イベント投資の草分けで、カリスマ投資家の夕凪さん。インタビュー後編は、「新高値投資法」の注意点や売り時について、さらに、夕凪さんがいま注目している日本株、これから投資を始めたいという人へのアドバイスもお伺いしました。
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新高値銘柄の探し方は?
──ひと口に新高値投資法といっても「上場来高値」や「年初来高値」があります。どれを見たらいいですか。
僕自身は、どれと決めているわけではありません。時期によって「昨年来」や「年初来」で探してみるといいでしょう。株式投資関連のウェブサイトや証券会社のウェブサイトの検索機能を使えば、簡単に探すことができます。
──高値を更新する銘柄ってどれくらいあるのですか。
それは相場の状況によって違います。いいときは毎日300銘柄とか400銘柄あったりして選び放題だし、すぐにほかの銘柄にも乗り換えができますし。
2021年も1~2月は相場がよかったので、かなりありました。最近は相場が悪化しているので、せいぜい数十銘柄といったところです。
──相場環境が思わしくないときはどうするのですか。
僕の場合、無理に買うことはありません。相場が好転するまで様子見です。
──なるほど。では、売りのタイミングについても詳しくお聞かせください。
中編でお話ししたように、買った後に株価が下がったら、すぐに損切りします。うまい具合に上がったときは、基本的には「イベント」終了に合わせて売却します。
東証1部への市場変更を狙う場合はリバランス当日、TOB(株式公開買い付け)を狙う場合は買い付け価格が発表された後。
株式優待の場合も、通常は権利確定日直前に売却します。当然、優待はもらえません。それを差し引いても早めに売ったほうがトクです。
──イベントが終了したら必ず売るのですか。
基本的にそうですけれど、イベントが終わっても次のイベントが控えていて高値を維持し続けそうな場合は持ち続けることもあります。
──でも、いつかは売るわけですよね。
もちろんです。永遠に上がり続けることはありませんから。基本的にはチャートを見て、売り時を検討します。長期に高値を更新しない場合や、大陰線が出るなどの下落サインが出たら、売却するという感じです。
──いずれにしても長期間保有することはないということですね。
例えばTOBを狙って買ったけれど、なかなかTOBされないということもあります。そんなときは保有期間が長くなりますが、通常は長くても1~2カ月です。数日、もしくは1~2週間で売ることが多いですね。
アベノミクスに乗り、資産1億円を達成
──夕凪さんは2011年に会社を辞め、専業投資家に転身されたわけですが、そのとき資産は2,000万円、3,000万円だったんですよね。その後はずっと順調ですか。
僕の場合、幸運に恵まれました。会社を辞めた翌年に第2次安倍政権が誕生し、アベノミクスが始まったんです。それもあって、2年か3年後には資産1億円を達成しました。その後はいいときも悪いときもありましたが、まあまあ順調にきています。
──1億円に届いたときはうれしかったのでは?
実は会社を辞めたとき、投資家としての目標を立て、壁に貼っておいたんです。その一つが「2014年に資産1億円」というものでした。それを達成できたので、うれしかったですね。ちなみにその紙は今も貼ってあります(笑)。
──ほかにどんな目標を立てたのですか。
「米ラスベガスのベラジオホテルのスイートルームに泊まる」とか「世界一周旅行をする」とか(笑)。
ラスベガスの最高級ホテルであるベラジオのスイートにはすでに泊まりましたし、世界一周以外はほぼ実現しました。世界一周も行こうと思えば行けるので、新型コロナが終息して、世の中が落ち着いたら考えます。
──専業投資家の人たちの日常に興味のある読者も多いと思います。普段はどんな生活を送っているのですか。
平日の生活パターンは会社勤めの方々とあまり変わらないと思いますよ。朝は普通に起き、相場が開く9時にはパソコンの前に座ります。その後、昼休みを挟んで15時に相場が閉まったら、その場を離れます。夕方以降はジムに行ったり、お散歩したり、家でくつろいだり。
──夕凪さんはデイトレードを行っているわけではないので、1日中相場を見ている必要はないと思いますが。
僕の投資スタイルは短期売買がメインで、わりと頻繁に売買を行うので、チャートの動きを常に追っていたいんです。買う時には数日保有するつもりが、数時間後に思い通りの株価の動きではないと、その日に売るとか、デイトレードまがいの取引もしてますし。
