今週の予想

2万9,000円を挟んだもみ合いを想定

 日経平均株価は先週末、2万9,000円台を回復しましたが、今週の注目は、この2万9,000円台回復が本物かどうかという点にあります。

 先週コメントしましたように、チャートからはデッドクロスした25日移動平均線(2万8,650円、5月28日時点)が75日移動平均線(2万9,246円、28日時点)の下に位置しているため、これが好転するためには、75日移動平均線を突破しなければならないとしました。

 28日(金)、日経平均は大幅反発し2万9,149円と、25日移動平均線を軽く突破しましたが、75日移動平均線の前で止まっています。この75日移動平均線を突破するのは、多少時間がかかるかもしれません。

 突破のための第1のサポート要因は新型コロナウイルスの感染者が減少し、コロナワクチン接種が想定より早まるかどうかにかかっています。

 次にバイデン米大統領が6兆ドルの大規模インフラ政策を発表していますが、スムーズに実現できるかどうかに左右されるでしょう。

 今週はこれらをにらみながら、2万9,000円前後でのもみ合いとなるかもしれません。

 下値では25日移動平均線をキープできれば、当面、順調な動きが期待できますが、6月はメジャーSQ(特別清算指数)の月なので、どこかで大きな上下動が起こる可能性があります。

 25日移動平均線を下回った場合を想定すると、レンジは2万8,500~2万9,300円というところです。

今週の指標:日経平均株価

 先週の日経平均は需給の好転を背景に相場が持ち直してきました。週始めこそ2万8,500円を下回りましたが、その後の25日(火)~27日(木)までは、終値で2万8,500円を下回りませんでした。

 そして週末の28日(金)は、前日、引け後のMSCI指数の定期銘柄入れ替えでマーケットの需給が好転し、ここに大規模なインフラ投資を行うとのバイデン大統領の発表の話が伝わったことで、日経平均はカラ売りの買い戻しを中心に+600円の2万9,149円と大幅反発となりました。

 25日移動平均線(28日時点2万8,650円)を上回りましたので、あとは75日移動平均線(28日時点2万9,246円)をいつ上回れるのかがポイントとなります。

 今週は、チャートでは、2万9,000円前後でのもみ合いとなり、新型コロナウイルスの感染動向やコロナワクチン接種率の進捗度を見ることになります。ワクチン接種が予想以上に進めば、経済正常化への期待が高まり、株価のサポート要因となります。

 国内の年金や投信などの機械的な株売りの一巡によって、マーケットは先週から安定してきています。ここからは米株式の堅調な動きと、国内のワクチン接種の進展がスムーズなら、いずれ3万円を目指すことになります。

今週の指標:NYダウ平均株価

 先週のNYダウ、コロナワクチンの接種が大きく拡大したことで経済正常化期待が高まり、株価はおおむね堅調な動きとなりました。

 週末はFRB(米連邦準備制度理事会)のインフレ指標とする、5月コアPCE(個人消費支出指数)が予想を上回ったものの、長期金利は上昇せず、さらにバイデン大統領が大規模なインフラ投資案を発表するとの報道を受け、株価は続伸しました。

 27日(木)のNYダウは、3万4,608ドルまで上昇し、終値は+141ドルの3万4,464ドルでした。週末は+64ドルの3万4,529ドルと続伸しました。

 今週は、31日(月)がメモリアルデーで休場となります。

 注目は4日発表の5月米雇用統計となります。雇用統計が強い内容となれば、6月15~16日に開かれるFOMC(米連邦公開市場委員会)で、大規模緩和の縮小に関する材料が出てくる可能性があります。それは、直接インフレの高進に結びつけられれば相場はいったん一服することになるという見方があります。

 ただ、今回は雇用統計が強くても、失業手当が手厚いことと、コロナ禍をきっかけとした退職増などで労働者確保が難しくなった面があります。賃金の引き上げなどで労働者の確保にほん走していますが、状況が大きく改善しているのかは疑問が残ります。雇用統計を前に様子見が強まることになりそうです。

今週の指標:ドル/円

ドルは量的緩和縮小観測があれば下げ渋りへ

 直近で、5月フィラデルフィア連銀景況指数、5月CB消費者信頼感指数は、市場予想を下回っており、景気回復に一服感が示されています。個人消費の伸び悩みを警戒して、長期金利が反落すれば、リスク回避的なドル売り・円買いが強まる可能性があります。

 ただ、FRBによる大規模な金融緩和は、いずれ縮小に向かうとの見方は変わっていないのでドルは下げづらい見通しといえます。 

先週の結果

週半ばまで2万8,600円台を試し、週末に一気に半月ぶりに2万9,000円台回復

 先週の予測では、当面の上値水準を2万8,800円とし、予想レンジを2万7,800~2万8,800円としました。

 チャート(柴田罫線)で三角保ち合いを下放れしたときに2万8,800円以上は上値抵抗ゾーンとなっており、日足チャートで見ても、25日移動平均線が20日時点で2万8,903円と、75日移動平均線が20日時点で2万9,216円の下にあります。これが好転するためには、75日移動平均線を突破しなければならないため、多少の日柄調整を必要とするとしました。

 27日(木)までは、レンジの上限で動いていたものの、2万8,800円に到達できず、2万8,600円水準でもみ合っていました。しかし、28日(金)になると前日のNYダウの上昇や、やや円安歩調により、買い優勢で始まりました。

 27日(木)の相場の取引終了時にMSCI指数のリバランスが行われて銘柄の入れ替わりもあり、売買代金が5兆5,995億円、出来高は24億432万株と大きく取引が膨らみました。

 これによって需給不安が解消しており、バイデン大統領の6兆ドルという大規模なインフラ投資案が出ていたことも買い気につながり、28日後場終盤には+645円の2万9,194円まで上昇し、終値は+600円の2万9,149円と半月ぶりに2万9,000円台を回復しました。

 しかし、このまま上昇するのは難しく、目先は75日移動平均線(2万9,246円、直近28日時点)にアタマを押さえられることになります。

 28日(金)の米国市場は、強い景気回復期待が強かったものの、3連休を控え終盤に上げ幅を縮小。NYダウは+64ドルの34,529ドル、ナスダックは+12ポイント、S&Pは+3ポイントで取引を終了しました。

 景気回復期待で寄り付き後に上昇、朝方発表されたFRBが重視する4月米コアPCEが前年比で3.1%と1992年7月以来の伸びとなりましたが、FRBのインフレ高進は「一時的」との見方で、長期金利への影響は限定的でした。シカゴの日経先物は▲100円の2万9,020円でした。

 先週、1週間の動きを見ると、相場が持ち直しつつあるようです。特に28日(金)の動きは、カラ売りの買い戻し主導とみられる展開の中で、25日移動平均線(28日時点2万8,650円)を上回りました。

 2月の高値を起点とした調整トレンドが終了したという見方もありますが、上述したように目先に75日移動平均線(28日時点2万9,246円)がありますので、まだ何ともいえません。