イベント投資の草分けで、ベテラン投資家の夕凪さん。インタビューの中編では億超え資産に貢献した実際の投資法・新高値投資術を中心に聞きました。

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ツイッターを駆使して投資の情報収集

──夕凪さんの実際の株式売買ですが、まずは「イベント」を探すのですか。

 基本的にはそうです。株主優待に関してはそれぞれ権利確定日が決まっているので、そのタイミングを見計らって購入するわけですが、市場変更TOB(株式公開買い付け)などはいつでもあるわけではないので、常にアンテナを張り巡らせ、何か動きがあったらすぐに対応します。

──どうやって情報収集するのですか。

 僕は日経新聞電子版を購読しているのですが、あらかじめキーワードを登録しておくと、そのキーワードを含む記事が出たとき、メールで知らせてくれる機能があります。「TOB」と登録しておくと、TOBに関する記事を送ってくれるわけです。これ、けっこう便利なので、日経電子版を購読している人にはオススメです。

 他にはやっぱりツイッターですね。今は大手メディアも個人投資家もツイッターを使って情報発信していますから、ツイッターを確認すれば、大抵の大事な情報を見逃すことはありません。これでヘッドラインを押さえることができます。

 それに何といっても、ほかのメディアに比べて情報鮮度が高い。僕がやっているイベント投資はいかに早く情報を入手するかが大事なので、ツイッターは欠かせません。

──ツイッターを逐一見ているのですか。

 これには便利なアプリを活用しています。普通にツイッターを使うと、リアルタイムには更新されない一つのタイムラインのページしか表示できませんよね。

 そこで、ツイッターの公式アプリのツイートデックを使うと、一つの画面で複数のタイムラインをリアルタイムで見ることができるんです。いちいち更新ボタンを押したり、画面を切り替えたりする必要がないので、すごく便利なんです。ただ、マシンパワーをかなり消費するので、性能のいいパソコンじゃないと厳しいかもしれません。

夕凪さんが最高値を更新した株を狙う理由

──ツイッターなどで早く情報を得て、その銘柄を買うかどうかを検討するわけですね。

 そうなんですが、最近は少し変わってきています。僕はイベント投資をメインにしていますが、それとともに新高値がついた銘柄を狙うという投資法も実践しています。つまり、最初にまず新高値銘柄を調べ、その中からイベント投資に適した銘柄を選択するという手順を踏むことが多いんです。

──新高値銘柄とはなんですか。

 株価が過去の最高値を超えた銘柄のことです。昨年からの最高値を超えた価格を「昨年来高値」、今年の最高値を超えた価格を「年初来高値」、上場後の最高値を超えた価格を「上場来高値」などといいますが、これらを記録したときに買うのです。

──過去最高に株価が上がった株では、下落のリスクが気になりますが。

 その企業に何かが起きなければ高値を更新することはありません。新しい事業が軌道に乗りそうとか、業績がV字回復したとか、何かポジティブな動きがあったから高値を更新するわけです。ですから、一度高値を更新すると、二度、三度更新が続くことがけっこうあるんです。

 しかも、たまにですが、とんとん拍子でそのまま、株価が2倍、3倍に跳ね上がることもあります。そうなれば高値で買ったとしても大きな利益を獲得することができるわけです。

──でも、株価が安いときに買っておけば、もっと、もうかりますよね。

 もちろんです。株価が安いときに買った銘柄がどんどん上がって、高値を更新したりしたら万々歳でしょう。しかし、株価が上昇するたびに、過去に高値で買った人からのやれやれ売り(株価戻り待ちの売り)が降ってくるので、株価に勢いがつきにくく、失速することも多いのです。高値が更新されたタイミングで買ったほうが、やれやれ売りが少ない分、上昇に勢いがつきやすいということです。

──安いときに買って大もうけする、それがベストであることには間違いない。ただ難易度が高い。それより多少もうけは減るが、高値が更新されたタイミングを狙い、勝ちやすさを目指すベターな方法ということですね。

 はい、そういうことです。

──これまでの投資法は順張りですよね。逆張りすることもあるのですか。

 株価が下がっているときに買う、逆張りを好む投資家も多いと思いますが、僕は苦手なんです。含み損に耐えきれない。すぐに上昇に転じればいいけれど、思惑に反して下がり続けたときの対応が難しいのです。

 逆張りは一般的に損切りすると利益率が落ちます。期限や移動平均線などで仕切る方がいい結果が出ます。でも、仕切るまでにどんどん含み損が増える可能性があることに、私は耐えきれない。ナンピン買い(※)する手もありますが、その結果、さらに損失を大きくしてしまったら、投資が嫌になる気がします。

※ナンピン買い:株価が下落したときに追加買いして、平均取得単価を下げること

──取り返しのつかないくらいマイナスを背負ってしまうこともある?

 そう、一つの逆張りに全力投資すると大負けする可能性があります。逆張りはレバレッジをかけては基本ダメなのです。数少ない大きな損失を、他の多くの小さな利益でカバーするのが逆張りです。

 これは宝くじの収益構造と同じです。1等のための大金を支払うけれど、その分たくさんのハズレで回収する。つまりはお金ある人向けの投資手法です。ですので、資金量が限られている個人投資家は1等を狙いにいく順張りの方が合っていると思います。

 逆張りは成功率がとても高いし、利益が出たら「我慢した甲斐があった」と投資の満足感が高いのは理解できるのですけどね。でもレバレッジをかけたら破綻しかねないので、少額で行くべきだと思います。その分、利益額は低くなりますが。

勝率3割の投資術とは?

──今、夕凪さんがやっている手法だと大負けすることは少ないのでしょうか。

 一度、高値を更新すると、二度、三度更新することがあるといいましたが、実際には買った後、下落することもあります。というか、そっちのほうが多いのです。新高値で買って、さらに上がるのは3割いくかいかないか、くらいでしょう。

 つまり、勝率でいったら勝ちより負けのほうが多いんです。ただし、一つの銘柄で大負けすることはまずありません。

──なぜですか。

 買った後、株価が下がったら売却してしまうからです。早いものは、その日のうちに売ります。すぐに損切りするから損失額が少ないわけです。

──でも、いったん下落しても、また上がる可能性もあるのでは?

 高値を更新した後、すぐに下がってしまうような銘柄は、またすぐに高値更新する可能性は薄いと思っています。もちろん、例外はあります。でも、決して多くはない。だったら、大きな痛手を被る前に売ってしまったほうがいいという考えです。

 それに、売った後、高値を更新したら、そのときまた買えばいいんです。

──勝率が3割程度でもトータルで勝てるのは、一つには負けの金額が少ないからですか。

 それは間違いありません。

──ただし、一つ一つの勝ちの金額を大きくする必要もありますよね。

 そこで、僕が実践しているのが買い増しです。新高値で買った後、さらに高値を更新したら、そのタイミングで買い増しするんです。その後、また更新したらまた買い増しする。これを繰り返すわけです。

 一つの銘柄を、複数回に分けて買うことをピラミッティング(増し玉)というのですが、その方法を実践しています。

──高値を更新するたびに買い増しするので、当然、勝ちの金額が大きくなりますね。

 はい、株価が2倍、3倍になったときはもとより、そこまでいかなくても大きな利益を得ることができます。

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