それとやっぱり、自分が保有していたり、追い掛けている銘柄の値動きを見ているのが、好きなんですね。あまりに値動きが少ないとウトウトしたりしますが(笑)。基本的に飽きることはないですね。
──あのとき、神のお告げに従ってよかったですね(笑)。
ほんとうにそう思います。毎朝、満員電車に乗らなくていいし、上司に小言を言われることもないですからね(笑)。好きなことだけやって暮らせるのは幸せだなと思います。今この時代に投資家という職業があってよかったなと。神様に日々感謝しています。
いかにバブルに乗るかで投資家人生が決まる
──これから投資を始めたいという読者にアドバイスをお願いします。
もし投資を始めるか迷っている人がいたら、当たり前すぎますが、今すぐ証券口座を作ったほうがいいと言いたいですね。やらない言い訳を思いつく前に即行動することが、投資家で生き残るための素質の一つだと思います。
最初の投資は少額でいいんです。1万円を2万円にすることができない人が、100万円を200万円にすることなんてできません。
株式投資には特に少額でやれる部分について、仕組みが甘いところがたくさんあります。そこに気づき、突けるかどうか。よく観察し、よく考え、よく調べ、いろいろ試してみることです。
日本株に投資する場合、100株単位でしか買えないので、現実には1万円では厳しいですが、自分で買える範囲でトライしてほしいと思います。
──ほかに大事なことは?
僕は、個人投資家が大金を手にするには、10年に一度か二度訪れるバブルにうまく乗るしかないと思っています。僕自身、アベノミクスに乗れたから大きく増やすことができましたが、それがなかったら、首尾よく1億円には手が届かなかったでしょう。
でも、そういう好機はいつ訪れるかは分かりません。今年中にやってくるかもしれないし、5年先かもしれない。だから、たとえ相場がパッとしなくても投資を続けることです。やめてしまったら、バブルが訪れたとき、乗り遅れてしまいますから。
──相場がよくないときはあまり無茶をせず、堅実な勝ちを目指すべきでしょうか。
僕はそう思います。それで10年に一度か二度の好機がやってきたら、勝負に打って出るんです。
──その好機を事前に察知する手はないんでしょうか。
例えば新高値銘柄の数を毎日、数えるのは一つの手かもしれません。ある日を境に急に増えたりしたら、何かが起こっている可能性があります。ただし、一過性の動きに過ぎないこともあるので、あまり判断を急がないほうがいいでしょう。
夕凪さんがいま注目の日本株5選は?
──コロナ禍ですが、夕凪さんが目を付けている業種や、業界などはありますか。
アフターコロナを見据えると、一つはレジャー関連でしょうね。新型コロナが落ち着いたら、国内外を問わず、旅行や観光に行く人がドッと増えるでしょうから。ほかにファッション関連なども息を吹き返す可能性があると思います。
──具体的に注目している銘柄はありますか。
レジャー関連だと、旅行比較サイト「トラベルコ」を運営するオープンドア(3926)、クルーズ旅行専門のオンライン旅行会社のベストワンドットコム(6577)、中部地方を中心にホテルを展開するグリーンズ(6547)など。
ファッション関連だとユナイテッドアローズ(7606)や東京ベース(3415)などがおもしろいと思います。ただし、チャートを見る限り、どれも動きはまだ鈍いんですね。新高値がつくような状況ではありません。だから、個人的にはもうしばらく様子見かなと思っています(編集注:2021年5月12日取材)。
──逆張りが好きな人はもう買っているかもしれませんね。
そうかもしれません。彼らは春を待たずに買いますから(笑)。ただ買ったはいいけれど、結局、春が訪れないということがあるわけです。
──イベントという視点でこの先、注目すべきことはありますか。
来年2022年4月、東京証券取引所の市場区分が変更されますよね。「プライム」「スタンダード」「グロース」の3市場に再編される予定ですが、今の1部上場企業の中にはプライムへの移行が難しいところがあるでしょう。
そうした企業はどうするのか。親会社がTOBするとか、どこかと合併するとか、そういう動きが起こるかもしれません。今後の動向を見守りたいですね。大きなチャンスがやってくるかもしれません。
──有意義なお話をありがとうございました。
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