株投資」や著書『もみあげ流米国株投資講座』(ソーテック社)も注目されています。

商品名 商品の種類 投資先 割合
楽天・全米株式インデックス・ファンド インデックスファンド 米国株式 100%

●この銘柄を選んだ理由

 1,000円から3万円までの少額投資なら、積み立て感覚で、つみたてNISAに全額投資するのがいいでしょう。米国の大小あらゆる銘柄を投資対象にしているETF「バンガード・トータル・ストックマーケット」(VTI)で運用されている国内インデックスファンドの「楽天・全米株式インデックス・ファンド」なら、手数料の無駄や買い付けにかかる手間も省けます。

 3万円ならほぼ、つみたてNISAの40万円枠を満額利用可能なので、とにかく、つみたてNISAを早く始めて欲しいです。それをきっかけに月々、定額資金を投資していくことの重要性を意識できるようになると考えます。(もみあげさん)

>>米国株投資歴2年半で元手1,400万円を3倍に!―もみあげさんに聞く少額投資術

たりたり社長さんが選ぶ、1万円ポートフォリオ

たりたり社長さんのプロフィール:就職をきっかけに投資について本格的に興味を持ち、ほとんど投資に関する知識ゼロ、経験ゼロの状態から投資の勉強を始めた、たりたり社長さん。

 投資についての正しい知識を得るまでの自身の経験や、株式アナリストとしての経験をもとに、株式投資にまつわる知識をTwitterやブログ「たりたり投資塾」などで発信しています。

銘柄名 商品の種類 割合
eMAXIS Slim 米国株式(S&P500) インデックスファンド 100%

●この銘柄を選んだ理由

 1万円ならば、投資信託でS&P500に連動したインデックスファンドを買うことができます。1万円の投資ならば、ある程度の心理的な経験も積めるため、まずは投資をしてみるという最初のハードルを乗り越えるのに使いたいところです。(たりたり社長さん)

●この銘柄の売り時はいつ?

 一度、買ったら売却せず、投資経験を積むためと思って、保有し続けましょう。ポジションを持っているときと持っていないときはニュースへの興味が段違いに変わります。まずは投資をしてみて知識を得やすい環境を作りましょう。(たりたり社長さん)

>>お金のプロが選んだ米国ETF投資!―たりたり社長さんに聞く少額投資術

弐億貯男さんが選ぶ、1万円ポートフォリオ

弐億貯男(におくためお)さんのプロフィール:2002年10月、27歳のときに元手250万円で株を始め、2019年、43歳で資産2億円を築いた弐億貯男さん。いまだに現役サラリーマンを続けながら、年率10%を目標に得意の割安成長株投資に磨きをかけ、現在の資産は2億6,000万円に到達。

 ブログ「サラリーマンが株式投資でセミリタイアを目指してみました。」や2020年秋に出版され連続重版中の『10万円から始める!割安成長株で2億円』(ダイヤモンド社)も話題です。

商品名 商品の種類 投資先 割合
SBI・バンガード・S&P500インデックス・ファンド インデックスファンド 米国株式 100%

●この銘柄を選んだ理由

 堅調な米国株式市場に分散投資できるためです。(弐億貯男さん)

●この銘柄の売り時はいつ?

 少額資金で資産運用を始めた場合は含み損、含み益の感覚に少しでも慣れてみると良いと思います。

 資産運用可能なお金が増えてきて、運用で大きな資産を得たいという方は日本株、米国株の個別株購入を目指しましょう。

 中長期で安定的に資産を増やしたい方は、インデックスファンドの積み立てを長期継続するのも良いでしょう。(弐億貯男さん)

>>割安成長株投資で元手250万円を2.6億円に!―弐億貯男さんに聞く少額投資術

タクスズキさんが選ぶ、1万円ポートフォリオ

タクスズキさんのプロフィール:ゲーム会社に入社後、1年4カ月でブログ収入が月給を越えたのを機にプロブロガーとして独立したタクスズキさん。2017年からソーシャルレンディング、ロボアドバイザー、投資信託のつみたて、FXの自動売買など「ほったらかし系」を軸にさまざまな投資を開始しました。

 当時はまだ創成期だった仮想通貨(暗号資産)への投資も始め、長期保有を軸にほったらかし投資を実践し、資産は1億円に到達。セミリタイアを達成しました。

 ブログ「20代が個人で資産運用してみるブログ」、YouTube「フリーターから資産1億円を達成するまでの奮闘記」など数々のネットメディアで情報を発信しています。

商品名 商品の種類 投資先 割合
インベスコQQQトラスト・シリーズ1(QQQ) ETF 米国株 40%
SPDR S&P500ETF(SPY) ETF 米国株 30%
ビットコイン 仮想通貨 ―― 30%

●この銘柄を選んだ理由

 米国市場に上場するETFでは、S&P500に連動するSPYもいいのですが、それ以上に利益を狙えそうなナスダック100総合指数に連動するインベスコQQQトラスト・シリーズ1(QQQ)のほうが面白いと思い、比率を増やしました。GAFA(グーグルの親会社、アップル、フェイスブック、アマゾン)にも投資しつつ、他のいろいろな有望ハイテク株に分散投資でき、大きな値動きに期待できます。(タクスズキさん)

>>ビットコインや米国株に挑戦して資産1億円!―タクスズキさんに聞く少額投資術

1万円ポートフォリオのまとめ

 お話を聞いた6人の共通した意見は、投資には経験が必要だということ。実際にお金をかけて投資することで、日々の経済ニュースに敏感になったり、金融商品がどんなふうに値動きするかに興味を持ったり、「これまでの日常とは少し違う投資生活」を味わいましょう。

 金融商品には値動きが付き物。日々の値動きを見ていると、「上がって利益が出ている」とうれしい気持ちになることもあれば、「下がって損している」と残念な気分になることもあります。投資の損益がもたらす、あなた自身の心の中の心理的な変化に慣れることが大切です。

 そして1万円が1万1,000円まで増えた、という「成功体験」を得ることができれば、投資に対してさらに興味が湧き本格的に勉強してみようと思えるはずです。

 全世界株式や全米国株、米国株価指数S&P500に連動するインデックスファンドがオーソドックスな1万円投資の投資対象になります。さらに踏み込んで、さぶさんのすすめる1万円以下でも買える米国株や、タクスズキさんの選んだ米国ハイテク株指数・ナスダック100に連動するETF・QQQに挑戦して、より大きな値動きを体験してみるのもいいでしょう。

▼人気投資家6人が選ぶビギナー向け銘柄 一覧

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